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米国の対決姿勢やウクライナ侵略長期化…戦後80年、ルクセンブルク国防相「全世界が非常に危険な時代」

読売新聞 / 2025年1月27日 23時41分

日本語は練習が必要というバッケス氏。インタビューは英語で行われた(22日)=尾関航也撮影

 戦後の国際秩序を支えた「パクスアメリカーナ(米国による平和)」の終焉しゅうえんが指摘される。西欧ルクセンブルクのユリコ・バッケス国防相に話を聞いた。

 【ルクセンブルク=尾関航也】西欧ルクセンブルクのユリコ・バッケス国防相(54)が今月22日、読売新聞のインタビューに応じた。米国の政権交代や長期化するロシアのウクライナ侵略を踏まえ、「アジア太平洋地域を含む世界全体で我々は非常に危険な時代にいる」と国際秩序の混乱に強い危機感を示した。

 バッケス氏は神戸市で生まれ、外交官として駐在した2年を含め計12年間を日本で過ごしたという欧州政界では異色の指導者だ。

 インタビューでは、今月20日の米トランプ政権発足について「我々は強力なパートナーを必要としており、米国が今後も強力なパートナーであり続けることを願う」と関係構築に取り組む考えを明確にした。

 「欧州全体が80年間の平和の恩恵を被った。我々は米国に大きな借りがある」とも述べ、戦後の欧州の繁栄は米国の役割が大きかったとの認識を示した。

 ただ、トランプ大統領はかねて欧州諸国に防衛費負担の引き上げを求め、従わない国は守らないと公言するなど、対決姿勢を鮮明にしてきた。北大西洋条約機構(NATO)の推計によれば、ルクセンブルクの防衛支出は国内総生産(GDP)比1・29%にとどまり、2%の共通目標を満たしていない。

 これについてバッケス氏は、同国の防衛支出は過去10年で3倍に拡大し、今後5年でさらに2倍に拡大するとし、防衛力整備に力を入れる考えを強調した。

 米国の要求に加え、欧州の安全保障を取り巻く状況も深刻さを増している。バッケス氏は、ロシアのウクライナ侵略によって「欧州の平和は打ち砕かれた」「脅威は極めて現実のものだ」と厳しい現状認識を繰り返し口にした。

 ロシア西部クルスク州で北朝鮮兵がウクライナ軍と交戦したことにも言及し、「数年前なら誰がそんなことを想像しただろう」と述べ、欧州を取り巻く情勢が大きく変化したとの認識を示した。

 欧州では近年、義務的兵役制度の導入や拡充に踏み切る国が相次ぎ、ルクセンブルクでも昨年来、その是非が議論されてきたが、これについては「現存の志願制を維持すべきという政治的コンセンサス(意見の一致)がある」として導入の可能性を否定した。

 NATOは今、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドのアジア太平洋4か国と連携強化を進めている。バッケス氏は「我々の利益は完全に一致する」と述べ、安全保障分野での協力に意欲を示した。

 国際社会で中国の影響力が増していることについては、気候変動や世界経済を含む国際課題で「中国の関与なしにうまく対処できるものは一つもない」と述べ、中国と対話を続ける必要性を強調した。

ルクセンブルクのユリコ・バッケス国防相インタビュー

 アジア太平洋を含む世界全体で、我々は非常に危険な時代にいる。我々は長く平和に暮らしていたため、防衛への投資は大きな優先事項ではなかった。数年前まで、人々は北大西洋条約機構(NATO)はもはや必要ないと議論していた。

 ロシアのウクライナ侵略で、欧州の平和は完全に打ち砕かれた。2014年のロシアによる違法なクリミア併合で、多くが不安定になった。ルクセンブルクの防衛支出はその後3倍に増え、今後5年間で少なくともさらに2倍に拡大する。

 NATO加盟国や同盟国は、サイバー攻撃を含むロシアの脅威からいかに自分たちを守るかを議論する必要がある。脅威は極めて現実のものだ。欧州の安全保障の先行きについて楽観的になるのは難しい。現実的にならなければいけない。抑止力が必要であり、我々の強さを示す必要がある。

 プーチン露大統領がウクライナに侵攻したのは、我々の弱さを確信していたからだ。我々は自国を守り、抑止力を持つために投資をする必要がある。そしてウクライナを支援し続ける必要がある。法に基づく国際秩序に背き、国連憲章に違反しても何も起きないのでは、独裁者や扇動家に誤ったメッセージを送ることになる。

 ルクセンブルクを含む欧州全体が、80年間の平和から多大な恩恵を被った。我々は米国に大きな借りがある。我々には共通の歴史があり、共に未来を構築する必要がある。トランプ米大統領には、欧州が団結していることを示さなければならない。我々は貿易戦争を始めたくはない。米国が今後も強力なパートナーであり続けることを願っている。(聞き手・ロンドン支局 尾関航也)

Yuriko Backes 神戸市生まれ。幼少期をドイツで過ごした後、10代の大半を神戸市で過ごした。ルクセンブルク首相外交顧問、大公宮府長官、財務相などを経て2023年11月から国防相。54歳。

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