アワビの単価、福島第一原発の処理水放出前の半額以下に…中国の輸入停止が影響か
読売新聞 / 2025年1月31日 10時7分
岩手県内で2024年度に水揚げされたアワビの10キロあたりの平均単価は6万4437円で、東京電力福島第一原子力発電所の処理水を海洋に放出する前の22年度(13万6861円)と比べ、半額以下に下落したことが県漁連のまとめでわかった。23年8月に始まった海洋放出を受け、中国が日本産水産物の輸入を停止している影響とみられ、10年度以降の最低を記録。水揚げ量も23年度比で約4割減り、関係者は危機感を強めている。(冨田駿)
県漁連によると、県産アワビはこれまで大半が干しアワビとして中国や香港向けに輸出されてきた。だが、処理水放出後の初のシーズンとなった23年度の平均単価は8万8547円で、22年度から35・3%下落。24年度は事前入札価格が11、12月分のいずれも6万円台とさらに低迷し、シーズンを通した平均単価は23年度比で27・2%下落した。
一方、24年度の水揚げ量も前年度比41・6%減の59トンと低迷。大半の浜で前年度を下回り、過去最低となった。県漁連によると、シーズンを通してしけが続いたため、11月は半数近くの浜で口開け(解禁)ができなかったほか、出漁できても思うように操業できなかったという。
アワビは漁師の「冬のボーナス」とされ、貴重な収入源となってきた。自身も2回漁に出た県漁連の山崎義広会長(77)(宮古市の重茂漁協組合長)は「価格が安くて量も少ないので大変な打撃だ。やせているアワビが多く、来シーズンも状況は良くならないだろう」と肩を落とす。
価格の下落を受け、県漁連は東京電力と賠償について協議してきた。23年度分は処理水放出前の22年度分との単価の差額が賠償されており、24年度分は継続協議となっている。
こうした中、県は県内の商業施設と連携してフェアを開催したり、加工業者や漁協への委託事業として商品開発に取り組んだりして、処理水放出の影響を受ける県産水産物のPRや販路拡大に力を入れている。復興危機管理室の田沢清孝・放射線影響対策課長は「風評被害対策や賠償が迅速に行われるように国と東電に引き続き求めていきたい」と話している。
ナマコも下落傾向
原発処理水の海洋放出により、大半が中国や香港向けに輸出されていた県産ナマコの価格も下落している。
県漁連によると、2023年度の10キロあたりの平均単価は前年度比26・4%減の1万5383円。24年度の相対取引の価格は、最も高級な「1号」は同2000円増の2万2000円、「2号」は同1000円増の1万1000円となっている一方、「3号」は5000円と前年度と同額という。
漁期は3月までの予定で、県漁連はナマコについても東電と賠償を協議している。
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