「2025年は女性が働きやすく!」予測調査で初めて過半数に 課題は「年収の壁」と「短時間正社員」...専門家が指摘
J-CASTニュース / 2025年1月27日 17時43分
女性が働きやすくなった実感がモリモリ!(写真はイメージ)
今年(2025年)こそ女性が働きやすくなる環境になるだろうか。
働く主婦・主夫層のホンネ調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が2024年1月16日に発表した「2025年の女性に働く環境意識調査」によると、「働きやすくなる」と答えた女性が半数を超えた。
前向きな女性が半数を超えたのは初めてのこと。もっと働きやすくなるには何が必要か。専門家に聞いた。
「ガラスの天井があらゆるところにある」
しゅふJOB総研の調査(2024年11月26日~12月8日)は、就労志向のある既婚女性791人が対象。
2024年を振り返り、女性が働きやすくなった実感があるかを聞くと、「ある」が35.4%で、22年、23年に比べ3年連続で上昇した【図表1】。
働きやすくなった実感の理由の理由を聞くと(複数回答可)、「働く女性の数が増えてきた」(63.6%)、「産育休や在宅勤務などの制度が充実してきた」(46.1%)などが上位に並んだ【図表2】。
そして、2025年の予測として「女性が働きやすくなると思うか」を聞くと、過半数の54.6%が「思う」と答えた。これは過去3年の調査で初めて半数以上に達した【図表3】。
さらに、2025年は女性が働くうえでどんな年になるかの予測を聞くと、「これまでより自由にキャリアを選べるようになる」(46.4%)、「企業が、女性が働くことの価値をさらに認める」(34.4%)などが上位に並んだ【図表4】。
フリーコメントでは、「2025年は女性が働きやすくなると思う」という人からこんな意見が相次いだ。
「年収の壁、扶養の壁、社会保険の壁、これが取れれば壁に怯(おび)えずに働けるので、今より働くことへのハードルが下がると思う」(50代:派遣社員)
「男性の育児休暇取得が進んだ気がします。子育ては夫婦でするものという感覚が浸透してきていると思います」(40代:パート/アルバイト)
「性別に関係なく優秀な人材をもっと有効活用できる社会にしていかなければ、日本はどんどん貧しくなると思う」(50代:派遣社員)
「私は結婚退職が当たり前の時代に結婚して出産、子どもが保育園に入ってから旦那の扶養内で130万円の壁を意識のパート勤めでやってきた。結婚後も当たり前のように共働きで、育休後仕事復帰、在宅勤務&子どもに合わせた勤務シフトでバリバリ働く娘を見て、会社も社会も私たちの頃とはまったく違うんだなと実感します」(50代:今は働いていない)
一方、「女性が働きやすくなるとは思わない」という人から厳しい意見が寄せられた。
「ガラスの天井があらゆるところにある」(60代:パート/アルバイト)
「フルタイムで働いても家事育児は私がしている。お金がなく働かないといけないが、結局私がしんどい思いをしているだけ」(40代:正社員)
「在宅ワークが減り、出社型の働き方が増えた。その分、小さい子を持つ親は通勤時間やお迎えの時間も考えて働かなきゃいけなくなり、収入が減るし、昇格の機会も減った」(40代:パート/アルバイト)
働きやすくなった実感は「半径1メートル内」の変化にある
J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――今回の調査結果では、2025年の予測で「働きやすくなると思う」が約54%と、初めて半数以上になりました。一方で「思わない」という人も約45%います。
また、「2024年は働きやすくなった実感がある」という人も、まだ約35%ですが、3年連続で上昇しました。どんどん女性が働きやすくなっているとポジティブに評価しますか。それとも「まだまだ道遠し」と厳しく評価しますか。
川上敬太郎さん 働きやすくなると感じる人が増える傾向にあること自体は、望ましいことなのではないでしょうか。ただ、働きやすくなった実感も、働きやすくなると思うかも、あくまで前年と比較しての相対評価です。
女性があまねく働きやすさを実感できる状態を実現するためには、まだまだ課題が多いと感じています。
――ズバリ、「働きやすくなった実感」がある人と、ない人とではどこが違うのでしょうか。
川上敬太郎さん 働きやすさに対する考え方や個々の志向、置かれている状況によっても異なると思います。ですが、総じて半径1メートルでポジティブな変化を目の当たりにしているかどうかの違いが実感の有無に大きく影響しているように思います。
各ご家庭での家オペレーション負担や配偶者の考え方、自分や配偶者の勤め先での制度や職場環境、就職活動した時の体感や収入具合など、働きやすさを実感できるか否かを分ける要素は、概ね自分の周り半径1メートル以内にあります。
一方で、女性の就業率や男性の育休取得率などの統計を見ると、世の中全体ではポジティブな変化が起きていることは客観的に示されています。ただ、それらの変化が身近に感じられている人はまだ少数派ということではないでしょうか。
それでも、ここ3年の推移を見ると働きやすくなったと実感している人の比率は上昇傾向です。少しずつであっても、ポジティブな方向へと変わってきている可能性があります。
2025年は「短時間正社員」がクローズアップされる
――なるほど。統計的数字では働きやすくなったはずなのに、それを実感できるかどうかは「半径1メートル以内」の出来事の変化が大きいわけですね。
川上敬太郎さん 結婚や出産をすると、話し合いすらないまま、いつの間にか家事や育児、介護などの家オペレーションは妻の役割だと押しつけられてしまっているご家庭は少なくありません。
働きやすさの実感を得るためには、まず家オペレーションをどう協力し合っていくか夫と話す機会を設けてみるなど、半径1メートル以内の環境改善に一つひとつ向き合い、取り組んでいくことが大切になってくると思います。
その結果、妻が専業主婦になったほうがいいという結論になる可能性もあるかもしれません。しかし、話し合いもなく、なし崩し的に家オペを押しつけられるより、納得感があるはずです。
あるいは、妻も正社員として働きたい思いがあるならば、話し合うことで正社員として働きながら協力して家オペも回す方法を夫と一緒に考えることができます。
同じように、職場にも話し合いや相談を持ち掛けることで、状況が変わる可能性があります。あるいは、話しても埒(らち)が明かなければ、「いまの職場に働きやすさを求めるのは無理だ」と確認できて転職に踏み切りやすくなるかもしれません。働きやすさの実感とは、働き方の現状に対する納得感と紐づく面も少なくないように思います。
2025年は「短時間正社員」がクローズアップされる
――2024年は、働く女性の問題では「年収の壁」が大きくクローズアップされました。2025年は、女性がより働きやすくなるためには、何がクローズアップされるでしょうか。
川上敬太郎さん 引き続き、年収の壁は2025年もクローズアップされると思います。
仕事と家庭を両立しながら働く女性の多くが年収の壁を意識していますし、年収の壁は一つではなく山脈のように連なっているので、103万円とか106万円とか130万円とか、どれか一つを切り取って修正するだけで解消できるものではないからです。
一方で、石破茂首相が昨年(2024年)の所信表明演説で言及した短時間正社員は、働き方の新たな選択肢となる可能性を秘めています。いまは育児との両立などで福利厚生的に導入されることの多い短時間正社員ですが、副業も促進されつつある中、就業環境の柔軟性と仕事のやりがい、キャリア形成、収入増などを同時に実現できる戦略的人事施策となりえます。
上手く制度設計して導入できれば、働き手と職場双方に、これまでになかったメリットをもたらすと思います。
――短時間正社員のメリットとは何ですか。
川上敬太郎さん やむを得ない事情で長時間勤務できない社員の離職を防ぎ、優秀な人材を確保できます。また、働き方の幅を広げることで、社員のモチベーションアップや定年を過ぎた高齢者の活躍なども見込めます。
短時間正社員の戦略的導入など、仕事と家庭を両立させる仕組みの充実化は、必ずしも女性だけにメリットをもたらす施策ではありません。
「男性は仕事、女性は家庭」といった性別役割分業意識が見直され、男性も含めて家オペレーションの主体となっていく「一億総しゅふ化」が進んでいけばいくほど、柔軟かつ生産性高く仕事して、高賃金が得られる働き方の必要性は、性別に関係なく高まっていくのではないでしょうか。
――コメント欄では、さまざまな意見が出ています。私は「性別に関係なく優秀な人材をもっと活用できる社会にしないと、日本はどんどん貧しくなる」という意見が響きました。川上さんはどのコメントが印象に残りましたか。
川上敬太郎さん 「ガラスの天井があらゆるところにある」というコメントが印象に残りました。少しずつであっても女性が働きやすさを感じられる方向に進む兆候が見られる中、女性の働きやすさに対する期待感も並行して高まっていくかもしれません。
すると、昇進しづらいとか賃金が上がりづらいとか、これまでハッキリとは認識できていなかったことにも「あれ?」と疑問を感じることも増えそうです。パッと見は目に映らない「ガラスの天井」を都度発見しながら、それを割って前へ進んでいく、という活動の必要性が今後さらに高まっていくように感じます。
仕事と家庭を両立してきた女性たちこそ、これからの時代をリードする
――今回の調査で特に強調しておきたいことと、働く女性へエールをお願いします。
川上敬太郎さん そもそも世の中全体が認識を大きく間違えていると感じるのは、仕事に100%の時間を費やすのが当たり前だった、昭和的な男性の働き方を基準にしていることです。当時の働き方としてはそれが最適だったご家庭は多かったと思いますし、それがベストというご家庭はいまもあるでしょう。
しかし、100%仕事に時間を費やすことができるというのは、家オペレーションを一切行わなくてよいことの裏返しに他なりません。それは決して当たり前のことではなく、実はとても特殊な状態なのだと認識を改める必要があります。
これから基準になるのは、性別問わず夫婦がともに仕事と家庭の両立をはかりながら、仕事での成果も高めていくという働き方です。それを実践するためには、24時間働く覚悟でひたすら時間を費やすことで何とかしてきた時代より、時間当たりの生産性を上げなければならないという難易度の高い工夫が必要です。
――「24時間戦えますか」というテレビCMもありましたね。
川上敬太郎さん もちろん、仕事に100%時間を費やす働き方を否定する必要はありません。ただ、かつてのようにそれを基準視する時代ではなくなりつつあるということです。これからは、誰しもが仕事と家庭の両立という課題に直面することになります。
その点を踏まえると、仕事と家庭の両立に一早く取り組んできた女性たちこそ、これからの時代を引っ張っていく存在になると言えるのではないでしょうか。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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