視野が狭まっても自覚しにくい緑内障、「運転外来」開設相次ぐ
読売新聞 / 2025年1月28日 15時0分
眼科の専門病院や大学病院で緑内障の患者らを対象とした「運転外来」を設ける動きが出ている。緑内障の患者は視野が狭まる症状を自覚しにくい。注意せずに運転を続けると事故につながるリスクがあるため、外来では、運転時の見え方や状況判断を確認する。担当する医師チームは今年1月、「運転能力を過信する緑内障患者が多い」とする研究報告をまとめた。
国内初の眼科の運転外来は2019年7月、西葛西・井上眼科病院(東京)が開設した。神戸市立神戸アイセンター病院と新潟大医歯学総合病院が続き、3か所に増えた。さらに名古屋市立大東部医療センターが今年4月に始める予定だ。ほかにも設置を検討する大学病院がある。
外来は、視力や視野、認知機能など一般的な検査に加え、「ドライビングシミュレーター」という装置を使うのが特徴だ。患者は装置の運転席に座り、市街地を走行する動画を見てアクセルやブレーキを操作する。走行中の目の動きを捉え、見落とした部分が画面に表示される。
受診するのは、40歳以上の20人に1人がかかるとされる緑内障のほか、網膜色素変性症や脳卒中など視野に障害が出る患者らだ。開設が相次ぐ背景には、こうした患者が運転リスクを自覚しにくいことがある。
同眼科病院の国松志保副院長らが今月、国際科学誌に報告した研究では、同眼科病院と新潟大の運転外来を受診した緑内障患者227人のうち145人(64%)が、運転時の見えづらさや不安はなく「運転に問題がない」「正常に見えている」と回答。145人のうち63人は、症状が最も重い後期緑内障だった。
視野が狭まると、車や歩行者の飛び出しに気づくのが遅れ、信号や標識を見落とすリスクがある。国松氏は「視野の変化に気づかず、視力に問題はないから安全と思い込むケースが目立つ」と指摘する。
外来では、視野の上部が欠けた人には、信号をよく確かめるよう促し、下部が欠けた人には左右からの飛び出しへの注意を呼びかけるなど助言する。受診後の経過を追えた患者の7割が運転を続けており、国松氏は「ほとんどの人が運転時に注意するようになっており、大きな事故は起こしていない」と説明する。シミュレーターで危険性を体感したことで納得して運転をやめた患者もいるという。
交通事故の予防医学に詳しい一杉正仁・滋賀医大教授の話「運転外来は、地域の安全を守るためにも重要な取り組みだ。緑内障をはじめ運転に支障が出る病気は多く、行政がシミュレーターの導入費を補助するなど普及を後押しすべきだ」
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