企業が就活生に発信するSNSにご注意...「上司が偉そう」「癖の強い朝礼」「おふざけ動画」は一発アウト/マイナビ・服部幸佑さん
J-CASTニュース / 2025年1月28日 19時14分
カジュアルな服装で働きたい(写真はイメージ)
就活生向けにSNSでアピールする企業が増えているが、大学生はしっかりSNSから透ける企業の裏側を見ている。
就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2024年1月20日に発表した「マイナビ2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(12月)」によると、「癖(くせ)の強い朝礼」とか「TikTokで新入社員が踊る様子」などは、入社後の自分の姿を予想させてNGものだという。
イマドキ就活生は、企業のSNSのどこをチェックしているのか。調査をまとめたマイナビの服部幸佑さんに聞いた。
就活生は、企業のSNSにリアルな職場風景を求めている
マイナビの調査(2025年12月20日~31日)は、2026年卒業予定の全国の大学生、大学院生1131人が対象。
社会人になった際にどのような服装で働くのが理想かを聞くと、「オフィスカジュアル」が49.1%となった。Tシャツ・スニーカーなどのカジュアルな服装(19.7%)と含めると、約7割がカジュアル派だ【図表1】。
また、服装が企業の入社意欲に影響すると思う学生が36.9%となり、昨年(2024年)の31.5%より5.4ポイント増えた【図表2】。
どんな服装で働いているかは、企業が就活生向けに発信するSNSで一目瞭然だ。企業から発信してほしい情報を自由回答で聞くと、「1日のスケジュールや社員の方々の雰囲気」「会社の雰囲気がわかる動画」「営業職のリアル」「嘘偽りのない仕事風景」などシビアな要求が相次ぐ【図表3】。
SNSの利用に長けている学生は、企業文化や実際の働き方、福利厚生など企業の最新情報を取得でき、理解を深めることができるコンテンツを求めているのだ。
一方、企業が発信するとマイナスなイメージをもつものは、「TikTokで新入社員が踊っている」「ダンスしている様子やふざけた動画。入社後にやらされるのかと思う」「癖(くせ)の強い朝礼の様子」「上司が偉そうな様子や、上下関係がはっきりしている様子」「集まれ!みたいなもの」などの意見が挙がった【図表4】。
こうしたSNSから学生は、入社後の自分の姿をイメージしてしまうようだ。
カジュアル服装で働くことを望むが、自分だけ目立つのはイヤ
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったマイナビのキャリアリサーチラボ研究員服部幸佑さんに話を聞いた。
――「社会人になった際、どんな服装で働きたいか」という質問に対して、オフィスカジュアルが半数近く占め、Tシャツなどのよりカジュアルな服装を含めると全体の約7割に達しています。これは、男女を問わず職場でもカジュアルな服装を望むというのが最近の学生の傾向でしょうか。
服部幸佑さん 2023年卒(2022年調査)から26年卒(同2025年)のデータを見ると、「オフィスカジュアル」と「Tシャツ、スニーカーなどカジュアルな服装」を合わせた割合は調査当初から約7割で一定しています。服装の選択肢や、自分が着たい服を着て仕事ができるといった自由度を求めている傾向がはっきりしています。
ただ、インターンシップ・仕事体験への参加時は「スーツ参加・私服参加などを企業から指定してほしい」という意見が9割に及んでいます。実際に企業の方と接する場合には、参加者の中で自分だけ違う服装であることがないように、または服装関連で失礼がないように指定通りの服装で参加したいと考えているのではないでしょうか。
――なるほど。あまりにカジュアル過ぎて目立ちたくないという気配りはあるわけですね。
ところで、「どのような服装で働くか」が入社意欲に影響する割合が約4割に急上昇しています。これは言い換えると、企業がホームページやSNSで就活生に発信する際、社員の服装もカジュアルっぽくしたほうがいいということでしょうか。
服部幸佑さん 学生の傾向に合わせて発信することも大切だとは思いますが、ホームページやSNSで発信をする際には実際の職場環境と齟齬がない発信ができているかどうかが、より重要であると思います。
発信した内容では社員がオフィスカジュアルで働いていたが、実際はそうでなかったというようなミスマッチを引き起こさない発信を心掛けることも大切です。
企業が発信するSNSはInstagramがトップ
――企業がSNSで就活生に向けて発信する傾向はいつごろから始まったのでしょうか。また、使うSNSはX、Instagram、LINE、Facebook、TikTokなど、どれが多いのでしょうか。
服部幸佑さん 企業がSNSでの発信を始めた時期に関しては正確なデータはありませんが、弊社では20年卒(2019年)から企業にSNSに関する調査を行っています。企業認知に活用している割合は20年卒では14.7%でしたが、そこから25年卒(2024年)にかけて26.3%に増加しています。
企業が採用広報に活用するSNSはInstagramが最も多く、次いでYoutube、LINE、X、Facebook、TikTokの順です。学生に発信してほしいコンテンツをフリーアンサーで聞いたところ、「社員の雰囲気や社員の様子」「選考スケジュールやフロー」「福利厚生」といった内容の回答が多い結果となりました。
親しみ持たせるエンタメ系はNG、仕事のアピールで勝負
――就活生がマイナスのイメージを持つ企業のコンテンツの具体例が非常に面白いですね。「癖の強い朝礼」「上司が偉そうな様子や、上下関係がはっきりしている様子」「ダンスをしている様子」「集まれ!みたいなもの」などなど。こうした具体例から就活生がSNSを見るポイントは何だと思いますか。
服部幸佑さん SNSを通して、ある程度自分が入社した時のことをイメージしているのではないかと思います。「新入社員が踊っている」「集まれ!みたいな癖の強い朝礼」など、自分がこの会社に入ったときにもやらされるのではないか...といった、入社後に不安に思うような内容はネガティブに感じてしまうのでしょう。
――こういう具体例を見ると、逆にSNSでくだけた感じを出し、親しみやすくすると裏目に出るということですか。企業側はどういうSNSを発信すれば、就活生にプラスのイメージを持たれるでしょうか。
服部幸佑さん 親しみを持ってもらうための内容を発信することもよいかと思いますが、あくまで学生は情報収集を目的に企業のSNSを見ています。ダンスなどのエンタメ要素が強いものや、事業と関係のなさそうな内容の投稿は敬遠されてしまいます。
ですから、仕事内容を紹介することに撤して、その企業に入社した後をイメージできるような内容でアピールができるとよいと思います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
服部 幸佑(はっとり・こうすけ)
株式会社マイナビ キャリアリサーチラボ研究員
転職エージェントの営業を経て、物流に関する分析業務を経験したのち2024年に中途入社。現職では主にインターンシップ・就職活動準備実態に関する調査や大学生の広報活動開始前の活動調査を担当。就活生の早期キャリア形成や企業におけるインターンシップのありかたに関心が高い。
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