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創価大・吉田響、マラソン&トレランの二刀流へ…箱根駅伝2区の日本人最速ランナーが新たな挑戦

読売新聞 / 2025年1月29日 10時35分

東海大1年時の箱根駅伝5区で区間2位の走りを見せた吉田響

 青学大の2年連続8度目の優勝で幕を閉じた第101回箱根駅伝。多くの新記録が生まれた中、2区で日本人歴代最高の1時間5分43秒をマークした創価大の吉田響(4年)が、卒業後にプロランナーとしてマラソンとトレイルの「二刀流」に挑むと宣言した。学生界のエースが目指すトレイルランニングとは何なのか。(編集委員 近藤雄二)

「世界の頂点目指せる」

 花の2区での快走後、吉田響は力強く宣言した。

 「卒業後はプロランナーになります。そして、マラソンとトレイルランニングの二刀流で頑張りたい」

 目指すは、2028年ロサンゼルス五輪男子マラソンでのメダル獲得と、将来的なトレイルランニングでの世界的な活躍だという。

 トレイルは、舗装されていない道のこと。つまり、トレイルランニングは、未舗装の登山道や林道などを駆け巡るスポーツだ。世界的にはフランスやイタリア、スペインなどの欧州選手に強豪が多く、アジア周辺では日本や中国、香港、フィリピン、豪州などで盛んだ。

 吉田響の挑戦を、大いに歓迎するのが日本トレイルランニング協会の福田六花りっか会長だ。

 「これまで国内では、トラックやロードの長距離トップ選手が、本格的にトレランに取り組む例はなかった。学生トップレベルの吉田選手なら、間違いなく世界の頂点も目指せる」

 世界的な注目の高まりを背景に、世界陸連(WA)は21年に世界マウンテン・トレイルランニング選手権を創設(コロナ禍で22年に延期)。今年9月にはスペインで第3回大会が行われる。また、国際トレイルランニング協会(ITRA)は昨年10月、第1回アジア太平洋トレイルランニング選手権(APTRC)を韓国・蔚山ウルサンで開催するなど新たな国際大会の整備を進め、32年ブリスベン五輪・パラリンピックでの採用も目指している。

国内愛好者30万人

 国内でのトレラン人気も着実に高まっている。福田会長によると、20年ほど前は日本の競技人口は数千人レベルで大会数も50に満たなかったというが、「現在では30万人が愛好し、年間400以上のレースがあるとされています」と語る。

 福田会長がレースプロデューサーを務め、国内最大級のトレランレースとして知られる「マウントフジ100」は昨年4月に10回目の開催を迎え、約160キロと約70キロの2部門に国内外から3000人以上が参加。富士山周辺を巡る絶好のロケーションもあり、国際的にも注目を浴びる大会として定着している。

 また、トレランは近年問題化する登山道の荒廃を防ぐ役割も担う。人口減社会で登山道整備に携わる人手不足が深刻化する中、多くの大会ではレース前後に関係者がコース整備を行う。「トレラン大会開催は登山道の維持にもつながっています」と、福田会長はその社会的意義も強調する。

注目度アップに期待

 ただ、競技スポーツとしは、まだまだマイナーなのが現実だ。昨年10月のAPTRCでは、距離41キロのショートトレイル女子で高村貴子が優勝、距離76キロのロング男子で順大出身の甲斐大貴が2位に入るなど、6人の個人メダリストが誕生。団体戦でもショートとロングの男子と女子全てで日本が優勝し、男女全体の総合優勝も果たした。

 「それでも、一般メディアで取り上げられることはほとんどありません。やっぱり皆が知っているスポーツにしたいと切に思いました。吉田選手のような著名ランナーの参入は、競技への注目度を高め、競技レベルの向上にもつながるはず」と福田会長は力を込める。

 吉田響は創価大編入前の東海大1年時、箱根駅伝で5区2位と快走し、上り坂への適性は証明済み。福田会長は「ロードから転向するランナーは最初下りで苦労するが、慣れればスピードが生かせる。また、トレイルで鍛えた強靱きょうじんな体幹や足腰は、マラソンにも生きるはずです」と指摘する。

 静岡県御殿場市出身の吉田響は「フルマラソンをメインに、富士登山競走や国内のトレイル、将来的には国際レースにも挑戦したい。それと同時に、御殿場市など地元静岡のトレイルレースの盛り上げなどにも貢献していきたい」と夢を語る。

 かつてない、ランニング界の二刀流挑戦が、どんな結果をもたらすのか。学生界トップランナーの異色の挑戦に、注目したい。

よしだ・ひびき 静岡・東海大静岡翔洋高出身。箱根駅伝では東海大1年時に5区2位。創価大編入後の3年は5区9位、4年は2区で日本人歴代最高の1時間5分43秒で区間2位。自己記録は5000メートル13分39秒94、1万メートル28分12秒01。1メートル61、46キロ。

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