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レスリングから転向した豊昇龍、亡き恩師と約束「相撲をやるからには横綱を目指す」

読売新聞 / 2025年1月29日 15時0分

 大相撲の豊昇龍関(25)が29日、横綱に昇進し、東京都台東区の立浪部屋で伝達式に臨んだ。注目の口上では「横綱の名を汚さぬよう、気魄きはく一閃いっせんの精神で精進いたします」と覚悟を示した。土俵入りの型は、叔父で元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジさん(44)と同じ雲竜型に決まった。

 記者会見で豊昇龍関は、「言うことないくらいうれしい」と笑顔で語った。口上で、大関昇進時と同じ四字熟語の「気魄一閃」を使った理由については「その(言葉の)通りに今まで頑張ってきたので、これからもその言葉を使おうと思った。何があっても力強く立ち向かうことにして、頑張りたいと思って使った」と説明した。

 亡き恩師との長年の約束をついに果たした。

 豊昇龍関が「先生がいなければ、自分はここにいない」と言う恩人は、千葉・日体大柏高のレスリング部監督だった大沢友博さん。抜群の運動神経と負けん気の強さを買い、まだ線が細かった自分をモンゴルからレスリングの留学生として日本に連れて来てくれた。

 ただ、高校1年の5月、両国国技館で夏場所を観戦したのをきっかけに相撲の魅力にとりつかれ、相撲部への転部を決意。そんな心変わりにも、大沢さんはある約束を交わして背中を押してくれた。

 大関だった昨年9月の秋場所のさなか。急性骨髄性白血病で闘病中だった大沢さんが、69歳で死去した。訃報ふほうを聞いた豊昇龍関は取組後、茨城県の自宅に赴いて手を合わせた。その際、大沢さんの家族に恩師と交わした約束を明かした。「先生と『相撲をやるからには、横綱を目指す』と約束したんです」――。

 入院先の病院で、大沢さんは本場所の中継を見ながら医師や看護師に「強いでしょう。私の教え子なんだ」と自慢していたという。妻の智恵子さん(67)は初場所千秋楽、夫の遺影がある部屋のテレビをつけ、豊昇龍関の逆転優勝を見届けた。「本当に涙が止まらなかった。約束をかなえてくれて、天国の主人もきっと喜んでいるはずです」

 豊昇龍関は初場所後の27日、思いを口にした。「やっと約束を果たせた。天国から見守ってくれていると信じています」。恩師への感謝を胸に、新横綱の務めを果たすつもりだ。

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