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海軍練習機「赤とんぼ」復元へ…久留米市でプロジェクト

読売新聞 / 2025年1月30日 9時30分

製作を進める九州航空宇宙協会のメンバー

 戦前から戦中にかけ、国民から「赤とんぼ」と呼ばれた海軍の九三式中間練習機を復元するプロジェクトが、福岡県久留米市で進んでいる。間もなく終戦から80年。機体の大半が木と布でできていながら、戦争末期には特攻機として使われた赤とんぼがよみがえった姿は、戦争の実相の一端に触れる手がかりにもなりそうだ。(大塚晴司)

 復元に取り組んでいるのは、航空の有識者や愛好家らでつくり、100年近い歴史がある「九州航空宇宙協会」。協会によると、顧問の前田建さん(84)の父建一さんらが1931年に設立した九州航空会がルーツで、戦前に開発したグライダーで滞空時間の日本記録を打ち立てるなど高い技術を持ち、軍の練習機としても使われた。

 敗戦後の中断を経て活動を再開し、近年はライト兄弟のライトフライヤー号や、日本で初めて飛行したグライダーとされるル・プリウール機などを復元してきた。

 現在の会員は教員や環境デザイナー、会社役員、元警察官ら36人。2019年に熊本県錦町の人吉海軍航空基地跡地の資料館を見学し、同基地で赤とんぼによる訓練が行われていたことに加え、福岡市郊外の雑餉隈にあった渡辺鉄工所(後の九州飛行機、現渡辺鉄工)で、フロート(浮舟)を装着して離着水する九三式水上中間練習機が生産されていたことから、水上機の方を復元することにした。

 建一さんの教え子に設計図を引いてもらい、翌年5月、福岡市西区の前田さんの自宅に隣接した工房で製作を始めた。当初は4年後の24年の完成を目指していたが、コロナ禍で集まって作業することが難しくなり、工程が大幅に遅れた。

 同年3月、航空宇宙工学が専門で、協会長の麻生茂・九州大名誉教授(71)が副学長を務める久留米工業大の航空宇宙実習棟に場を移し、作業を本格的に再開した。飛行機作りを伝承する狙いで同大の学生も作業に加わり、翼の部品や翼端などの製作を進めている。赤とんぼと呼ばれるゆえんとなった機体の色をより正確に再現できるよう、研究していくという。

 完成後の機体の展示や受け入れ先などは決まっていないが、プロジェクト事務局の木下澄宏さん(82)は「ライトフライヤーと同じ木と布でできた赤とんぼを作ることは、ものづくりの原点。子どもたちが飛行機に関心を持ち、それが航空の発展につながっていくきっかけになれば」としている。

 ◆九三式中間練習機=1934年に制式採用された複葉機で、機体のだいだい色と形状から「赤とんぼ」の愛称で呼ばれた。陸上機と水上機があり、渡辺鉄工所など全国の主要航空機メーカーで5500機以上が量産された。戦況の悪化で航空機が不足すると、目立たないよう濃緑色に塗られ、特攻機として実戦に投入された。水上機は全長約8・7メートル、全幅約11メートル。

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