中国人の春節旅行先、日本が一番人気 落とすお金も国別でトップ
J-CASTニュース / 2025年1月29日 12時10分
春節にともなう東京タワーのライトアップ
中華圏で旧暦の正月(旧正月、春節)が始まった。今年(2025年)の春節は、中国人の海外旅行先で日本が一番人気というデータもあり、日本の観光地や商業施設では「春節インバウンド商戦」に期待が高まっている。
日本に来る中華圏旅行者はどこに行っているのか、調査や旅行者の声から動向を探った。
東京タワー、映画村...各地でイベント
中国本土をはじめとする中華圏や東南アジアの一部の国は、旧暦の正月を祝う風習がある。2025年の場合、旧暦の元旦に当たるのが1月29日で、中国、台湾、香港では前後の5~7日が春節の休日になる。
最も人口が多い中国は1月28日から2月4日が法定休暇だが、その直前の週末から休みを取って帰省したり旅行したりする人も多い。国営メディアによると今年は1月中旬から2月下旬までの1か月強でのべ90億人が移動する見通しだ。
春節は地元に戻って家族親せきで過ごすのが伝統的なスタイルだったが、近年は海外旅行に出る人も急増した。受け入れる国・地域は春節イベントを実施し、誘客に力を入れる。
日本では東京タワーが1月28日から春節仕様のライトアップを実施。上野中央通り商店会は春節期間中にカニ汁を無料で振る舞う。
京都市の東映太秦映画村は、「赤と金の春節祭」を初めて開催する。侍や町人など江戸の住人たちが、「赤」と「金」を基調とした衣装で来場者を出迎えたり、江戸の街並みを赤い提灯で彩ったりして、中華圏からの旅行者を歓迎するという。
低迷続いた中国人インバウンド
訪日中国人旅行者というと、多くの人が「爆買い」を思い浮かべるだろう。コロナ禍前は中国人旅行者が百貨店や家電量販店に殺到し、中国のモバイル決済アプリ「アリペイ(支付宝)」「WeChat Pay」の導入も進んだ。
しかし、2020年に始まったコロナ禍でインバウンドは消失。日本政府が2022年秋に水際対策を大幅に緩和して以降、訪日外国人旅行者は徐々に戻ってきたが、福島第一原子力発電所の処理水放出で中国の対日感情が悪化するなど、複数の要因で中国からの旅行者は回復が遅れた。
思えば昨年(2024年)の春節期間、普段から中国経済を取材している筆者は複数のテレビ局から「中国人の間で青森旅行が人気のようだ」「スキー場に中国人がたくさん来ている」ことに対してコメントを求められた。が、中国でそのような情報は少なく、「本当に中国人ですか? 台湾人じゃないですか」「ゼロコロナ政策で何年も海外に行けなかった中国人が、数年ぶりの海外旅行先に青森を選ぶのは考えにくい」と答えた。
実際、JNTO(日本政府観光局)の統計を見ると、2024年2月の訪日中国人旅行者は2019年比36.5%減の45万9400人で、台湾の50万2200人(同25.6%増)を下回っている。昨年の春節インバウンドを盛り上げたのは、中国人でなく台湾、香港を含めた「中華圏」の旅行者というのが実態だった。
日本に落とすお金、中国人がトップ
中国人旅行者が急激に回復したのは、2024年4月以降だ。花見シーズンと空前の円安が重なり、筆者の体感でも「知り合いの中国人がものすごい勢いで日本に来ている」という感覚があった。
JNTOの統計では、2024年の訪日中国人旅行者は689万1200人。2019年の72.8%にとどまるが、韓国の881万7800人に次いで、国・地域別で2位に浮上した。ちなみに台湾人は604万4400人、(2019年比23.6%増)、香港は268万3500人(同17.1%増)で、中国、香港、台湾だけで訪日外国人旅行者の42.6%を占める。
日本に落とすお金になると、中国人の存在感はさらに際立つ。
観光庁によると、訪日外国人旅行消費額は8兆1395億円。その21.3%をトップの中国が占め、2位以下は台湾、韓国、米国、香港と続く。
つまり訪日外国人の数としては韓国人が最多だが、消費額としては中国、台湾がツートップ。中国系越境決済アプリ企業の幹部は、「香港人も高額消費の傾向があり、1人あたりの消費額が多い」と説明した。春節商戦に期待が高まるわけだ。
東京、大阪、京都が人気という当たり前の結果
では、中華圏旅行者は今年の春節でどこに向かうのか。すでにさまざまな調査結果が出ているので一部を紹介したい。インバウンドビジネスメディア「訪日ラボ」を運営するmovが発表した中華圏旅行者の『インバウンド人気観光地ランキング』は1位が白川郷(岐阜県)、2位清水寺(京都府)、3位東京ドーム(東京都)だった。
これは、Googleマップから公開されている口コミを調査リソースにしたとのことで、中国人はGoogleを使う習慣がないため、実際は台湾と香港人旅行者による人気ランキングと考えた方がいい。
白川郷はコロナ禍前からリピーターを中心に人気が高く、2位、3位も定番の旅行先だ。4位以下も白川郷を除くと大都市圏の著名スポットが並んでおり、人気ランキングだと定番スポットが上位に来ることが分かる。
オプショナルツアー予約サイトを運営する株式会社KKDAY JAPANも、予約データを基に2024年の春節休暇で日本を訪れる外国人旅行者の人気都道府県ランキングを発表した。結果は1位東京、2位大阪、3位京都、4位北海道、5位沖縄で、こちらも意外性はない。
KKDAY JAPANは同時に「人気上昇」体験先ランキングも発表しており、そちらはトップが山形、2位が仙台だった。
「2025年の春節は山形が人気」「雪体験に注目」というテレビニュースも目に入ったが、KKDAY JAPANの調査に基づいて取材したのだろう。
確かに前年比で上昇幅が大きいのだろうが、数でいうと東京、大阪、京都、北海道、沖縄が圧倒的主流であるのはコロナ禍前から変わらない。それでは話題性がイマイチなので、「今年のトレンド」を何かひねり出さないといけないという事情もありそうだ。
中国人が利用するモバイル決済「アリペイ プラス」の運営会社にも、利用動向から見える旅行者の傾向を聞いた。
2024年の消費額では東京と大阪が67%を占めているが、その比率は2023年からやや減少し、北海道、福岡、沖縄が著しく伸びたという。また、「体験消費」の伸びが大きく、アニメイトやゲームセンターの利用が増えているとのことだった。
旅行先の分散、地方都市の人気拡大は、路線の増加とも大きく関係している。2024年12月は福岡―西安線、静岡―香港線が新規就航し、香港―仙台線が13年ぶりに復活した。今年1月以降も、日本の地方空港と中国、香港、台湾を結ぶ路線が拡充する。就航都市の増加が、中華圏旅行者の行動範囲の拡大や行動の多様化につながっている面もある。
ブランド店で爆買い
最後に、中国側からの分析も紹介したい。
前述の通り、2024年春節は、日本旅行の盛り上がりはイマイチだった。シンガポール、マレーシア、タイが中国人向けの観光ビザを免除し、そちらに関心が向いただけでなく、処理水問題で日本関連のプロモーションが手控えられた。
だが、「実利」を取るのも中国人の特徴で、春に円安が進むと、中国人の訪日旅行は急回復した。
ルイ・ヴィトンを筆頭に「高級ブランドの商品を日本で買うとこれくらいお得」という情報がSNSで広がり、中国の節約志向の高まりを背景に、日本の中古ブランド店の人気も高まった。
実際に買い物旅行に来た30代の中国人女性は、「日本の中古市場は鑑定や流通システムがしっかりしているので、安心感がある」と話した。
コロナ禍前のように、団体旅行客が温水洗浄便座や炊飯ジャーを大量に買う、というような分かりやすい行動は見られなくなっているし、体験消費も着実に広がっているのだろう。
だが、中国人旅行者にとって日本での買い物は最大の目的であり、観光庁の調査でも買い物額は中国人が突出している。
日本旅行人気は今年の春節でも続いており、中国のオンライン旅行サイトの複数のデータでも、人気海外旅行先として日本が筆頭に挙がっている。現地メディアによると、日本人気のあまり、航空券価格が欧州より高くなるケースも出ているという。
【筆者プロフィール】
浦上 早苗(うらがみ・さなえ):経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。新聞記者、中国に国費博士留学、中国での大学教員を経て現職。近著に「崖っぷち母子 仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ」(大和書房)「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。
この記事に関連するニュース
-
90億人の大移動「春節」中国人が続々と来日、ニッポンのどこへ行く? ドラッグストアの売れ筋は?【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月30日 20時2分
-
台湾人訪日客の存在感強まる 地方都市訪れるリピーター多く、アニメの聖地巡礼も人気
産経ニュース / 2025年1月28日 18時44分
-
中国からの旅行先で一番人気は日本! ミキモト真珠島も外国人観光客で賑わう「リーズナブルで良い価格」三重・鳥羽市
CBCテレビ / 2025年1月28日 18時35分
-
春節で中国人客は増える?増えない? 伸びに陰り、観光地やきもき
毎日新聞 / 2025年1月28日 10時21分
-
訪日外国人クレジットカード決済額は成長基調、国別の構成比は? - 三井住友カードが分析
マイナビニュース / 2025年1月20日 11時53分
ランキング
-
1救助作業阻む新たな陥没と水 トラック運転席は目視できず 八潮陥没事故
産経ニュース / 2025年1月30日 17時50分
-
2東大阪の山中切断遺体、衣服や所持品身につけず 「警察官40人ぐらいで捜索」と近隣男性
産経ニュース / 2025年1月30日 17時2分
-
3奈良県の”メガソーラー計画”断念 山下知事「地元の理解が得られない」 より小規模なソーラー施設を検討へ
ABCニュース / 2025年1月30日 18時24分
-
4惨状、肉声で生々しく 大洋デパート火災訴訟の録音テープなど寄贈
毎日新聞 / 2025年1月30日 14時29分
-
5エレベーターで男性挟まれる事故 脳にダメージ受けた可能性も
KKT熊本県民テレビ / 2025年1月30日 19時49分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください