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次世代原子炉の高熱で水素製造、大洗町に建設計画…原子力機構が規制委に審査申請へ

読売新聞 / 2025年1月30日 15時0分

高温ガス炉で水素を作る仕組み

 日本原子力研究開発機構は2月にも、次世代原子炉「高温ガス炉」と一体で運用する水素製造施設の建設に向けて、原子力規制委員会に審査を申請する方針を固めた。高温ガス炉の実験炉「HTTR」(茨城県大洗町)の隣に設置する計画で、水素製造が実現すれば世界初となる。2025年度に規制委の審査で「合格」を取り付け、28年度に運転開始を目指す。

 高温ガス炉は、従来の原発と同じ核分裂反応を利用するものだが、冷却機能に水ではなくヘリウムガスを用いる。原子炉で得られる熱が300度に対し、高温ガス炉は800度以上とはるかに高く、水素製造に必要な温度を得られる。発電だけでなく、脱炭素エネルギーの一つである水素の生産にも活用できるのが特徴だ。

 水素の生産は石炭などの化石燃料を原料とする方法があるものの、その過程で地球温暖化の原因となる二酸化炭素を大量に排出してしまう。太陽光発電などで水素を作り出す方法は、天候に左右されやすい。一方、高温ガス炉は安定して稼働し、電気と水素を確実に生み出せる。

 計画では25年度中に規制委から許可を得て、実験炉HTTRの隣接地で26年度に水素製造施設の着工に乗り出す。実験炉側から高温のヘリウムを通すパイプを延ばして循環し、その熱でメタンと水を反応させて大量の水素を作る。

 水素は燃料電池自動車のほか、製鉄所や化学工場など産業用途で幅広い需要がある。水素製造施設の開発費などとして、原子力を所管する経済産業省は25年度当初予算案に前年度比6割増となる436億円を計上した。

 日本は1960年代から高温ガス炉の開発に取り組み、研究実績でリードしてきた。近年は中国や米国、英国なども開発を加速させている。実験炉HTTRは定期検査のため11年1月に停止し、規制委の審査を経て21年に運転を再開したが、まだ研究段階で、実際に水素を作り出したことはない。

 原子力機構は審査の進め方について、規制委事務局と協議を重ねてきた。その結果、水素製造施設の中で高温になる中核の設備は、トラブルを起こすと原子炉の運転に支障を与える恐れがあるため、経産省ではなく規制委が安全性を重点的に審査することに決まった。

 原子力機構の坂場成昭・高温ガス炉プロジェクト推進室長は「30年までに水素製造に成功し、世界トップの技術に育てたい」と話す。実用化の一歩手前となる実証炉の設計・製作も進め、30年代後半の運転を目指している。

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