UNRWA活動禁止法、イスラエルで施行…ガザやヨルダン川西岸で物資配布や医療に影響必至
読売新聞 / 2025年1月30日 23時17分
【エルサレム=福島利之】イスラエルで30日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する新法が施行された。イスラエルは支援に向けた代替案を示しておらず、パレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸で人道物資の配布や医療に影響が出るのは必至だ。
UNRWAによると、30日朝もガザや西岸、東エルサレムでの診療所や学校は通常通り運営を始めた。ただ、東エルサレムではイスラエル当局の妨害を懸念し、出勤しない職員もいた。西岸の職員は「どんな制約が出るのか」と気をもんだ。
東エルサレムのUNRWA本部に勤務する日本人2人を含む国際職員の約30人は、イスラエルが滞在ビザを29日までしか認めなかったため国外へ退去した。本部前には30日、新法の施行を祝う極右の支持者数十人が集まり、看板に落書きした。その一人、シャイ・グリック氏(38)は「UNRWAはテロを支援してきた。この土地はイスラエルに戻すべきだ」と主張した。
イスラエル国会が昨年10月に可決した法律は、2023年のイスラム主義組織ハマスによるイスラエル奇襲で職員9人の関与が判明したUNRWAに対し、イスラエルでの活動を禁止する内容だ。ガザや西岸での物資搬入に際し調整が不可欠となるイスラエル当局との接触も禁じる。住民への支援は困難になるとみられる。イスラエル外務省の報道官は30日、取材に「UNRWAはハマスと同様の組織であり、イスラエルは接触を持たない」と述べた。
UNRWAによると、ガザでの食料や医薬品などの支援物資は当面、備蓄で賄う予定。その後は他の関係機関を通じて物資を搬入し、活動の継続を模索する。現在、ガザでは職員約1万3000人が働き、診療所で約1500人が治療にあたる。職員の雇用は維持する方針だ。
UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は28日の国連安全保障理事会で「法の施行は、パレスチナ人の生活状況をさらに悪化させるだけだ」と訴えた。
◆UNRWA=1948年のイスラエル建国とその後の戦争などで故郷を追われたパレスチナ難民への支援のために49年に設立された。ガザやヨルダン川西岸のほか、ヨルダン、レバノン、シリアで約590万人に教育や医療の支援を行っている。ガザと西岸で運営する難民キャンプは27か所、学校は384校、診療所は65か所に上る。
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