米金利据え置き 「トランプ政策」を見極めたい
読売新聞 / 2025年1月31日 5時0分
トランプ米政権の政策がインフレを助長するとの懸念は強い。米連邦準備制度理事会(FRB)は、その影響を見極めながら、金融政策を運営していくことが大切だ。
FRBは政策金利を年4・25~4・50%に据え置くことを決めた。利下げにこだわるトランプ政権の発足後、初の会合となったが、昨年9月以降3回にわたり続けてきた利下げを今回は休止した。
FRBが歴史的なインフレの抑制に向け、2022年春以降、急速に利上げを進めた局面では、景気を冷やしすぎることが懸念されてきた。だが、景気は崩れず、世界経済で1強と称されている。
一方で、昨年12月の消費者物価指数の上昇率は、前年同月比2・9%と3か月連続で加速した。
パウエル議長は記者会見で、堅調な経済を踏まえて、利下げ判断を「急ぐ必要はない」と述べた。声明文でも「2%の物価目標に向けて進展している」との文言を削除した。今は、物価高の再燃に警戒感を強めているのだろう。
インフレは、特に低所得者層の家計を苦しめて、社会の不安定化を招く。FRBは、追加の利下げを判断する際は経済や物価動向を丁寧に点検してほしい。
先行きの不確実性は高い。トランプ政権の政策が、物価高を加速させるリスクがあるためだ。
トランプ大統領は、製造業の保護や、他の政策目的を達成するための取引(ディール)の手段として、高関税政策を進める考えだ。それが物価上昇を招かないか、FRBは精査してもらいたい。
軍用機を使った不法移民の強制送還を本格化させてもいる。人手不足が賃金と物価の上昇を招くことを考慮する必要がある。
利下げを巡って、トランプ氏とFRBの間では、すでに神経戦が始まっている。金融市場に混乱が広がらないかも心配だ。
FRBは昨年末に25年の利下げ回数は2回との見通しを公表した。市場では、次回の政策変更は6月頃との見方が増えている。
トランプ氏は、景気や株価を押し上げる効果を期待して、利下げに対する執着が強い。
今回の決定後も、FRBとパウエル議長に対し、「自らが作り出したインフレという問題を止めることができなかった」とSNSに投稿し、不満を示した。
拙速な利下げで物価高が落ち着かなければ、政権の支持率に響く。トランプ氏にとっても得策ではあるまい。FRBの金融政策の独立性を尊重するべきである。
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