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400m先の線路上に作業員、あわや接触事故…「作業優先」し規定守らず見張り役ゼロ

読売新聞 / 2025年2月1日 7時26分

 北海道砂川市のJR函館線砂川駅の上り線で昨年11月、走行中の貨物列車(20両編成)が直前に線路上にいた保線作業員3人に気づき、緊急停止したことが31日、JR北海道への取材でわかった。作業員はいずれも待避して無事だったが、列車は作業員がいた地点を過ぎてから止まった。作業員はJR北の社内規定を守らずに作業し、列車の接近を知らせるのに不可欠な見張り役も配置していなかった。重大事故につながりかねず、専門家は組織としての安全意識の低さを指摘する。

 走行中の列車と現場作業員が異常接近するトラブルは「待避不良」と呼ばれる。

 読売新聞が入手したJR北の事象報告書などによると、待避不良が起きたのは昨年11月9日午前1時40分頃。北旭川発札幌貨物ターミナル行きの貨物列車が通過のため砂川駅に進入した際、運転士は約400メートル先の駅構内の線路上に作業員3人がいるのを発見し、汽笛を鳴らして非常ブレーキを作動させた。作業員は気づいて線路を離れたが、列車はそのまま走り続け、作業地点から約100メートルを過ぎてようやく停車した。

 社内規定では、線路内に立ち入って作業をする際、列車が前の駅を通過・出発する時間までに待避するよう定めている。砂川駅の待避不良では、列車が滝川駅を通過する時刻の午前1時31分には線路を離れる必要があったが、作業員は「接近時間を失念していた」と説明。列車は時速85キロで走行し、作業員は約17秒前に気づいたことになる。当時は線路の間に設置した「絶縁ブロック」という部品を交換し、仕上げの作業をしていたという。

 また線路内の作業では、前方と、隣の線路を監視する「列車見張員」「隣接線見張員」をそれぞれ配置し、列車見張員は無線で作業員に列車の接近を伝えるとともに、作業中を知らせる赤色のLEDライトを点灯させる決まりになっている。だが砂川駅では見張員がゼロで、LEDライトも設置していなかった。

 理由について、作業員は「マニュアルで定められた保安体制を取るより、作業を(効率よく)遂行することを優先してしまった」と釈明。さらに「函館線は夜間の貨物列車の本数が少なく、見張員を配置しなくても接近時間が把握できると思った」と述べたという。

 JR北は「作業員の命を失いかねない事態で、ルールが守られていない中で起きたことは重大だと受け止めている。これまでもルールを守る重要性について指導をしてきたが、引き続き徹底する」とコメントした。

 国土交通省は「鉄道事故等報告規則」で脱線事故や衝突事故、輸送障害などがあった場合、鉄道事業者に報告を義務づけている。同省北海道運輸局は、今回の砂川駅の待避不良は該当しないことから、JR北やJR貨物から報告は受けていないとしている。

死傷事故 全国で

 全国では、保線作業員が列車にはねられて死傷する事故が相次いでいる。昨年12月には浜松市のJR東海道線高塚駅近くの線路で交換用レールを溶接していた作業員が貨物列車にはねられ、死亡した。2023年4月にも富山市の富山地方鉄道で、枕木の下に砂利をまいていた作業員が列車と接触し、亡くなっている。

仰天するような大問題

日本大の綱島均・特任教授(鉄道工学)の話「見張員を配置しないなど基本ルールが全く守られていないのは大問題だ。仰天するような話で、他の鉄道事業者でも聞いたことがない。ヒヤリハットというレベルを超え、重大インシデントに該当しかねない事案で、JR北は安全に対する姿勢が足りないと言わざるを得ない。現場任せにせず、安全の取り組みが実効性を持って行われているか総点検すべきだ」

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