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64歳で読み書きを学びラブレター綴った男性の映画、3月公開…亡き妻に「いい映画ができたよ」

読売新聞 / 2025年2月2日 6時11分

試写会であいさつする西畑さん(中央、奈良市で)

 妻への感謝の気持ちを伝えるため、64歳から夜間中学に通って読み書きを勉強した奈良市の西畑保さん(89)をモデルにした映画「35年目のラブレター」(塚本連平監督)が完成し、3月7日から全国公開される。1月20日には奈良市内で試写会が行われ、塚本監督ら関係者があいさつした。西畑さんは「映画を見た人に、何歳からでも勉強を始められると思ってもらいたい」と話している。(池田光汰)

 西畑さんは和歌山県生まれで、家庭が貧しかったことなどからいじめに遭い、小学低学年の頃から学校に通えなくなった。文字を読むことも書くことも出来ないまま大人になり、「読み書きが出来ないと人として認めてもらえない」と劣等感を抱き続けた。

 奈良市内のすし店が境遇に理解を示してくれ、すし職人として働き、35歳で出会った妻・皎子きょうこさんと結婚。しばらくは読み書きのことを隠していたが、皎子さんは事実を知っても「つらかったでしょう。一緒にがんばろう」と言ってくれた。2人の子どもにも恵まれた。

 「これまで支えてくれた妻への感謝を手紙で伝えたい」。約35年勤めたすし店を定年退職後、読み書きを勉強しようと、奈良市の市立春日中の夜間学級に入学した。苦労して勉強を重ね、「これまで役所で署名する時も妻に書いてもらっていたので、自分の名前が書けた時は本当にうれしかった」と振り返る。

 7年後の71歳のクリスマス前、初めて皎子さんに感謝の思いをつづったラブレターを送った。「君のお陰で今の僕があります」「君は僕を一人(の)人間(と)して立ててくれて、うれしかったよ」

 結婚して35年以上がたっていた。その後も西畑さんはラブレターを書いたが、皎子さんは2014年に亡くなった。

 映画は、笑福亭鶴瓶さんと原田知世さんが、西畑さん夫婦を演じ、奈良市や大和郡山市でもロケが行われた。

 プレミア試写会は、「なら100年会館」で行われ、約650人が鑑賞。上映後には、塚本監督と森谷雄プロデューサーが舞台あいさつを行い、塚本監督は「これだけたくさんの方に見てもらえてうれしい。西畑さんの話を聞き、夫婦や家族の愛など、描きたいテーマを全て描いた」と語った。西畑さんも登壇して塚本監督に花束を渡し、会場は大きな拍手に包まれた。

 奈良市の教員(38)は「文字が書けることは当たり前ではないと改めて知った。そういう人たちが何歳になっても学べる場所があることの大切さがわかった」と涙ぐんだ。

 西畑さんは「手紙を渡すシーンでは、当時を思い出して感動した。妻にいい映画ができたよと伝えたい」と語った。

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