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米高関税決定 貿易戦争の拡大を回避せよ

読売新聞 / 2025年2月3日 5時0分

 トランプ米大統領が、高関税政策の発動を決定し、貿易戦争への扉を開いた。世界経済と国際秩序に打撃を与える深刻な事態である。早期に収拾する方策を探すべきだ。

 トランプ氏は1日、カナダとメキシコからの輸入品に対して25%の関税を、また中国には10%の追加関税をかける大統領令に署名した。4日から適用する。カナダ産の原油などは国内価格の上昇を抑えるため、10%にとどめた。

 「タリフマン(関税の男)」を自称するトランプ氏は、ついに高関税政策の断行に踏み切った。

 国際緊急経済権限法に基づく措置で、不法移民や、中国で原料が製造される合成麻薬などの流入を「国家緊急事態」と認定した。薬物対策や国境警備で協力を得られるまで課税を続けるという。

 他の政策目的を実現するための取引(ディール)の手段として関税を使うのは、中国が行っている「経済的威圧」と同じやり方で、到底容認できない。自由貿易の理念に反することも明白だ。

 脅しは各国の反発を強め、協力をむしろ遠ざけるだろう。

 米国の輸入先は、自由貿易協定を結ぶメキシコが1位、カナダが3位だ。中国は2位で、いずれも年4000億ドル(約62兆円)を超えている。世界経済を牽引けんいんする米国の3大貿易相手が対象となり、大きなダメージが懸念される。

 特に1994年に北米自由貿易協定(NAFTA)が発効後、協定を改めながら緊密な関係を築いてきたカナダとメキシコとのサプライチェーン(供給網)の混乱や生産コスト増は避けられない。

 その影響は米国側にも跳ね返ってくる。物価高を加速させることは必至だ。トランプ氏は、国民への弊害を直視する必要がある。

 対抗措置として、カナダのトルドー首相は、1550億カナダ・ドル(約16・5兆円)相当の米国製品に対し、段階的に25%の報復関税を課すと表明した。メキシコと中国も対抗策を取るという。

 米大統領令では、報復措置に対しては、関税率のさらなる引き上げを講じるとしている。事態をエスカレートさせてはならない。

 日本への悪影響も甚大である。トヨタ自動車など自動車産業を中心に、北米とメキシコの3か国にまたがる高度な供給網を構築しているためだ。関税のマイナス面は米国の自動車産業も共有する。

 石破首相は訪米し、トランプ氏と7日に会談する予定だ。高関税の問題点を指摘し、措置の早期撤回につなげてもらいたい。

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