出版界でますます勢いづく老いの本……86歳が若い世代を読んだ読書体験記も
読売新聞 / 2025年2月10日 15時30分
「老い」を描き、読み、語る
近年よく見かける「老い」をめぐる本が、ますます勢いを増している。老いを扱った名著を紹介したり、高齢者がこの世代ならではの読書の楽しみ方と向き合ったり、内容は様々だ。探るほど奥が深い「老年読書」の世界をたどってみた。(川村律文)
名著の数々紹介
「枕草子」「方丈記」などの古典をはじめ、深沢七郎『楢山節考』、有吉佐和子『
かつて大ブームとなった永六輔『大往生』や赤瀬川原平『老人力』を含め、多種多様な内容に触れ、それらを求める世相に迫る。「老い本年表」は圧巻だ。「こんな本、あった!」と思い出すことも多く、記憶力の減退にも気づかされる。
小説は、第172回直木賞の候補になった朝倉かすみ『よむよむかたる』(文芸春秋)が味わい深い。超高齢者の読書会を舞台にした長編だ。メンバーたちは児童文学を朗読しながら、感想を述べ合い、自らの過去や死生観についても話していく。自らに引きつけた登場人物たちの読み方をたどりながら、読書の本質にも触れるような力作だ。
古典から箴言
前田速夫『老年の読書』(新潮選書)は、文芸誌の元編集長が、文学や哲学書から
同じブックガイドでも、『50歳からの読書案内』(中央公論新社編)は、人生100年時代の後半戦の道標になる本を、50人の寄稿によって紹介する。「万葉集」や「論語」などの古典、夏目漱石や森鴎外など文豪の作品から、軽妙なエッセーまで、ジャンルは幅広い。中でも、落語家の古今亭志ん生『なめくじ艦隊』を2人が書いているのが興味深い。50歳はまだ若いようでありながら、「老年読書」に備えるのにちょうど良い時期なのかもしれない。
形のない老い 突き詰め…津野海太郎さん
「意識的に老人になった気がします」。編集者、評論家、演出家と多彩な活動を続けてきた津野海太郎さん(86)=写真=が、『生きるための読書』(新潮社)を刊行した。70歳代から『百歳までの読書術』や読売文学賞を受けた『最後の読書』などで探究してきた「老人読書」というテーマを突き詰めた。
〈老人として生きていることに飽きてくる〉
80歳代半ばになり、不思議な感慨を抱いてきたという。「昔のような老いの形が、僕らの世代にはないんです。だから枯れても、格好がつかないんです」
その時期に、美学者の伊藤亜紗さんが視覚障害について書いた『目の見えない人は世界をどう見ているのか』に触れた。今まで敬遠していた若い著者たちの本を読むようになった。
経済思想家の斎藤幸平さんや、独立研究者の森田真生さん、文化人類学者の小川さやかさんらの著作が心に残った。彼らのような〈生活の場で、じぶんの心身を柔軟に使って考える研究者〉は、「インテリなんだけど、威張らない。新しい世代が出てきたと感じた」。本書はその作品群を通じ、〈息苦しくなる世界に押し潰されずにいるための読書〉の魅力を伝えていく。
書き続ける中で、過去の著作でも触れた哲学者の鶴見俊輔(1922~2015年)を連想した。「ベ平連」などの活動に関わった鶴見や、自らが参加したアングラ演劇など、1960年代、70年代の「小さい運動」と、現代のアナキズム思想を重ね合わせた。「僕らも、鶴見さんたちがやってきたこと、自分たちが生きてきた時代について、きちんと見ていたわけではなかった。だから同世代の人にも読んでもらいたい」。穏やかにつけ加えた。
「若い世代のことを見聞きして、いろんな関係を持つのは面白いよね」
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