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ラーメン店倒産が最多 二大スープ味「醤油」「とんこつ」が半数以上も...「横浜家系」「二郎系」「つけ麺」が少ない理由

J-CASTニュース / 2025年2月4日 18時48分

ラーメン店倒産が最多 二大スープ味「醤油」「とんこつ」が半数以上も...「横浜家系」「二郎系」「つけ麺」が少ない理由

ラーメン店倒産が最多(写真はイメージ)

ラーメン店の倒産ラッシュが止まらない。

東京商工リサーチが2025年1月31日に発表した「2024年『ラーメン店』倒産状況」によると、倒産件数が過去最多に達した。

倒産店のメインスープは「醤油」「とんこつ」の二大人気で半数を超えるが、横浜「家系」や「つけ麺」は安泰だという。どういうことか。調査担当者に聞いた。

仙台の超人気ラーメンチェーン「だし廊」の破産

東京商工リサーチの調査によると、2024年に倒産したラーメン店は57件(前年比26.6%増)で、過去最多だった2023年の45件を大幅に更新した。行列のできる人気ラーメン店がある一方で、食材代や運営コストの高騰に見舞われ、経営に行き詰まるラーメン店の淘汰がハイペースで進んでいる。

ラーメン店は小規模でも開業できるため新規参入が多い。ただ、生存競争は激しく、一説には廃業率は1年以内40%、3年以内70%といわれる。コロナ禍では休業要請もあり、コロナ関連支援で倒産が減少した。

ところが、コロナ禍が落ち着き、お客が戻ると同時に急激な物価高と人手不足が押し寄せた。材料価格や光熱費が急騰し、人手不足で人件費も上昇するなか、よほど特徴のないラーメン店は「1000円の壁」に阻まれ、客足に影響する値上げを容易にできないまま収益が悪化している。

倒産したラーメン店のメインスープの味は、「醤油・中華」が29.8%、「とんこつ」が24.5%と、人気を二分するスープが半数を超える。次いで、「味噌」12.2%、「塩」8.7%と続く。そんななかでも横浜「家系」が5.2%、「つけ麺」が1.7%と、独特の味が強みのジャンルは倒産が少ない。

2024年の最大の倒産は、2月に負債総額約2億6000万円で民事再生法を申請した「ブロスアップ」(宮城県仙台市)。ラーメンチェーン店「だし廊」を経営、素材の味を引き出したスープで地元では知らない人がいない人気店だった。コロナ禍の投資失敗や原材料価格の高騰などで資金繰りに行き詰まり、事業継続を断念した(その後、スポンサーの支援により、別会社で営業を継続)。

東京商工リサーチでは、こう分析している。

「今後は、質と価格を求めた仕入ルート開拓、味や盛り付けによる差別化、オペレーションの効率化など、時代の変化に柔軟に対応しないとラーメン店の淘汰はさらに加速する可能性が高い」

ラーメン界に「味の新風」を巻き起こしたくて参入?

J‐CASTニュースBiz編集部は調査を行なった東京商工リサーチ情報部の担当者に話を聞いた。

――国民食といわれるラーメン店の倒産が最多になった理由はズバリ、何が一番大きいのでしょうか。

担当者 ラーメン店は、材料価格や光熱費、人件費などが上昇するなか、よほどの特徴や人気がないと提供価格「1000円以内」に阻まれてしまいます。

ラーメン業界では「1000円の壁」という言葉があります。文字通り1杯の価格が1000円を超えると客足が伸びなくなります。実質賃金が伸び悩むなか、お客の財布の紐は非常に堅いので、ラーメン1杯に1000円以上の値付けは言葉以上にハードルが高く、乗り越えることが難しくなっています。

――リポートでは、ラーメン店の廃業率は「1年以内40%、3年以内70%」と書いていますが、それほど浮き沈みが激しい業界に何を好んで参入しようとするのか不思議です。

以前、美容院の倒産が多い理由を取材した際、「雇われ美容師の多くが、自分の店を持って美容の世界にヘアデザインの新風を起こしたい」という志を持って参入すると聞きました。ラーメン店の場合も、雇われ店員がそういう味に対する志を持って自分の店を持ちたいと参入してくるのでしょうか。

担当者 ラーメンは、もっともメジャーな国民食で、根強い人気があります。美容師になるには美容師国家資格が必要ですが、ラーメン店には特別な資格は何も必要なく、小規模、小資本での参入が可能です。また、お客と身近に接し、自分のこだわりラーメンの味への反応、喜ぶ顔を見ることができます。

有名店で修行したり、独自に味の開発に挑戦したりと、スタートはさまざまですが、自分の店を持ちたい、独立して夢を叶えたいとチャンスを狙っている人は多いと思います。

「家系」と並ぶ2大勢力「二郎系」の倒産も少ない

――倒産したラーメン店は、「醤油」と「とんこつ」の二大人気スープ味が半数以上を占め、「味噌」も1割以上とありますが、たとえば、「醤油」(東日本)、「とんこつ」(九州方面)、「味噌」(北海道方面)といったように、味と地域には関係はないのでしょか。

担当者 味と地域に明確な相関は見られません。「とんこつ」味の博多ラーメン、「醤油」味の喜多方ラーメンなど、いわゆるご当地ラーメンはありますが、地域的には店舗の多い都市部で倒産が多くなっています。

東京で博多ラーメンを展開するパターン、大阪で味噌ラーメンなどを出店するパターンなど、さまざまです。倒産は新規参入が多く、競争が厳しい都市部に多い傾向が強いです。

――また、独特の味が強みの横浜「家系」と「つけ麺」の倒産が少ないという点が興味深いです。それぞれこだわりの味、ファンを持っているからと思われますが、「家系」と並ぶ2大勢力の「二郎系」の倒産も少ないのでしょうか。

担当者 二郎系の倒産が特に目立つということはありません。ただ、倒産集計に入ってこない小規模な倒産や、個人店の廃業などを含めると実態としては増えていると思います。

二郎系に限らずですが、他店と差別化され、固定ファンがいるラーメン店は、経営が安定しやすいのだと思います。

――仙台で人気の「だし廊」(DASHIRO)を経営していたブロスアップが倒産したとは驚きです。私自身、仙台に出張した折に食べたことがあり、行列を作ったほどの人気店でした。なぜ、あれほど美味しくて、いろいろなメニューがあり、内装にもこだわりがあった店が倒産したのでしょうか。また、同様に人気店が倒産するケースはありますか。

担当者 ブロスアップは、コロナ禍での積極的な設備投資が負担となっていました。そこに原材料価格の高騰がとどめを刺したと考えています。なお、同社は、スポンサーの支援により、別会社で営業を継続しています。

また、人気店の例では東京のラーメン店経営のA社は、コロナ禍の影響に加え、最近は原材料高などのコスト負担が重荷となり、経営が悪化して事業継続を断念しています。

店の行列解消にファストパス導入など、新たな工夫も

――今後、ラーメン店が生き残るにはどんな工夫やサービスが必要だと思いますか。また、新たに参入しようとする人のためにもアドバイスをお願いします。

担当者 ラーメン店の生き残りには、味や価格、盛り付けなどの差別化、運営の効率化が不可欠です。差別化という点では、味やメニュー、具材に独自性を出し、専門性を高めて特定のターゲット層にフォーカスすることも必要でしょう。

最近では、店の行列解消のためにファストパスを導入するなど、新たな取り組みを行うラーメン店も見られますので、独自の工夫やアイデアを打ち出すといいでしょう。

今後も、原材料や人件費の上昇が続いていくことが予想されます。費用を削減することも大切ですが、コストダウンには限界があります。価格転嫁や差別化による付加価値の向上が生き残りの鍵になると思います。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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