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トランプ氏の「ガザ所有」は国際法違反の可能性…ジュネーブ条約で強制移住を禁止

読売新聞 / 2025年2月5日 20時48分

 【ワシントン=池田慶太】米国のトランプ大統領は4日、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘で荒廃したパレスチナ自治区ガザを「長期所有」し、米国が再建を主導する構想を唐突に表明した。ガザ住民の域外移住は国際法に違反する可能性があり、実現のハードルが極めて高い構想が打ち出された背景としてトランプ氏への進言役の不在が指摘されている。

 トランプ氏が1月の復帰後、初めてホワイトハウスに外国首脳を招いて開いた共同記者会見。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の横で、トランプ氏は「私が話をした誰もが、米国がガザを所有する考えを支持している」と根拠を示さずに主張した。

 世界を驚かせたトランプ氏の構想は2段構えとなっている。がれきに埋もれたガザを整地し、ガザの全住民を域外に移住させる。その後、住宅を建てて世界中から人を呼び寄せ、地中海の保養地「リビエラ」のような観光地にするとトランプ氏は熱っぽく説明した。

 ニューヨークを拠点に「不動産王」に上り詰めたトランプ氏は、ガザに不動産としての価値を見いだしたとみられる。就任初日、「ガザは興味深い。素晴らしい場所で、海に面していて、天候も最高。素晴らしいことができるだろう」と記者団に語っていた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、ガザ所有構想はトランプ氏と少数の側近らの間で秘密裏に検討された。直前には中東担当特使のスティーブン・ウィトコフ氏がガザを訪問し、トランプ氏に状況を報告した。ウィトコフ氏はトランプ氏のゴルフ仲間で本業は不動産開発だ。

 しかし、構想を慎重に考え抜いた形跡は乏しい。米国とイスラエルが共に批准しているジュネーブ条約は住民の強制移住を禁じており、実行に移せば条約違反に当たる可能性がある。

 イスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」との整合性も問われる。中東問題を巡り、ガザ住民を移住させずに解決を図ろうとする考え方が国際社会の主流だ。米国でも超党派の支持がある。トランプ氏はこれを根本から覆そうとしており、各方面から反発が予想される。

 トランプ氏はそれでも共同記者会見で構想に関し、不発弾に囲まれたガザに住み続けるのは不可能で、住民の域外移住は人道的配慮だとの持論を展開した。「何か月もかけてこのことを詳細に調べてきた」と強い信念をのぞかせた。

 トランプ政権の1期目は、政治経験の長いペンス副大統領や軍出身のマティス国防長官らが「政治の素人」だったトランプ氏を支え、暴走を食い止める役目を果たした。一方、2期目は閣僚らを自らに忠実なイエスマンで固めており、ガードレール役がいない。こうした事情もあり、専門家が実現可能性を疑うような構想をトランプ氏が打ち出したとの見方が出ている。

 米国はこれまで中東和平の仲介者を務め、停戦の合意や監視といった形で地域に関与してきたが、米国がパレスチナ自治区の一部を直接所有するという発言は前代未聞だ。ガザからパレスチナ人を無理やり追い出せば「民族浄化」にあたり、国際法に違反する。

高橋和夫・放送大名誉教授「米国第一」とも矛盾

ガザから最終的にパレスチナ人がいなくなるということは、イスラエルが成し遂げられていないイスラム主義組織ハマスの壊滅を意味する。米軍をガザに送ればハマスと戦闘になり、米兵に犠牲が出る。全く合理的でなく、現実味に乏しい構想だ。

 今回の発言は、これまでの米国の中東和平外交から逸脱しているだけではなく、トランプ氏が掲げる「米国第一主義」という考え方とも矛盾している。具体性がない突然の発言で、どれだけ本気なのか分からない。

 イスラエルのネタニヤフ政権が連立を組む極右政党は、停戦に反発を示してきた。パレスチナ人の強制移住を行うというトランプ氏の発言は、停戦交渉で第1段階から第2段階に進めるために、極右を説得する材料をネタニヤフ氏に提供したことになる。

 ガザからパレスチナ人が強制移住させられるなら、サウジアラビアはイスラエルと握手できない。期待されていたイスラエルとサウジの国交正常化は今回の発言を受け、遠のくだろう。(聞き手・国際部 村上愛衣)

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