1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

5万3000人死亡のトルコ南部地震から2年、65万人が今も仮設暮らし…「展望ない」と嘆きの声

読売新聞 / 2025年2月6日 22時57分

 トルコ南部で5万3000人超が死亡した地震から6日で2年となった。被災地では住宅建設が急ピッチで進む一方、約65万人が今も仮設住宅で暮らす。住宅再建の見通しが立たない人は多く、復興への道のりはなお遠く険しい。(トルコ南部アンタキヤ 田尾茂樹)

 「復興住宅の抽選に当たっても、支払えるめどはない。当分ここに住むしかない」。自宅が全壊し、妻と娘を失った会社員ヒュセイン・エルクさん(44)は嘆いた。アンタキヤ郊外の仮設住宅で母や2人の息子と暮らすが、蓄えはない。

 住宅再建者向けの政府の支援制度では、150万リラ(約640万円)を上限に半額の補助と半額の無利子融資を受けられる。ただ、物価高騰で住宅価格は最低でも300万リラに上るとみられ、自己負担が大幅に増えるのは必至だ。「2年たっても何の展望もない」とあきらめ顔で話した。

 別の理由で仮設にとどまる人もいる。自宅が全壊し、妻や障害のある娘2人と暮らす演奏家ユルマズ・イプさん(58)が4か月前に当選した復興住宅は、中心部から20キロ離れている。「市街地からあんなに遠い場所では生活できない」。公共交通機関はなく、周囲に店もない。車も所有していないため、入居を断念した。

 「以前のような暮らしができる日を全く想像できない」とため息をついた。

■年内解消?

 地震では、国内で71万棟超が損壊した。タイップ・エルドアン大統領は、地震から2か月後の2023年4月、被災地に住宅65万戸を建設し、32万戸を1年以内に完成させると表明したが、これまでの引き渡しは約20万戸にとどまる。今年1月には、「年内に被災地の住民はすべて住宅を得られる」と軌道修正した。

 甚大な被害を受けたアンタキヤでは資材を運ぶトラックが頻繁に行き交い、砂ぼこりが舞う。1年前に更地だった中心部も中層復興住宅の工事が進み、アンタキヤがあるハタイ県の財政局長は「仮設住宅も年内に解消できる」と言い切る。

 住民は懐疑的だ。郊外の仮設住宅に暮らすチーズ販売業ファトゥマ・トゥランさん(42)は、中心部で借りた店舗の家賃を払えず、地震後は路上販売を続ける。「政府の約束は口だけ。仕事がみつからない21歳の息子は国外に行きたがっている」と訴えた。

■自殺者も

 仮設暮らしが長引く被災者の中には精神的ショックを引きずり、自ら命を絶つ人もいる。アンタキヤで約700戸が軒を連ねる仮設住宅団地ではこの4か月で3人が亡くなったという。

 1か月前に亡くなった30歳代の女性は地震で夫と子供2人が犠牲になった。近隣住民とはあいさつを交わす程度で付き合いがほぼなかったといい、同じ団地に住む運転手ユミット・バイラクさん(25)は「心のサポートが全く行き届かなかった」と悔やむ。

 仮設団地の中には、衛生環境の悪化や窃盗事件の多発が問題となっている地区もある。国政野党・共和人民党のハタイ県幹部ヒュセイン・アクソイ氏は「政府は住宅を建てることばかりに力を注いでいるが、もっときめ細かい生活支援が必要だ」と指摘する。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください