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書店振興 官民で、「自治体内に0」増加…[読売新聞社・講談社提言]

読売新聞 / 2025年2月7日 5時5分

 読売新聞社と講談社は、街の書店減少が深刻化していることを受け、「書店活性化へ向けた共同提言」をまとめた。書店は本と人とをつなぐ地域の文化拠点であり、豊かな想像力や独創性を育む国力の源と位置づけた。そのうえで、経営環境の整備や、図書館との連携、読書教育の充実など5項目を求めた。

 日本出版インフラセンターによると、国内の書店数は2003年度に2万880店あったが、20年間で1万918店へとほぼ半減した。インターネットの普及による活字離れやネット書店の台頭の影響が大きいとみられる。全国の自治体で現在、書店が1店もない「無書店自治体」は4分の1以上に拡大している。

 提言によると、街の書店が現在、クレジットカードなどキャッシュレス決済の手数料が大きな負担となっていることや、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が遅れていることなどについて対策が求められる。書店の経営者は高齢化が進み、若く意欲のある人々の参入が望まれている。国や自治体は、柔軟な発想で書店の経営環境整備を支援する必要がある。

 書店支援を通し、国民が本と出会う機会を広げることも重要な課題となる。図書館と協力しての読書活動や、絵本に関する高度な知識を持つ絵本専門士の活用も考えられる。書店自身も、魅力的な書棚作りや本について幅広い知識を持つ店員の育成など努力が求められることも指摘した。

 経済産業省は昨年3月、大臣直属の書店振興プロジェクトチームを作り書店関係者の聞き取りなどを進めてきた。国内2大出版取次の一つ、トーハンは従来より小規模な書店の開業を支援する仕組み「HONYAL(ホンヤル)」を始めた。官民の書店振興の動きを一層盛り上げる必要がある。

 海外ではフランスや韓国をはじめ、国や自治体が書店を支援している。書店による読書イベントや優良書店の顕彰など、様々な形で取り組みが行われている。

 読売新聞社と講談社は以前から、活字文化推進や読書推進活動に力を入れてきた。書店減の問題についても意見が一致し、昨年秋から識者を交えた勉強会などを重ねてきた。

「知のインフラ」守ろう…文化部長・小布施祐一

 本を読み手に届ける経路は書店、図書館、ネットの三つあるが、近年、書店の数が急速に減っている。その危機感が「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」を発足させ、経産省「書店振興プロジェクト」を生んだ。今春、関係省庁が「書店活性化プラン」を策定する。この機を逃さず、知のインフラ(社会基盤)としての書店を守る機運を高めたい。

 日常の生活圏に書店がある価値は何か。書店は図書館に比べて旬の本を多く並べ、時代の空気を教えてくれる。ネットより一覧性に優れ、検索ではたどりつかない本との偶然の出会いを提供できる。ただこうした長所も、実際に書店へ行って体験して初めて分かることだ。書店のない地域で育つ子どもたちが、その良さを知ることなく「ネットで十分」と考えるようになれば、興味関心の幅が狭まり、豊かな人生を生きる基盤を作るうえで深刻な影響がある。

 提言で挙げたキャッシュレス決済手数料の軽減や図書館との連携などを複合的に取り入れ、息の長い取り組みにすることが必要だ。書店減の流れを止めるために残された時間は多くない。国、自治体、事業者が力を合わせ、書店で本を買う文化を次世代につないでいきたい。

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