1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

イワシ漁の漁船転覆1か月、海流速く引き揚げ作業困難…乗組員3人は行方不明のまま

読売新聞 / 2025年2月10日 16時58分

第8大浜丸と船団を組んでいた運搬船と探索船(5日、茨城県北茨城市の大津漁港で)

 鹿島港沖でイワシ漁をしていた大津漁協(茨城県北茨城市)所属の巻き網漁船「第8大浜丸」(80トン)が転覆した事故は6日、発生から1か月となった。行方不明の乗組員3人はいまだ見つかっていない。沈没したとみられる船体の引き揚げは現場周辺の海流の速さが障壁となっており、見通しが立たない状況となっている。(大垣裕、寺倉岳、大井雅之)

 6日、大津漁港には巻き網漁船が並んで停泊していた。冬場は海がしけて沖に船を出せない日が多く、この1か月で出漁できたのは数回にとどまる。待機が続く別の漁船の乗組員は「船の引き揚げが難しいことは分かるが、前に進めない状態が続いてしまう」と行方不明者の家族の心情を思いやる。

 船体の引き揚げは、一般的に船を所有する会社が専門のサルベージ会社に依頼して実施する。行方不明者の一人の家族は今月、船会社に引き揚げをするよう頼んだことを明かした。しかし、関係者によると、現場海域は約200~250メートルとされる水深に加えて海流が速く、引き揚げ作業は困難を極める。コストや時間もかかる見込みだ。

 一方、再発防止に向けた動きは進んでいる。水産庁は1月9日付で、全国の漁業団体や海に面している39都道府県に安全対策の徹底を求める通達を出した。その中では、2014年に島根県の浜田港沖で巻き網漁船が沈没した事故について運輸安全委員会がまとめた報告書を紹介した。

 教訓にすべき再発防止策として、漁網に入った大量の魚群が一斉に降下して船体が大きく傾いた場合を想定して網を切るなどの対応訓練の実施や、乗組員が船の甲板上で作業をする時のライフジャケット着用などを呼びかけている。

 大津漁協では事故後、漁業者向けにライフジャケット着用を求める講習を開き、操業時に動きやすいタイプの救命胴衣の購入を促した。坂本善則専務理事は「何とか行方不明者の捜索をしてほしいという思いが第一だが、考え得る安全対策をしている」と話した。

 鹿島海上保安署などによると、事故は1月6日午前2時5分頃に発生。船団を組む2隻と操業していた第8大浜丸は網の巻き上げ作業中に転覆した。その後、沈没したとみられる。救助された乗組員は「魚が多く入ったことで徐々に船体が傾いた」と説明したという。同署は船の安全管理に不備があった可能性があるとみて業務上過失致死と業務上過失往来危険の両容疑で捜査している。

 第8大浜丸には計20人が乗船していたが、救助された日本人の50、60歳代の男性2人が死亡。40、60、70歳代の男性3人は行方不明のままだ。捜査関係者によると、行方不明者の一人は漁労長で、事故当時は操舵そうだ室にいた可能性が高いという。

 運輸安全委員会の委員として浜田港沖の事故調査の検討に携わった東京海洋大の庄司邦昭名誉教授(船舶工学)は今回の鹿島港沖の事故について、「船体に異常があったかどうかについては引き揚げてみないとはっきりと見えない部分がある。引き揚げが難しい場合でも、現場に居合わせた乗組員らの証言や魚群が降下した想定での再現実験などが事故調査を進める上でポイントになる」と話す。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください