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3・11当時0歳の中学生、自ら取材し発信…語り部の会「災害は悲しいが若い人なら明るい未来語れる」

読売新聞 / 2025年2月10日 15時21分

県農業総合センター果樹研究所の職員にインタビューする生徒(亀岡教諭提供)

 東日本大震災が発生した当時、0歳だった子どもが中学生になり、震災経験者から聞き取った体験談を基に語り部として活動を始めた。被災地で取材した動画が2023年度、民間企業主催の全国コンテストで最優秀賞を受賞。語り部の高齢化が進む中、若い視点で防災の大切さを広く伝えようとしている。(薬袋大輝)

「被害に衝撃」

 語り部として活動を始めたのは、福島県いわき市立中央台南中学の生徒4人。同市の「いわき震災伝承みらい館」で1月13日、来場者約20人を前に「中学生語り部講座」を開いた。自分たちで編集した約5分の動画「Coming Back Home ~帰郷~」を見てもらった後、被災者から取材してきた震災当時の被災状況や避難生活の様子を語った。

 生徒4人は、当時0歳か生まれる前で震災の記憶はない。家族や被災者に取材し、通っていた小学校が避難所だったことや、農家が他県の人から栽培トマトを地面にたたきつけられ、原発事故の風評に直面したことを収録。津波被害を受けた海岸で貴重な鳴き砂が聞けたことも記録した。

 甚大な津波被害を受けたいわき市の薄磯地区で生まれた鈴木蒼空あおいさん(14)は祖母から全壊した自宅の写真を見せてもらった。「被害の大きさに衝撃を受けた。家族から話を聞き、初めて知ったことが多かった」と振り返る。

「自分の言葉で」

 生徒たちの活動は、いわき語り部の会のメンバーが2023年9月、出前授業で来校したのがきっかけ。「NHK杯全国中学校放送コンテスト」で震災をテーマにした作品の出展経験がある亀岡ともる教諭(60)の指導を受けながら、動画の制作と語り部の活動に取り組んでいる。

 中学生語り部講座は24年8月、いわき震災伝承みらい館で開始。市内の小学生を対象に講話も行っている。動画の制作で大熊町を取材した白圡菜南ななみさん(14)は「震災をもっと知らないはずの小学生にも防災への備えの大切さを伝えていきたい」と意気込みを語る。

 動画は、映像制作支援プログラム「キッド・ウィットネス・ニュース(KWN)日本コンテスト2023」(パナソニックホールディングス主催)の中学生部門(応募82作品)で最優秀賞に選ばれた。同社によると、動画は世界で36万回以上再生された。

 7日に公表された同コンテスト2024の最終ノミネート作品の一つに、中央台南中の作品「伝える~This is the Place」が選ばれた。最優秀賞は3月16日に決まる。

 いわき語り部の会の石塚洋悦さん(68)は「練習するごとに上達して中学生のレベルではない。震災当時の記憶がなくても、被災地での取材を通して自分の言葉で語れている」と評価する。同会会長の大谷慶一さん(76)は「災害は悲しいものだが、若い人なら明るい街の未来を語れる。語り部の高齢化が進む中、ぜひ次の学年もその先にも活動を引き継いでほしい」と期待した。

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