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日米首脳会談 世界に貢献する同盟の時代に

読売新聞 / 2025年2月9日 5時0分

◆平和の回復に協力して取り組め◆

 混迷する国際情勢。その動揺を加速させる一因ともなっているトランプ米大統領が就任後、対面で会う2か国目の首脳が石破首相だった。

 国際的にも注目された今回の会談で、両首脳は同盟の強化など、おおむね日本側の期待に沿う内容で合意した。日米関係はインド太平洋地域にとどまらず、世界の平和と安定に貢献するという役割を帯び、新しい時代に入った。

◆日本側の主張概ね通る

 首相とトランプ氏がワシントンで2時間近く会談し、安全保障や経済など幅広い分野で協力していく方針を確認した。

 トランプ氏は会談後の共同記者会見で「米国の抑止力を使い、同盟国を100%守る。日米で協調し、平和を維持していく」と述べた。首相は「同盟国としての責任を共有し、役割を果たす用意がある」と応じた。

 「米国第一」を掲げるトランプ氏は就任後、カナダや欧州連合(EU)に関税を課す方針をちらつかせるなど、同盟軽視ともとれる外交を展開している。日本政府も首脳会談で、どんな要求をされるのかと警戒していた。

 だが会談は、米国にとって日本が重要な同盟国であることを内外に示す形となった。トランプ氏は会見で「日本は素晴らしい国だ」と述べた上で、石破氏について「偉大な首相になるだろう」と過大なまでの表現で持ち上げた。

 軍事・経済大国となった中国は、世界中で影響力を行使するようになった。トランプ氏がデンマーク領グリーンランドの領有に言及したのは、中国が北極海周辺で資源開発を視野に入れた活動を強めていることも背景にある。

 ロシアによるウクライナ侵略は間もなく3年となる。北朝鮮は、ロシアに派兵して侵略に加担し、その見返りとして軍事能力を高めていると言われる。

 国際社会での米国の力が相対的に低下する中、強権国家に対峙たいじしながら、米国の利益を守っていくには日本の協力が不可欠だ、という判断が働いたに違いない。

 両首脳が会談後に発表した共同声明で「日米関係の新たな黄金時代を追求する」と打ち出したのも、幅広い分野での日米の協力が世界の安定に貢献する時代となっていることを象徴している。

◆鉄鋼買収問題で前進か

 安保分野では、米国が核を含む戦力で日本を守る「拡大抑止」への揺るぎない関与を強調した。

 経済分野では、米国産の液化天然ガス(LNG)の輸入を増やすことが決まった。日本企業の持つ優れた宇宙技術に関する協力や、先端半導体の開発を日米で促進していく方針も盛り込まれた。

 日米の懸案となっていたのは、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画だ。バイデン前大統領による禁止命令で頓挫する可能性があるが、今回の会談で事態打開を目指すことになった。

 トランプ氏は会見で「買収ではなく、多額の投資を行うことで合意した」と語り、首相も「どちらかが利益を得るという一方的な関係にならない。大きな成果だ」と述べた。先行きは見通せないものの、前進が期待される。

 日米同盟の重みが増す中、日本の外交力も問われている。

 トランプ氏は就任後、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した。荒廃したパレスチナ自治区ガザの所有と、住民の域外移住を提案した。

 こうした独善的な言動まで、手放しで支持するわけにはいかない。日本は、法の支配や国際協調の重要性を粘り強く米側に呼びかけていかねばならない。

 日本はイスラエル、アラブ諸国双方と良好な関係を築いてきた。その強みを生かし、中東の平和の回復にもっと力を尽くす必要がある。ウクライナの復興事業にも積極的に関わっていきたい。

◆主体的な外交が重要

 トランプ政権は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、国防支出を国内総生産(GDP)比で5%にまで引き上げるよう求めている。日本は、安保関連費を2027年度にGDP比で2%に引き上げる計画だ。

 共同声明では、日本が27年度以降も「抜本的に防衛力を強化していく」と明記された。防衛費を増額し続ける方針を示唆したものだ。この部分は、米側の要望で盛り込まれたと言われる。

 日本周辺の安保環境がかつてないほど悪化していることを考えれば、防衛力の強化は日本自身にとって最優先の課題だ。米国に求められて見直すのではなく、日本が主体的に取り組むべきだ。

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