夢かなえた豊昇龍・琴桜は痛恨の負け越し、綱取りに欠かせないのは「平常心」…元大関琴風の「演歌と土俵」
読売新聞 / 2025年2月11日 9時42分
元大関琴風の中山浩一さん(67)(元尾車親方、津市出身)は、1983年1月の初場所で2度目の幕内優勝を飾り、3月の春場所で初めて綱取りに挑んだ。今年の初場所では豊昇龍関が夢をかなえ、琴桜関は痛恨の負け越しに終わった――。それぞれの力士に思いを寄せつつ、横綱昇進の難しさを語った。(三木修司)
心が1番、技が2番
相撲は「心・技・体」を大事にする。中山さんは若い頃、師匠(佐渡ヶ嶽親方=元横綱琴桜)から「大事な順番も心・技・体」と教わった。「心が1番、技が2番……。技を磨き、体を動かすのは心だ。心が乱れていては、技は生きず、体は動かない。師匠もまた、自分の師匠(同=元小結琴錦)からそう学んだ。昔の人が大切にした戒めでもある」
豊昇龍智勝
ほうしょうりゅう・ともかつ 本名・スガラグチャー・ビャンバスレン。1999年ウランバートル生まれ。レスリングで高校留学したが、相撲部へ。2018年1月、立浪部屋から初土俵。大関在位9場所、優勝2度。元横綱朝青龍の長兄の息子。1メートル88、148キロ。
強い気持ちと強靱な足腰、見事によみがえった
そんな目で初場所の大関3人を見直すと、なるほどと思うものがある。
豊昇龍関は9日目までに平幕力士に3敗し、「綱取り絶望」と論評された。だが、終盤戦で平常心を取り戻すと、鋭く踏み込んで前に出る相撲に徹した。中山さんの目にも「根底にある強い気持ちと
一方、師匠の孫でもある琴桜関については、「場所前から『気負わない』という言葉を繰り返した。その時点で気負っていた」と心理を突く。重圧のかかる2人の隙を突き、大の里関が優勝をさらうかとも思われたが、「変な引き技を覚えてしまった。楽に勝ちたいという姿勢では賜杯や綱は遠のく」とみる。
「早く上がってこい」千代の富士からの励まし
琴風は1983年初場所を14勝1敗で制し、2度目の賜杯を抱いた。次の春場所は綱取りだが、千代の富士との稽古でこてんぱんにやられる自分が「横綱になどなれっこない」と、雑念とは無縁で臨んだ。そんな「無欲さ」が初日からの7連勝につながる。ところが「こんなに勝っていいのか」という意識が働き始めた8日目以降に4敗……。15戦全勝とした千代の富士に優勝をさらわれ、心の持ちようの難しさを知った。
千代の富士とは、支度部屋の風呂でよく一緒になった。「おい、大関も横綱も(責任感で)苦しいのは一緒だ。頑張って早く上がってこい」と励まされた。心の内で琴風は「あんたは強いからそう言えるけど、俺が綱を張ったとしても、千代の富士さんとでは『月とすっぽん』だろう」と思ったこともあった。
心を磨いて「獰」を封じる
しかし、これは多分に謙遜の言葉でもある。83年初場所の優勝、綱取り、翌年の初場所まで、北の湖や千代の富士、隆の里という横綱3人を向こうに回しながら、琴風は常に11勝以上の白星を稼いだ。この間7場所の勝率は実に7割7分を超えた。平成、令和の大関に比べても圧倒的な安定感が光る。「強い大関」の印象は、今も古い相撲通の心を捉えて離さない。
綱に届かなかった中山さんだが、豊昇龍関の今後の課題を挙げるなら「その性格にある」という。
「琴桜が『静』なら豊昇龍は『動』の力士。動は
「獰」とは悪強く、醜いさまを指すとある。心を磨いて「獰」を封じ、「動」に徹すること。それには「これまで以上に稽古に励むしかない。『実るほど
やっぱり短気が顔を出す
琴風は大関時代、土俵の勝負に疲れた時、千昌夫さんの「さよなら三角また来て四角」(作詞・喜多條忠 作曲・徳久広司)という歌を好んで聴いた。戒めを込めたフレーズがある。
♪
琴風豪規
ことかぜ・こうき 1957年、津市栄町生まれ。71年7月、佐渡ヶ嶽部屋から初土俵。1メートル84、173キロ。大関在位22場所、優勝2度。引退後は尾車部屋を興し、豪風、嘉風らを育てた。相撲協会事業部長などを歴任。現NHK専属解説者。
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