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「有吉佐和子には社会派以外の顔がある」…エッセー集出版、「静かで豊満」紀の川に愛着

読売新聞 / 2025年2月12日 13時49分

「有吉佐和子ベスト・エッセイ」を手に、思いを語る岡本さん(和歌山市で)

 「華岡青洲はなおかせいしゅうの妻」「恍惚こうこつの人」などで知られる和歌山市出身の作家・有吉佐和子(1931~84年)のエッセーをまとめた本が1月、筑摩書房から出版された。有吉のエッセー集は珍しく、編者の岡本和宜さん(49)は「あまり知られていない一面に触れてほしい」と話す。(竹内涼)

 エッセーとルポ56編を収録。幼少期の思い出、作家としての苦悩や喜び、各地を旅して感じたことなどがつづられた文章を集めた。

 仕事について書いた「炭を塗る――作家の生活」では、時代の寵児ちょうじとして脚光を浴びながら、米国留学を経て小説執筆に専念していく経緯などを明かしている。執筆の喜びと苦悩を「登場人物が一人歩きをし始めること」と表現。登場人物が進んでいく方向によっては公表できなくなることもあるとし、「塗炭の苦しみとはこれか」と記している。

 たびたび小説の舞台にした和歌山に関する随筆もある。海や山に囲まれて育った和歌山の人々の気質を高く評価しているほか、小説「紀ノ川」で描かれた紀の川を「静かで、そして豊満であった」などと表現。愛着を持っていたことがわかる。

 編者の岡本さんは和歌山市に住む近代文学研究者だ。学生時代から図書館などに通い詰めて新聞や雑誌を丹念に調べ、有吉の文章を集めてきた。

 社会派作家という印象が強い有吉だが、エンターテインメント作品にも取り組んだ。青磁のつぼが様々な境遇の人物に渡っていく「青い壺」もその一つだ。人間関係のリアルな描写が現代人の心をつかみ、近年、注目を集めた。

 岡本さんも「有吉には社会派以外の顔がある」と語る。編集にあたり、身近なことを書いた比較的読みやすいものを優先した。

 有吉の随筆は各媒体で書かれた作品が中心で、エッセー集はほとんどなかった。岡本さんは散逸気味になってしまっていることに危機感があったという。「埋もれてしまうのは惜しかったので、形にできてよかった」と振り返り、「綿密な取材と鋭い洞察で、人間の本質を描き出すのが彼女の魅力。エッセーからも感じ取ってもらえるのでは」と語る。

 本のタイトルは「有吉佐和子ベスト・エッセイ」(文庫判、税込み990円)。全国の書店で購入できる。

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