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石破首相の提案に耳傾けたトランプ大統領、インド太平洋の多国間協力「大切」…つなぎとめ課題に

読売新聞 / 2025年2月12日 5時0分

共同記者会見に臨む石破首相(左)とトランプ米大統領(7日、ワシントンのホワイトハウスで)=須藤菜々子撮影

[対トランプ 日本の課題]<下>

 7日にホワイトハウスで行われた日米首脳の昼食会。舌平目のムニエルなどを頬張るトランプ大統領に対し、石破首相が語りかけた。

 「大統領令を出しているが、防衛装備品で共同開発しませんか」

 首相が念頭に置くのは、無人機の共同開発だ。米側からの納入が遅れている最新鋭ステルス戦闘機「F35」の購入計画も改めて説明したとみられる。トランプ氏は「そんなことまで知っているのですか」と食事を止めて身を乗り出し、首相の説明に熱心に耳を傾けた。

 日本側が装備品購入や共同開発をすれば、対日貿易赤字の解消につながる――。日本側は会談に向けて入念な準備を重ね、トランプ氏の関心が強い投資や貿易赤字縮小など、安全保障の分野も含め米国の実益に焦点をあてて議論を展開する方向に持ち込んだ。

 戦略は奏功した。トランプ氏は会談後の共同記者会見の冒頭、「日本や他国との大切な同盟関係は、今後も長く繁栄し続けるだろう」と発言。両首脳が発表した共同声明にも「多層的な協力」の推進が明記され、日米豪印の協力枠組み「Quad(クアッド)」などの連携強化が確認された。

 多国間協力に消極的と見られてきたトランプ氏の関心をインド太平洋につなぎとめ、外務省幹部は「日米が安定勢力として機能していることを世界に示せた意義は大きい」と振り返る。

 ただ、トランプ氏の外交・安保観が変わったと見るのは早計だ。会見冒頭の発言も、周囲が用意した紙をトランプ氏は読み上げたにすぎない。

 共同声明も、岡野正敬国家安保局長とマイク・ウォルツ国家安保担当大統領補佐官が協議を重ね、会談直前でまとまった。日本政府高官は「トランプ氏は共同声明は部下に任せ、内容はほとんど見ていなかったのではないか」とみる。

 中国に対処するという観点では日米は一致しており、トランプ政権がインド太平洋での多国間協力を進めるのも「中国に対抗するにはどうするかという発想がある」(外務省幹部)ためだ。その関心を、他の地域にも広げられるかが課題となる。

 今回の会談で、ロシアによるウクライナ侵略やパレスチナ自治区ガザなどの中東情勢で突っ込んだやり取りはなかった。共同声明からは民主主義陣営の共通の価値観でもある「法の支配」も抜け落ちている。日本としては不確実性の高いトランプ氏に対し、「他の地域に手を出すのは避け、まずはインド太平洋地域に集中した」(同)のが実情だ。

 日本が米国と肩を並べる先進7か国(G7)はウクライナや中東を巡り、不協和音が出ている。中露が結束を強めるなか、G7の亀裂を回避し、新興・途上国「グローバル・サウス」の米国離れをいかにつなぎとめるか。日米同盟を基軸とする日本の外交・安保政策が真価を問われるのはこれからだ。(政治部 谷川広二郎)

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