新入社員は「失敗が嫌だから、大きな仕事を任されたくない」 上司・先輩はどう接したらいい?3つのポイントは
J-CASTニュース / 2025年2月12日 18時17分
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新入社員の考え方とは(写真はイメージ)
「失敗したくないので、大きな仕事は任されたくない」「恥をかきたくない」
イマドキ新入社員は、自分に自信が持てない若者が多いことが、人材育成サービスの日本能率協会マネジメントセンター(JMAM=ジェイマム、東京都中央区)の「新入社員調査」でわかった。
しかも、成果や生産性より「勤務時間」で評価されたいという。
では、上司や先輩はどう指導したらよいのか。調査をまとめたジェイマムの斎木輝之さんに話を聞いた。
達成した成果や生産性より「何時間働いたか」で評価してほしい
日本能率協会マネジメントセンターは毎年、新入社員調査を行なっており、今回調査(2024年6月)は、2023年~24年に入社した新入社員934人と、新入社員の育成に関わる上司・先輩社員1564人の合計2498人が対象だ。
ここ5年を比較すると、「現在の会社でずっと働きたい」という、いわゆる「就社志向」が年々高まり、6割を超えた。一方で、「キャリアは自ら切りひらく必要がある」という回答が大きく低下し、ここ3年で約9割から約7割にダウンした。自律的キャリア志向が弱まっているのだ【図表1】。
新入社員の育成の難しさも浮き彫りになった。6割弱が「失敗したくないので、大きな仕事は任されたくない」と回答。「自分自身の成長のために、一時的に負担や労働時間が増えても挑戦したい」と答えた割合は半数以下に留まった。どうやって挑戦を促すか、上司や先輩は工夫が必要になる【図表2】。
また、Z世代は自分の行動や言動に自信が持てず、前向きな一歩を踏み出せない傾向がわかった。【図表3】は自分に対する自信度を世代別に比較したグラフだが、すべての項目でZ世代が最も低い。逆に、「恥をかきたくない」「他人の評価を気にする」といったネガティブな意識もZ世代が最も高く、チェレンジ精神を期待しにくい状況だ。
そんな意識の影響もあってか、達成した「成果」や「生産性」よりも、「何時間働いたか」や「何年勤続したか」で評価されることを好む割合が4割強と、過去最も高くなっている【図表4】。
こうしたことから、新人育成のポイントとして、次のことをアドバイスしている。
(1)初めから大きなゴールを求めずに、達成可能な小さな目標を設定する。それをクリアした際には「ここがよかった」と、一つひとつ具体的にほめる。この小さな成功体験が次の挑戦への自信となる。
(2)取り組みの途中にある努力や工夫を見つけて評価する。「その工夫があったからここまで進めた」という形で、行動や姿勢を肯定的にとらえるフィードバックが効果的。
(3)「まずは試してみよう」「サポートするから挑戦してみよう」と、安心感を与えながら次の一歩を引き出す。時には伴走しながら「やってみること」に価値を感じられる環境づくりを意識する。
コロナ禍の経済不安で、「自分でキャリアを切り開く」選択肢はリスクが高くなった
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した日本能率協会マネジメントセンター・ラーニングマーケティング本部の斎木輝之さんに話を聞いた。
――新入社員に「現在の会社でずっと働きたい」という就社意識が高まっていると結果に驚きました。Z世代は転職意識が非常に高く、「3年以内に3割が退職する」というイメージが定着していましたから。
斎木輝之さん Z世代は転職意識が高く、「3年以内に3割が退職する」というイメージはあながち間違いではありません。実際、厚生労働省の調査でも、大学卒の就職後3年以内の離職率は、1995年に30%を超えて以来、多少の増減はあるものの一貫して30%超で推移しています。
また、Z世代の転職意識は、40代以上の世代と比べて「自分軸」が強い傾向があります。入社当時は同じ会社で長く働きたい気持ちがあったとしても、やりたい仕事ができる環境が見つかれば、すぐに転職を決断することが多いです。
背景には、SNSの発展による情報収集のしやすさが大きく影響しています。そのため、近年企業側は、「PMVV」(パーパス、ミッション、ビジョン、バリュー)のメッセージ発信を強化し、社員に「この会社で働く意味」を理解・共感してもらいやすくする取り組みを進めています。
――なるほど。「就社志向」が急に高まっても安心は禁物ですね。しかし、「キャリアを自ら切り開く」意識がダウンしているのは心配です。また、「失敗したくないから、大きな仕事を任されたくない」などと自信がない人が多いことが気になります。
一方で、別の調査会社の「やりがいのある企業ランキング」などでは、若いうちから大きな仕事を任されて若手の裁量権が大きい会社の評価が非常に高い。それとは真逆の結果です。なぜ、若者らしいチャレンジ精神を失ったのでしょうか。
斎木輝之さん 自らキャリアを切り開く意識が大きく低下した理由については、さまざまな要因があります。第1に、コロナ禍以降に不安感が増加したことがあげられます。企業の倒産やリストラが頻繁に報じられ、不安定な経済状況が若者に心理的影響を与えました。
この結果、雇用の安定性が重視され、「キャリアは自分で切り開く」という選択肢はリスクが高いと感じるようになったと考えられます。
また、現在の大学卒の就職活動は超売り手市場です。自己分析や企業分析を深く掘り下げることなく内定を得ている場合もあり、より未来を見据えるよりも、「今」の充実さを重視する傾向が高まっていることも要因といえます。
「失敗」「恥」の気持ちは、SNS普及で評価がすぐ拡散する時代に
――「今」に安住しているわけですか。しかし、「失敗したくない」「恥をかきたくない」というネガティブな考えが急に広がっている理由は何でしょうか。
斎木輝之さん SNSの普及により、リスク回避の心理が強化されていると感じます。自分の言動が可視化され、常に評価される環境が生まれました。別の言い方をすると、「いいね」やフォロワー数が社会的評価の指標となり、他人の目を意識する文化の中で、他人の成功や失敗が可視化されやすい環境で育ったともいえます。
この環境は同時に、過度な自己比較を生み、「間違うこと」や「挑戦すること」への抵抗感にも影響を与えているといえます。
――たしかに、ちょっとした言動が炎上する時代になりましたね。
斎木輝之さん また、社会全体のコンプライアンス意識の高まりにより、若者たちは学校や家庭など「守られた環境」の中で育った経験が多く、SNSの炎上を含めて不確実性への対応スキルが十分に養われていない部分があります。
だから、「失敗したくない」とか「恥をかきたくない」「他人の評価を気にする」という人がほかの世代よりも高い割合に達しているのだと考えられます。
成果や生産性よりも、「勤続年数で評価されることを好む」割合が増えている結果も、リスク回避の心理が「挑戦」を抑制していることを示し、長期的な安定を確保するために「安全圏での努力」を選択する傾向が強まっているといえます。
Z世代にとって成果主義は「努力のプロセスを評価しない仕組み」
――しかし、若いのに「成果や生産性よりも何時間働いたか、で評価してほしい」という考え方が多いことがショックです。これは、社会全体が働き方改革を掲げ、長時間勤務をやめて短い時間でも成果を上げたものを正当に評価しようという動きと逆行する、後ろ向きの考え方と思いますが、いかがでしょうか。これでは、会社の椅子に座っているだけで給料をもらっている「〇〇オジサン」とあまり変わらない気がしますが......。
斎木輝之さん この傾向は、後ろ向きの意識というよりは「不安の反映」と言え、Z世代ならではの価値観の変化が影響していると考えられます。つまり、「評価の透明性」と「安定性」を求める意識の反映です。
先にも述べたように、コロナ禍や経済不安の影響を受け、「安定した雇用を確保したい」という意識が強まっています。成果主義が徹底されることで、競争が激化し、結果を出せなければ評価されないという不安があるため、長く勤めることによる評価を求める傾向が強まっているのです。
おっしゃるとおり、働き方改革の進展により、企業は「短時間で高い成果を求める」方向にシフトしましたが、これは必ずしも働く側にとってポジティブとは限りません。
「短時間で高い成果を求められることがプレッシャーになり、評価基準が不透明に感じる」「長時間働くことで評価されるほうが、基準が明確で安心できる」といったように、成果主義が「努力のプロセスを評価しない仕組み」に見えていることが、年功的評価を求める背景になっている可能性があります。
――なるほど。リポートにも新入社員は「努力やプロセスを評価されることに価値を見出している」とありましたね。
斎木輝之さん そのとおりです。特に、Z世代は指示や依頼の意図が不明な仕事には迷いが生じ、説明不足の指摘は相手に責任があると考える傾向が半数以上に見られています。
そのため、明確な評価基準がないと不安を感じやすく、「何年働いたか」といった客観的な指標を通じて「安心したい」という心理の表れといえます。ただし、ご指摘の通り、若いうちはプロセス評価も加えつつも、パフォーマンスが社会人では求められることはマインドセットしていく必要はあると思います。
「上司が一方的に教える」のではなく、「共に考え、共に成長する」姿勢が重要
――最近の新入社員は、いろいろと難しいところもあるのですね。先輩や上司はどう接して育成していけばいいでしょうか。一番重要なアドバイスをお願いします。
斎木輝之さん ポイントは、OJT(職場での実務教育)自体を「教育(教え、育てる)」から「共育(共に育つ)」へ転換していくことです。
現代は変化の激しい時代であり、上司や先輩も含めて誰も「正解」を持ち合わせていません。そのため、Z世代の育成には、「上司・先輩が一方的に教える」のではなく、「共に考え、共に成長する」姿勢が重要です。
また、彼らは失敗を避けがちな傾向があるため、小さな成功体験を積ませ、努力やプロセスをしっかり評価することで自信をつけさせることが大切です。こうした関わり方を続けることで、新入社員は「やればできる」「もう少し頑張ってみよう」と感じ、自発的な成長へとつながっていくといえます。
Z世代の特徴を知ることは大切ですが、決めつけずに接することがもっと大事。時代が違えば、価値観も変わるのは自然なこと。「昔のやり方が正しい」と思うのではなく、「そういう背景があるのだな」とまずは理解することが、新人との良い関係づくりにつながります。
大切なのは、自分が接する新人一人ひとりをよく見て、関心を持つこと。特徴にとらわれすぎず、「目の前の新人はどんな人なのだろう?」という気持ちを大事にして接していただければと思います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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