1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

アラブ諸国、「ガザ所有」でパレスチナ人大量受け入れを警戒…ハマス支持勢力拡大も危惧

読売新聞 / 2025年2月13日 1時23分

11日、米ホワイトハウスで、ヨルダンのアブドラ国王(左)と会談するトランプ大統領=AFP時事

 【カイロ=田尾茂樹】米国のトランプ大統領が打ち出したパレスチナ自治区ガザの再建構想に、アラブ諸国は一貫して反対している。強制移住させられるパレスチナ人が二度と帰還できなくなり、パレスチナ国家樹立という「大義」が失われることに加え、パレスチナ人の大量流入が地域や国内の安定を脅かすとの警戒感も根強いためだ。

 「ガザとヨルダン川西岸のパレスチナ人の追放に断固反対すると繰り返し表明した。これは、アラブ諸国の統一した立場だ」。ヨルダンのアブドラ国王はトランプ氏との会談後、SNSでこう強調した。

 念頭にあるのは1948年のイスラエル建国でパレスチナ人が土地を追われた「ナクバ(大破局)」だ。200万人以上の登録パレスチナ難民を受け入れ、人口の7割がパレスチナ系住民とされるヨルダンにとって、安易な妥協は国民の猛反発を招き、体制を揺るがしかねない。

 さらなる難民の流入は、イスラム主義組織ハマスを支持する国内勢力の拡大につながり、国を不安定にすると危惧する声もある。

 ヨルダンとともに強制移住先に挙げられるエジプトでも、治安への懸念は強い。

 ガザに接するシナイ半島では、イスラム過激派組織「イスラム国」が2017年頃まで勢力を拡大し、各地でテロを起こした。シシ政権は、掃討作戦などで治安を回復したが、移住を強いられるガザ住民に紛れて過激分子が流れ込み、イスラエルに攻撃を仕掛けた場合、報復の連鎖でエジプトが紛争の新たな舞台になりかねない。過激派が国内で再び台頭する恐れもある。

 一方、23会計年度の米国の対外支援額は、戦時下のウクライナ、イスラエルに次ぎ、ヨルダンが3位、エジプトが4位と続く。エジプトの中東政治戦略研究フォーラムのサミル・ガタス代表は「支援や投資の維持という条件付きで、米国の要請をある程度受け入れるのではないか」と予測する。

 エジプト外務省は11日の声明で、ガザ住民を移住させない復興案を提案する方針を示した。ただ、エジプトでは23年のガザ戦闘開始後、非公式に10万人以上のガザ住民を受け入れているとされ、ガタス氏は「国内治安に大きく関わるシナイ半島以外であれば、さらに数十万人を引き受けるのは難しくない」と指摘する。

トランプ氏のアイデアが独り歩き

 【ワシントン=池田慶太】米国のトランプ大統領が、パレスチナ自治区ガザを米国が所有、再建するという自身の構想を巡り、強気の構えを崩していない。アラブ諸国から協力を引き出すための「交渉戦術」との見方も出ている。

 「ガザが開発されれば、あなたの国にも多くの雇用が生まれる」。トランプ氏は11日に会談したヨルダンのアブドラ国王に協力を迫った。ヨルダンはトランプ氏がガザ住民の移住受け入れを求める国の一つだ。

 トランプ氏は1週間前の4日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との共同記者会見で、ガザを米国が所有し、開発する構想を公表した。住民約200万人を近隣国に移住させた後、ホテルやオフィスビル、住居を整備してリゾート地に変えると意気込む。

 ガザの開発はトランプ氏の持論とされる。第1次政権時の2020年に発表した中東和平案にも、10年間で500億ドル(約7・6兆円)以上の投資を呼び込む構想を明記した。イスラエルにヨルダン川西岸の一部併合を認める内容も含まれていたことから、アラブ諸国が反発して実現しなかったが、その時の反省から、今回はアラブ諸国を引き込むことに躍起だ。

 トランプ氏は、開発後のガザの管理については曖昧にしている。米国とイスラエルが一方的に計画を進める可能性をちらつかせ、アラブ諸国を揺さぶる狙いもあるとみられる。

 一方、米政府内でも混乱が続いている。トランプ氏は9日にガザを「購入する」と述べたが、11日には「購入しない」と否定した。ガザ住民の再定住は「一時的」と閣僚が説明した直後、トランプ氏が「恒久的」とひっくり返したこともある。

 米紙ニューヨーク・タイムズによると、10~15年かかるとされるガザ開発の資金調達などについて、政府内で詰めた議論は行われておらず、アイデアが独り歩きしている状況だ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください