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[棋聖戦コラム]井山裕太王座を「心の師」と仰ぐ吉川一四段、教え子たちの成長を心の支えに

読売新聞 / 2025年2月13日 11時22分

「二つの夢をかなえた」と語る吉川一四段

 一力遼棋聖(27)に井山裕太王座(35)が挑む第49期棋聖戦七番勝負の第4局が、12日から静岡県熱海市で打たれている。七大タイトルを分け合う2人による頂上対決は、井山王座の2勝1敗で本局を迎えた。シリーズの流れを左右する注目局で記録を担当するのが、日本棋院関西総本部に所属する吉川一(きっかわはじめ)四段(34)だ。「囲碁棋士になることと、子どもに囲碁を教えること。二つの夢がかなっているんです」と自身の現状を語る。

大阪市に「こども囲碁道場」、表悠斗三段や藤田怜央初段ら俊英輩出

 吉川四段は2019年、小松大樹四段(34)とともに、大阪市北区に「大阪こども囲碁道場」を開いた。「子どもに囲碁を教えている時、一番やりがいを感じる」。囲碁棋士になれなければ幼稚園の先生になりたかったという子ども好きで、兵庫県の幼稚園でも囲碁を教えている。

 関東には、三村智保九段(55)や藤沢一就八段(60)、洪清泉四段(43)らの道場があり、多くのプロ志望生が腕を磨いている。しかし、関西にはこうした道場が少ない。吉川四段は、洪四段に助言を受けたり、修業で訪れた韓国の道場を参考にしたりして、環境を整えた。

 徐々に評判が広まり、プロ志望の子どもが集まるようになった。道場出身生から、直近のNHK杯テレビ囲碁トーナメント本戦でベスト16入りした表悠斗三段(17)や、史上最年少の9歳でプロ入りした藤田怜央初段(11)らが活躍するようになった。そして、夢は「道場出身者からタイトルホルダーが出ること」と語る。

「諦めてもらう」と言われても…故郷飛び出し、20歳でプロに

 吉川四段は広島市出身。小学6年の夏休みに、人生で初めて読んだ漫画が「ヒカルの碁」だった。それまで知らなかった囲碁のルールを覚え、プロの世界に憧れて広島在住の山本賢太郎六段(44)の教室に通った。

 中学3年になって、プロの卵「院生」の試験を受けた。「面接を受けても、諦めるために来てもらうことになる」と、当時の院生師範で、後に師匠になる石田篤司九段(55)に言われた。それでも諦めず、故郷を飛び出して院生になった。トップで活躍する棋士の多くが中学校卒業前後でプロになる中、20歳になって念願のプロ入りを果たした。

1歳年上の井山王座の「囲碁に向き合う姿勢を尊敬」

 そんな吉川四段にとって、「心の師」という存在が井山王座だ。院生になった直後、既にタイトルを獲得した1歳年上の井山王座と出会った。研究会に入り、各自が自らの手合の棋譜を並べて検討し合った。「井山王座には、ここでは言えないぐらい、ぼろぼろに指摘されていました」と笑う。

 年齢が近いこともあり、一時は毎日のように酒席を共にしていたという。「井山王座はいつも謙虚。勝負の世界には常に勝者と敗者がいるが、おごることなく囲碁に向き合う姿勢を尊敬している」

 もちろん棋士である以上、手合が一番大切なのは変わらない。「最近は教え子たちと打つことが、一番の勉強になっている」。現在10人ほどいる道場生はほとんどが院生だ。育てた子どもたちと一緒に、棋力の向上に励んでいる。(文化部 江口武志)

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