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アングル:SNS規制へ、動く米州議会 連邦政府に先行も

ロイター / 2022年6月20日 16時56分

 6月16日、米カリフォルニア州の親たちはいずれ、巨大ソーシャルメディア企業を相手取って、子どもらをソーシャルメディア中毒に陥れた責任を問う訴訟を起こせるようになるかもしれない。写真はソーシャルメディア各社のロゴのイメージ。2021年5月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

[ロサンゼルス 16日 トムソン・ロイター財団] - 米カリフォルニア州の親たちはいずれ、巨大ソーシャルメディア企業を相手取って、子どもらをソーシャルメディア中毒に陥れた責任を問う訴訟を起こせるようになるかもしれない。そうした法案が州議会で成立に近づいているからだ。

これ以外にも、州レベルでは、子どもの安全から政治的偏向に至るさまざまな問題に関して、ソーシャルメディアの規制を目的とした取り組みが次々に行われている。一方で、政治家や活動家の間では、巨大IT企業、いわゆる「ビッグテック」の力を制限するための連邦レベルでの取り組みは頓挫しているという指摘もある。

「私見では、連邦政府はまひしている」と語るのは、ミネソタ州議会のザック・スティーブンソン議員だ。ソーシャルメディアがアルゴリズムを使って子どもに見せるコンテンツを決めるのを阻止するため、法律の制定を目指している。

「私たちが最初の1歩を踏み出さなければならない。特効薬にはならないが、それがスタートだ」

米シンクタンクのピュー研究所によれば、米国の人口の約70%がソーシャルメディアのアカウントを持っている。さらに非営利団体コモンセンスメディアによる2022年の調査によれば、8―12歳の子どもの40%近くにソーシャルメディアの利用経験があるという。

データに対する権利や言論の自由の問題から、ユーザーの精神衛生に与える影響、ネットを介したヘイトスピーチやデマの拡散の懸念に至るまで、ソーシャルメディアの影響力を巡る議論は盛んになっている。

フェイスブック、TikTok(ティックトック)、ツイッターなどが加盟しているIT産業の業界団体「ネットチョイス」のカール・サボー副会長は、IT企業はすでに対応を進めていると主張。アップル製デバイスが搭載するプライバシー保護機能や、グーグルが提供するアンドロイドOSに含まれるペアレンタルコントロール(保護者による利用制限)といった例を挙げる。

連邦議会議員らは、IT産業を対象とする法案を数多く提出してきた。内容は、新たなプライバシー基準やアルゴリズム規制、さらにはユーザーが投稿したコンテンツに対する免責措置の廃止にまで及んでいる。だが、実際に法律として成立したものはない。

政府はどの程度言論やビジネスを規制すべきなのか――白熱する議論に各州も参加しつつ、独自の行動を次々に起こして対応している。

全米州議員協議会(NCSL)がトムソン・ロイター財団に提供した調査結果によれば、現時点で審議されているソーシャルメディアプラットフォーム規制を目的とする法案は、10近くの州で28本以上を数えるという。

この調査によれば、こういった法案は34州の州議会で合計100本以上が議論されてきたが、そのうち数十本が否決されたか、あるいは採決にまで至らなかった。

サイト規制の強化を求める非営利団体「アカウンタブル・テック」の共同設立者であるジェシー・レリーシュ氏は「州は民主主義の実験室だ」と語る。「連邦政府がこれほど長きにわたってこの課題を放置してきたのだから、なおさら州の役割は大きい」

これに対しネットチョイスのサボー副会長は、こうしたソーシャルメディア規制の取り組みは言論の自由を侵害し、消費者の選択肢を狭める危険性があると主張する。

「自分自身や家族にとって何が最善なのか、各個人の選択を認めるべきだ」とサボー副会長は言う。「選挙で選ばれたわけでもない官僚や、州の中枢であぐらをかいている連中が決めることではない」

<焦点は「子ども」と「言論の自由」>

最も激しい議論になっているテーマの1つが、言論の自由だ。結果的に火種となったのは、ツイッターとフェイスブックによるドナルド・トランプ前大統領のアカウント停止措置だった。

連邦最高裁判所は5月、ソーシャルメディア企業がユーザーの「視点」を理由にアカウントを停止・検閲することを禁じる趣旨のテキサス州法に対し、施行の一時差し止めを決定した。下級裁判所も、フロリダ州における類似の法律の規定を停止させた。

業界団体は、プラットフォーム側の編集権を制限する動きは、ネオナチによる暴言などのヘイトスピーチや外国によるプロパガンダを可能にすると主張する。ただ保守派の中には「ビッグテック」が自分たちの声を抑圧していると不満を漏らす者もいる。

このほか、子どもの保護を目的とする対策も数多く提案されている。多くの人気ソーシャルメディアサイトでは、ユーザー登録の際に13歳以上であることの確認を求めているが、証明は必須ではない。

ミネソタ州議会ではスティーブンソン議員(民主党)が、ある共和党議員と協力し、アルゴリズムを使った子ども向けコンテンツの選択を防ぐことを目的とした法案への支持を得ようとしている。

スティーブンソン議員によれば、プラットフォーム側は子どもらをソーシャルメディアの利用に駆り立てている。たとえばダイエットについて検索すると摂食障害を助長するような投稿を紹介するなど、有害なコンテンツに誘導するようなアルゴリズムを設計しないように規制が必要だという。

このアルゴリズム規制法案は州上院で否決されたが、スティーブンソン氏は、次の会期に再提出されることを見込んでいるという。

だがサボー副会長は、そうした規制は幅広い影響をもたらしかねず、おすすめの本や近所のハイキングコースといった、アルゴリズムによるアプリの提案機能もブロックされかねないと反論する。

カリフォルニア州下院は5月、収益が1億ドルを超えるソーシャルメディア事業者について、18歳未満の子どもらが当該メディアへ依存しないよう防止策を取らない場合、家族が事業者を告訴することを認める法案を可決した。

もう1つ、サイト上で子どもらの位置情報などセンシティブなデータの収集を制限するなど、サイト設計の基準を規定する法案もある。どちらも、法として成立するには上院の支持が必要だ。

「自分の子どもらにはテクノロジーに親しみ、『デジタルネイティブ』でいてほしい」と語るのは、サイト設計基準法案の提案者であるバフィ・ウィックス議員。「しかし同時に、子どもたちの保護もしっかりやりたい」

<意図せぬ影響>

デジタル著作権団体の電子フロンティア財団は、ネット上で子どもを保護するためのいくつかの提案は、実際にはユーザーに対する監視強化につながる可能性があると警告する。未成年の行動を監視するよう、プラットフォーム側に圧力をかけることになるからだという。

同財団は「結果的に検閲になりかねない」と警鐘を鳴らす。被害に対する賠償責任を回避するため、プラットフォーム側がこれまで以上に多くのコンテンツを削除するためだ。

テクノロジー分野での規制強化全般に反対している非営利団体「テックフリーダム」のアリ・コーン弁護士は、州議会での法案の多くは言論の自由の原則を損なうものだと言う。

「ソーシャルメディア企業は、自社のプラットフォームでどのような種類の言論がなされるかを決める権利がある」とコーン氏は話す。

カリフォルニア州議会のウィックス議員は、オンラインでの子どもらの保護を目的とした同州の規制案が、他州における類似の対策の実現につながることを願っている。「カリフォルニア州には、それまでの限界を超えて、ビッグテックに説明責任を課してきた実績がある」

デジタル権利擁護団体「ファイト・フォー・ザ・フューチャー」のディレクターを務めるエバン・グリア氏は、「ビッグテック」の力を長期的に抑制するには、競争の促進が必要だと言う。つまり、消費者にもっと多くの選択肢を提供し、個々のプラットフォームの力を抑制するというわけだ。

グリア氏は、反トラスト法に依拠してテクノロジー市場の巨大企業を標的にする取り組みを支援してきた。

「有害な事象を減らすことにとどまらず、実際にこれまでとは違う選択につながるような政策を実現する必要がある」とグリア氏は語った。

(Avi Asher-Schapiro記者、翻訳:エァクレーレン)

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