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焦点:バイデン氏再選に農村部の「壁」、有権者とずれる認識

ロイター / 2023年9月20日 18時32分

9月15日、米農務省で北東部メーン州の地方開発担当部門を統括するリアノン・ハンプソン氏は毎週、州内の田舎を車で毎週数百マイルも走る。写真は8月、メーン州ウォータービルの「インフラ投資法」対象の道路工事現場で撮影(2023年 ロイター/Andrea Shalal)

Andrea Shalal

[ワシントン 15日 ロイター] - 米農務省で北東部メーン州の地方開発担当部門を統括するリアノン・ハンプソン氏は、州内の田舎を車で毎週数百マイルも走る。新たに舗装された道路、架け替えられた橋をこれほど多く目にすることは、これまでなかった。州内の古い橋や老朽化した空港が、バイデン政権が打ち出した1兆ドル規模の「インフラ投資法」の対象となったのだ。

しかし、こうした変化は利用者に意識されていないことが多いという。「この数年の資金支援は歴史的な水準だったが、そうした広がりを理解するのが単に難しいのかもしれない」

バイデン政権の政策と地方住民の受け止め方の間に横たわるこうした食い違いには、過去2回の大統領選挙でトランプ氏と共和党に支持が大きく傾いた米農村部の奪還を目指すバイデン氏の課題が集約されている。米国では国民の5人に1人が農村部で暮らしている。

バイデン氏が来年の大統領選で再選を果たすには経済的恩恵を有権者に認めてもらうことが鍵を握るが、農村部ほど厳しい戦いとなっているところはない。農村部はグローバル化と農業の衰退に見舞われて、数十年にわたり産業が衰退して雇用が失われ、全般的に高齢化している白人有権者の間で不満が高まっている。

バイデン陣営は農村部の有権者への積極的な働きかけを計画している。大統領選の結果を左右する激戦州では、農村居住者の有権者全体に占める割合がノースカロライナ、ジョージア、ウィスコンシンの各州でそれぞれ30%、ペンシルベニア州が22%ほどで、メーン州は61%ほどとなっている。

ロイターが民主党幹部、地方政治家、活動家、学者など二十数人ほどに取材したところ、農村部は長年にわたり軽視され、政府支出に対する懐疑的な見方が広がり、中絶や教育などの社会問題を巡る分裂も起きており、バイデン氏が苦しい戦いに直面している。

トランプ氏は農村部における有権者の支持率が2016年には59%だったが、20年には65%に上昇。22年の中間選挙で共和党候補は農村部で69%の票を獲得した。

コーネル大学の政治・政策学教授スザンヌ・メトラー氏と、同大学の博士課程に在籍するトレバー・ブラウン氏は、民主党および地方と都市の格差に関する22年の研究で、全米の雇用増加の94%が都市部で起きていると指摘した。

農村部では多くの住民が、教育、銃規制、性自認などの問題で自分たちの考えを押し通そうとする都市部の「エリート」たちの動きに怒りを感じており、トランプ氏をはじめとする共和党候補はこうした反感をあおり立てたという。

マサチューセッツ州選出の共和党全国委員会のメンバー、ロン・カウフマン氏は農村部の有権者について、地方経済の活性化に何年もかかり、国の借金を増やすかもしれない政府の大型投資よりも、ガソリン価格の高騰など懐事情に直結する問題を重視していると述べた。

米国のインフレ率は昨年夏に9.1%と40年ぶりの高い伸びを記録した後、低下傾向にあるが、食費は高止まりし、ガソリン価格も高騰している。こうした動きでより大きな打撃を被るのが、より長い距離を運転する農村部住民だ。

<農村部に多額の支援策>

民主党関係者によると、同党は24年の大統領選を前に、バイデン氏の大統領就任以降に打ち出したインフラ、半導体、インフレに狙いを定めた政策によって農村部に流れ込んだ連邦政府からの数十億ドルの資金について有権者に丁寧に説明し、農村部で発信を強化する計画にしている。

ホワイトハウスのまとめによると、農村部向けの施策には、医療システム(200億ドル)、クリーンエネルギー農業プロジェクト(200億ドル)、電化(110億ドル)、クリーンエネルギー・プロジェクト(130億ドル)などがある。

しかし、バイデン氏を支持するベテラン政治家の間にすら懐疑的な見方がある。

メーン州で8年間にわたり州議会議員を務めたアメリカン・ファームランド・トラストの最高経営責任者(CEO)、ジョン・ピオッティ氏(民主党)は、「現政権は先進的な農業を支援するため、長期にわたりこれまでにないほど多くの取り組みを行っているが、それが、少なくとも短期的に、農村部の投票パターンの変化につながるかどうかは不明だ」と述べた。

バイデン政権当局者によると、農村部住民は医療や退役軍人手当の拡大などバイデン氏の政策の一部を「圧倒的に支持している」ことがホワイトハウス内部の世論調査から分かるという。

しかし有権者がバイデン氏を称賛しているわけではない。

最近のロイター/イプソスの世論調査によると、国民の60%はバイデン氏のインフレ対策を支持せず、20年にバイデン氏に投票した人の多くは次回も同氏に投票するかどうかを迷っている。

<経済でトランプ氏優勢>

州当局者によると、メーン州にはバイデン氏の大統領就任以降、新型コロナウイルス対策に約46億ドル、さらに空港、道路、橋、高速インターネット回線、気候変動などへの対応に25億ドルが投じられた。また州内の退役軍人約10万6000人への給付も拡充した。

しかし、メーン州に住むベトナム戦争帰還兵のディック・ブシャール氏は、20年の大統領選の結果を覆すために共謀した容疑など複数の容疑で起訴されたトランプ氏への投票をためらいこそすれ、経済対策の面ではトランプ氏の方が優れていると考えている。

「バイデン氏と(民主党の)ミルズ・メーン州知事は情に流され過ぎる。誰にでも、そして何にでも『イエス』と言ってしまう」

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