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アングル:国債市場に新たな「ゆがみ」、20年債離れ鮮明 主力投資家不在

ロイター / 2023年10月20日 16時30分

 10月20日、国債市場で利回り曲線(イールドカーブ)に新たな「ゆがみ」が生じている。写真は円紙幣。2022年9月撮影(2023年 ロイター/Florence Lo)

Tomo Uetake

[東京 20日 ロイター] - 国債市場で利回り曲線(イールドカーブ)に新たな「ゆがみ」が生じている。20年債の利回りがほかの年限に比べて高い水準で放置されているのだ。主力投資家の一角を占めていた銀行や信金勢が日銀の政策柔軟化を受け、中長期国債に資金を移しており、買い手不在の状況が続いている。構造的な需要不足を背景に「20年債離れ」の解消のめどは見えない。

きっかけは日銀が7月末の金融政策決定会合で決めたイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用柔軟化と、それを受けた長期金利(新発10年国債利回り)の上昇だ。それまで「ゆがみ」の象徴だった10年債は割高感が解消に向かった。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「日銀の政策修正と長期国債利回り上昇を受けて、地銀・信金勢が20年国債や一般債から離れ、中長期国債投資に回帰している」との見方を示す。

日本証券業協会が集計した公社債店頭売買高によると、地銀勢(地銀・第二地銀)は8月と9月に中長期国債を2カ月連続で5000億円超と大幅に買い越した。一方で同期間、地方債や社債といった一般債を売り越している。

そもそも、負債サイドの年限が短い銀行や信金にとって運用の柱は中長期国債であり、ここ数年みられた超長期債である20年債や一般債での運用は、日銀のマイナス金利付き量的・質的金融緩和政策(QQE)で国債利回りが低下したことを受けて「やむにやまれず」の苦肉の策だった。

それが、7月末の日銀会合の決定を受けて10年債利回りが0.5%を上回ってきたことが転機となり、資金移動に弾みがついた。

カギを握るのは、資金調達原価だ。全国銀行協会によると、2022年度の業態別の資金調達原価率は、都銀が0.41%、地銀が0.57%、第二地銀が0.71%。8月に入って長期金利がこれらの水準を上回ってきたことで、負債の長さによりマッチする10年国債が再び投資対象となったとみられる。

岡三証券の長谷川直也債券シニアストラテジストは「都銀・地銀は超長期債ではなく長期債で十分との判断、また第二地銀・信金については新発20年債ではなく、残存13年程度で利回りが1%台のオフザラン(既発債)で十分との判断になるだろう」と指摘。銀行勢の運用が超長期債から長期債メインに回帰する中で、20年債はコア投資家が不在となっていると分析する。

一方、超長期の負債(生命保険契約)をかかえて30年債をメイン投資先とする生命保険会社についても、金利が上昇してきた20年債に新たに買いの手を広げる様子もみえないのが実情だ。

日本生命保険の都築彰・執行役員財務企画部長は、8月に実施したロイターとのインタビューで、「(7月の)日銀の政策修正を受けた金利上昇で、20年国債や10年国債が新たに投資先として視野に入ってきたということは特にない」と話している。

もちろん、外国人投資家やメガバンクといった「相場観で動く」投資主体は、利回り水準など状況次第で引き続き20年債の買い手となり得るが、需要不足は構造的な問題であり、基本的には発行量を減らさない限り、今後も厳しい入札が続くとの見立てが多い。

一方、三井住友トラストAMの稲留氏は「金利リスクを甘受して20年債を買っていた投資家が10年債への回帰を進めれば、指標となる10年国債に売買の厚みが戻り、市場メカニズムが働きやすくなる。全体として見れば市場機能の正常化にも資するので好ましい」と指摘している。

(植竹知子 編集:橋本浩)

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