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焦点:FRB大幅利下げは吉か凶か、投資家は相場波乱警戒

ロイター / 2024年9月20日 15時44分

9月19日、 米連邦準備理事会(FRB)の大幅利下げを受け、果たして米経済は上向くのか、それとも景気後退に直面するのか――。ニューヨーク証券取引所で同日撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)

Naomi Rovnick Yoruk Bahceli

[ロンドン 19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の大幅利下げを受け、果たして米経済は上向くのか、それとも景気後退に直面するのか――。市場では見解が入り乱れ、世界中の株式や債券、通貨の先行きが不透明になったため、有力投資家は相場が荒れる展開を警戒している。

FRBが50ベーシスポイント(bp)の利下げを決めた翌日の19日、株価は世界的に高値を更新し、ユーロと英ポンド、ノルウェークローネ、豪ドルなどは対米ドルで上昇。18日は動きが鈍かった米国株も急騰した。

ただ、イングランド銀行(BOE、英中央銀行)が19日の会合で物価情勢や世界の需要動向を巡る不確実性を理由に、政策金利を据え置いたのは、米国以外の中銀当局者に今後への不安が見えることの表れだ。

市場が織り込むBOEの追加利下げ確率は後退。一部の資金運用担当者は、既に力強い米経済にFRBが過剰なてこ入れをした結果、世界経済成長が押し上げられるものの、コモディティーや消費財の価格も上昇してしまう可能性があると警告した。

ロイヤル・ロンドンのマルチ資産責任者を務めるトレバー・グリーサム氏は「FRBの利下げが大幅過ぎて、経済が加速していく公算が大きいと思う。そうなると(世界的な)大規模利下げはなくなるかもしれない」と述べ、市場のボラティリティーはこれから高まると予想した。

一方で英資産運用最大手リーガル・アンド・ゼネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)の経済責任者を務めるティム・ドレイソン氏は、米経済の減速が続いている点を挙げて「乱気流の様相は強まる。リスクがあまりにも多い」と語った。

ドレイソン氏は、LGIMとして当面は世界的に株式と債券で強固なポジションは構築しないとしている。

<英国とユーロ圏の先行き>

市場では、米政策金利は年内に72bp、来年10月までに195bp低下すると見込まれている。

これに対してBOEが11月に25bpの利下げに動く確率はほぼ100%から約80%に切り下がり、欧州中央銀行(ECB)は10月に利下げを見送るとの予想になった。ただこうした見通しは流動的だ。

英国やユーロ圏の成長ペースは米国よりも弱い半面、しつこい物価高は続いている。そしてBOEとECBの政策運営や市場環境は、予測が難しい米経済の動向に左右されることになる。

フィデリティ・インターナショナルのポートフォリオマネジャー、シャミル・ゴヒル氏は、米国と英国の成長が振るわなければ、BOEはより急速な利下げに踏み切り、英国債価格上昇をもたらす可能性があると述べた。

ところが米国がさらに利下げを進めるという現在の想定が外れた場合、そうしたシナリオは崩れてしまう。

ゴヒル氏は、全体として世界の金融市場はボラティリティーが上がるとみており、運用資産構成は投資適格社債を選好する形で防衛的な色合いにしていると付け加えた。

ユーロ圏のコア物価上昇率はまだ3%弱と高めで推移し、ECBの政策担当者は6月と9月に続く利下げを巡って見方が分かれている。

ただロイヤル・ロンドンのグリーサム氏によると、FRBが利下げを継続し、ユーロ/ドルが一段と値上がりすれば、欧州の輸出競争力低下がECBの政策運営に重圧を与えるだろうという。

シュローダーズの債券ストラテジスト、マーカス・ジェニングス氏は、ハト派的なFRBと低調なユーロ圏経済の組み合わせで妙味が増すのはドイツ国債だとの見方を示した。

それでもどの中銀の政策見通しも、今後の米国の指標内容でFRBの次の一手を巡る予想が変われば、また様相が違ってくるだろう。

TSロンバードのマクロ責任者を務めるダリオ・パーキンス氏は、米雇用縮小が始まればFRBは今よりずっと緩和に前のめりとなると指摘。逆に雇用が再び拡大すれば、米国の金融政策はFRBが考えていたほど引き締め的でなかったことが分かると説明した。

投資家の不安心理の度合いを示し、「恐怖指数」の異名を持つシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は19日に16.6まで低下し、8月初めに米雇用統計が予想外の弱さとなって市場が混乱した際に記録した約66に比べると大幅に低くなっている。

MSCI世界株指数も、8月5日の急落以降で10%余り上昇した。

ただマルボロのシェルドン・マクドナルド最高投資責任者は、株式市場のバリュエーションからは米経済が利下げで活気付くことがうかがえる一方、国債市場は景気後退を示唆している以上、市場のボラティリティーが増大してもおかしくないと述べた。

インベスコのマルチ資産マネジャー、ベン・ガターリッチ氏は、FRBが景気後退を阻止すれば、主要中銀間の政策方向性の違いが取引の中心的なテーマとなり、例えばBOEのより引き締め的な政策がポンド高/ドル安維持につながるといった展開が想定されると説明した。

同氏によると、米経済が下振れれば世界的に株安・債券高となり、地域ごとの値動きのばらつきは小さくなるという。

結局のところ「損をしたくなければ、FRBを正しく読むほかない」と同氏は話した。

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