アングル:G7の「一帯一路」対抗策、関係国歓迎も有言実行が鍵
ロイター / 2021年6月21日 8時37分
G7が中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗して打ち出した途上国向けのインフラ支援構想は、中国の影響が直接及ぶ国々から歓迎を受けている。写真は2019年4月、北京で開かれた「一帯一路」に関するフォーラムで撮影(2021年 ロイター/Jason Lee)
[ジャカルタ/シンガポール 17日 ロイター] - 主要7カ国(G7)が中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗して打ち出した途上国向けのインフラ支援構想「Build Back Better World (B3W)」は、中国の影響が直接及ぶ国々から歓迎を受けている。ただ西側諸国がどれほど本気でプロジェクトに関与するかを巡り疑念も残っており、それを克服していくことが主要国の課題だ。
B3Wは英国で週末開かれたG7首脳会議(サミット)で合意。詳細はほとんど固まっておらず、実現には数年を要する見通しだ。
ただ今回の合意は、途上国における中国の覇権拡大に対するG7の挑戦だと見なされている。
アジア諸国はB3Wへの協力に前向きな姿勢を示しているが、G7の課題は中国の実績に匹敵するスピードで投資を進められるかどうかだ。
シンガポールのISEASユソフ・イシャク研究所のディレクター、チョイ・シン・クォック氏は、東南アジア諸国は中国への過度の依存を警戒しているため、B3Wが入り込む余地はあると指摘。ただ同時に、B3Wは複数国による取り組みという性質上、一帯一路より複雑でスピードも遅くなる可能性があるとみている。
「一帯一路プロジェクトに参加した東南アジア諸国は、これまで容易に取引が結べたから、という理由で参加したケースが多い。何らかの主義主張や地政学的な理由ではない」という。
B3Wのプロジェクトは、G7諸国とその同盟国が、天候、健康、デジタル技術、性の平等といった分野で民間セクターの資本を動員して行うことになる。
インドネシアのマヘンドラ・シレガル外務副大臣はロイターに対し、同国には共同投資が可能なプロジェクトが複数あり、先進諸国との協力を強化する準備はあると述べた。
ただ、インドネシアの一帯一路プロジェクトで主な窓口となる海事・投資調整省の報道官はロイターに対し、先進国はインドネシアの開発への関与に消極的だった過去を改める必要があると指摘。「われわれはB3Wを歓迎する。しかしもちろん、今回は有言実行を期待する」と述べた。
<政治ではなく投資>
中国政府は昨年、一帯一路プロジェクトの約2割が新型コロナウイルス大流行の影響を受けたとしている。また、複数の国々はコストや主権侵害、汚職などを理由に一帯一路プロジェクトの見直し、キャンセル、関与の縮小を求め、中国は一部の計画を後退させざるを得なくなった。
ただアナリストや政策立案者によると、アジアの長期的な開発ニーズは巨大で、中国の覇権拡大に対する懸念といった政治的要因を凌駕しそうだ。
アジア開発銀行は2017年、アジアの途上国が成長を維持するには2030年まで年間1兆7000億ドル(約187兆円)のインフラ投資が必要になるとの推計を示した。
フィリピンのチュア経済開発庁長官は、日本、中国、韓国、欧州諸国、米国など、インフラ開発の経験豊富な幅広い国々と協力していくことに前向きな姿勢を示す。長官は「事実、わが国のインフラは大きく不足している。過去5年間でそれを埋めるために鋭意努力を始めており、今後も続ける見通しだ」と述べた。
バングラデシュ外務省高官は匿名を条件にロイターに対し、同国は一帯一路プロジェクトへの関与を続けると述べた。
シドニーのロウイー研究所のエコノミスト、ローランド・ラジャ氏によると、途上国はほとんどのケースで政治的な影響をさほど気にせず中国と西側諸国のどちらかを選べるが、一部のセクターではもっと複雑な問題が生じるかもしれない。
ラジャ氏は「通信や、戦略的な場所に位置する港湾といったセンシティブなインフラは、今後とも二者択一の状況が続き、『正しい』選択を強く迫られるだろう」と述べた。
(Bernadette Christina記者 Aradhana Aravindan記者)
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