アングル:「脱ガラパゴス」で海外にらむ電電ファミリー
ロイター / 2020年12月21日 18時45分
12月21日、 NTTを軸に、通信機器ベンダーのNECや富士通といったかつての「電電ファミリー」が、携帯基地局の海外販路拡大に打って出ている。都内で14日撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
平田紀之、山崎牧子
[東京 21日 ロイター] - NTTを軸に、通信機器ベンダーのNECや富士通といったかつての「電電ファミリー」が、携帯基地局の海外販路拡大に打って出ている。海外の大手ベンダーによる寡占市場が米中摩擦を契機に揺らいでおり、「ガラパゴス」と揶揄(やゆ)されたこともある日本の通信業界は、他国の同業とも手を組む戦略に転じて商機を探っている。
「来年度からの次期中計では、グローバルで真の成長を目指す」と、NECの新野隆社長兼CEO(最高経営責任者)は11月の会見で述べた。柱の一つが、第5世代(5G)通信網の基地局ビジネスだ。10月には5Gのインフラ整備で英政府との協業を発表しており、今月16日にはテレフォニカドイツの実証実験に選定されたとも発表した。欧州などでの拡販に向けた拠点も英国に設ける力の入れ様だ。
富士通も、6月には米通信会社のディッシュ・ネットワークから5G向け無線装置を受注。時田隆仁社長は、足元でも「数社が関心を持っており、実証試験を進めている」と明かす。
電電ファミリーの「親」の立場のNTTも、海外の子会社を活用し、海外キャリアへの売り込みを図る構えだ。
<通信の「安全保障」が追い風>
英調査会社オムディアによると、世界の携帯インフラ市場は2019年で前年比12%増の380億ドル規模。この市場で、フィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソン、中国の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の4業者が約8割のシェアを占める。
これら大手ベンダーは、機器の接続に独自の仕様を用い他の基地局ベンダーを締め出してきた。通信会社は機器選択の幅が限られ、ネットワーク構築の主導権は大手ベンダーに握られてきた。
ところが、2010年代後半から通信各社の間では失地回復を図るため、機器接続を標準仕様にする「オープン化」の機運が出始めた。仕様がオープンになれば、大手以外のベンダーの参入余地が生まれ、通信会社はネットワーク構築の自由度が増す。コスト低減も期待される。NTTドコモは、オープン化の推進に向けて世界の通信大手5社で発足した「O─RAN Alliance(アライアンス)」の発起メンバーで、取り組みを主導している。
オープン化の動きにとって追い風となっているのは、米中摩擦だ。中国勢を除けば、通信機器の選択肢はノキアかエリクソン、オープン方式に絞られる。さらに、ファーウェイ排除の動きの中で、一つのベンダーに依存するリスクが浮き彫りになった。NTTの澤田社長は「ベンダー1社の垂直統合ではブラックボックス化していく。その点、O─RAN方式はマッチしている」と話す。
とりわけ欧州では5G網の整備はこれからという国もあり、オムディアの大庭光恵シニアコンサルタントは「世界展開で出遅れていた日本のベンダーにとってチャンス
」と指摘する。NTTの澤田社長は、脱ファーウェイを進める英政府と5Gのオープン化技術でNECが協業することを「いい流れになってきている」と歓迎する。
<脱「ガラパゴス」で巻き返し図る>
もっとも、「電電ファミリーで席巻していけるほど簡単ではない」とも澤田社長は明かす。かつて日本の通信業界は、携帯電話の技術でリードしたものの海外との互換性に乏しく「ガラパゴス」と揶揄された経緯があり、澤田氏は「やはりガラパゴスではいけない」と話す。「いいものができても対抗馬に潰されかねず、組んだ方がずっと良い」。
今後の課題の一つはコストだ。無線など日本勢の技術は世界の最先端とされるが、通信会社からのコスト低減の要求にこたえる必要もある。現状で、NECと富士通のシェアはいずれも1%に満たず、圧倒的な規模のメリットを持つ大手に競り勝つのは容易ではない。富士通の時田社長は「補完するような提携関係をどう作るかが非常に重要」と語る。同社はエリクソンと連携しており、O─RANと両にらみでもある。
オープン化では、異なるベンダーの機器を組み合わせてコスト最適化を図ることも重要で、ネットワークをまとめる(インテグレーション)力がベンダー差別化の鍵となる。その点、NECはドコモや楽天と、富士通はドコモやディッシュとの取り組みで実績づくりを進めており「先進的なプロジェクトをリードしていることは今後のステップでプラス」(オムディアの大庭氏)とされる。
オープン化がどれほど広がるかは、まだ見通しにくい。普及期は22年以降とみられ、果実が得られるまでには間がある。その間にも、新興ベンダーからの突き上げが見込まれるほか、ノキアやエリクソンといった「巨人」もオープン化に関心を示しつつある。日本勢にとっては、これからが正念場となる。
(平田紀之、山崎牧子 編集:田中志保)
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