北朝鮮「偵察衛星」予告期間前に発射、周回軌道への投入未確認と日本政府
ロイター / 2023年11月22日 1時56分
日韓両政府は21日夜、北朝鮮が偵察衛星と称するものを発射したと発表した。「衛星」は同午後10時55分ごろ、沖縄県の上空を太平洋へ通過。北朝鮮は予告期間前に打ち上げたが、日本の防衛省は現時点で地球周回軌道への投入は確認されていないとしている。写真は2021年4月、中国遼寧省丹東で撮影(2023年 ロイター/Tingshu Wang)
Nobuhiro Kubo Hitoshi Ishida
[東京/ソウル 22日 ロイター] - 日韓両政府は21日夜、北朝鮮が偵察衛星と称するものを発射したと発表した。「衛星」は同午後10時55分ごろ、沖縄県の上空を太平洋へ通過。北朝鮮は予告期間前に打ち上げたが、日本の防衛省は現時点で地球周回軌道への投入は確認されていないとしている。
韓国軍によると、北朝鮮は西部の東倉里付近から「衛星」を発射。日米と緊密に連携し、即応体制を維持すると発表した。
岸田文雄首相は官邸で記者団に対し、衛星打ち上げが目的だとしても国連の安保理決議違反だと指摘。「北朝鮮にすでに厳重に抗議をし、最も強い口調で非難した」と述べた。「日米、日米韓の関係各国と連携しながら対応を続けていく」と語った。
会見した宮沢博行防衛副大臣は、「現時点で地球周回軌道への衛星の投入は確認されいない」と説明。一方で、「失敗か成功かは分析中」とした。発射したものは複数に分離し、1つは東シナ海上の予告区域外に落下したという。
日本政府は北朝鮮による発射の直後、沖縄県の住民に避難を呼び掛けた。自衛隊はミサイルの破壊措置を実施せず、現時点で被害の情報は確認されていない。松野博一官房長官によると、日本は国家安全保障会議(NSC)閣僚会議を開き、さらなる発射に備えて情報収集や警戒監視に当たることなどを確認した。
松野官房長官は会見で、「北朝鮮は今後も各種ミサイルの発射や核実験の実施などさらなる挑発に出てくる可能性がある」と述べた。
北朝鮮は22日─12月1日の間に「人工衛星」を打ち上げると海上保安庁に通告していた。日韓が自制を求める中、予告期間前に発射した形で、松野官房長官は安全確保の観点から問題があると非難した。
北朝鮮は5月31日と8月24日にも偵察衛星の打ち上げを試みたが、いずれも失敗している。専門家らは、偵察衛星は北朝鮮の兵器の有効性を向上させるために極めて重要だと分析する。宮沢防衛副大臣は「偵察衛星を保有するに至った場合はミサイルの運用能力がさらに向上する」と語った。
金正恩朝鮮労働党総書記は9月、ロシア極東にある宇宙開発拠点を訪問。プーチン大統領は金総書記に対し、人工衛星の開発支援を約束した。韓国の情報機関、国家情報院は3回目の打ち上げが成功する可能性は高いとの見方を示していた。
松野官房長官は「ロ朝関係に関しては技術協力も含めて分析中」と説明した。
米軍は21日、空母「カール・ビンソン」を韓国の釜山に入港させた。韓国軍高官は声明で、同空母の寄港は韓米同盟による「強力な統合防衛態勢と高まる北朝鮮の核・ミサイル脅威に対処する断固とした意志」を示すものだと説明していた。
韓国も今月30日、初の偵察衛星を米カリフォルニア州から打ち上げる予定にしている。
(久保信博、石田仁志、金昌蘭 編集:宮崎亜巳、橋本浩)
*写真を追加しました。
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