正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=日銀討論資料
ロイター / 2024年5月21日 20時14分
日銀は21日、同日開催した金融政策の多角的レビューのワークショップで用いた資料を公表。インフレ率がプラス圏で推移するもとで賃金・物価が緩やかに上昇する世界では、金利が下限制約に直面するリスクが低下して「金融政策の対応余地が拡大する」とした。資料写真、日銀本店外観、2009年3月撮影(2024年 ロイター/Yuriko Nakao)
Takahiko Wada
[東京 21日 ロイター] - 日銀は21日、同日開催した金融政策の多角的レビューのワークショップで用いた資料を公表した。金融政策のセッションでは、正の一般物価インフレ率が望ましいとの研究が増えつつあると指摘。インフレ率がプラス圏で推移するもとで賃金・物価が緩やかに上昇する世界では、金利が下限制約に直面するリスクが低下して「金融政策の対応余地が拡大する」とした。
ワークショップは、過去25年間の日本の経済・物価情勢、非伝統的金融政策とインフレ予想、パネルディスカッションの3部構成で行い、日銀の職員と民間研究者が議論した。
日本経済は1990年代後半以降のデフレ期にゼロ金利制約に直面。金融政策の対応余地が限られる中、日銀は低金利の長期継続を約束するフォワードガイダンスやマイナス金利政策など様々な手法を導入してきた。
日銀は近年の研究を紹介し、プラスのインフレ率を維持することで賃金や価格が他社の動向を見ながら変動しやすくなり、資源配分の効率化につながる可能性があること、ひいては、生産性に対して好影響をもたらしうるとした。
一方で、インフレ予想の変化が物価変動に及ぼした影響は大きかったと指摘。2013年の物価安定目標や量的質的金融緩和(QQE)の導入には「インフレ率を直ちに2%にアンカーするほどの有効性はなかった」ものの、1998年以降のデフレマインドが物価を持続的に押し下げる状況を転換させたという点で「一定の効果があったことが示唆される」とした。
調査統計局による過去25年間にわたる経済・物価情勢をテーマとするセッションでは、現在の物価上昇局面の出発点に海外発の供給ショックがあるとした上で、名目賃金について、従来は海外ショックの影響は小さかったが、現局面では大きく押し上げに寄与しているとの分析を示した。
その上で、人口動態や労働市場の構造変化、さらには金融緩和の持続で賃金が上昇しやすい状況になり、賃金や物価が上がりにくいというノルム(慣行)も解消に向かうとした。
金融政策の多角的レビューのワークショップは今回が2回目。議論はメディア非公開で行われたが、今後、概要を公表する予定。
この記事に関連するニュース
-
物価に上振れリスク、「遅きに失することなく」適時に利上げ必要=日銀主な意見
ロイター / 2024年6月24日 11時22分
-
日本が今の円安を懸念する必要はまったくない 日銀の植田総裁が利上げを急ぐ可能性は低い
東洋経済オンライン / 2024年6月11日 8時30分
-
インタビュー:物価が2%目標上回るリスク、日銀は注意必要=星・東大教授
ロイター / 2024年5月31日 17時37分
-
「アメリカ出張がキャンセルに」…デフレを心配していたリフレ派の私が、なぜ今インフレを心配するのか
プレジデントオンライン / 2024年5月31日 9時15分
-
日本の物価目標は2%でいいのか~問われる「多角的レビュー」の意義(愛宕伸康)
トウシル / 2024年5月29日 8時0分
ランキング
-
1新NISAで人気の「NTT株」が5月から急落した深層 個人株主は急増も、海外投資家と思惑のズレ?
東洋経済オンライン / 2024年6月26日 8時10分
-
2売上2兆円、ドン・キホーテ創業者が「日本経済を決定的にダメにした」と断言する“A級戦犯”とは?
文春オンライン / 2024年6月26日 6時0分
-
3スーパーで無料提供されている「割りばし」を大量に持って帰るのはあり?無料とはいえマナー違反になる…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月26日 2時10分
-
4日経平均は3日続伸、半導体関連が押し上げ 約2か月半ぶり高値
ロイター / 2024年6月26日 15時43分
-
5談合問題で揺れる…中部電力の株主総会で勝野会長らが株主に謝罪 コンプラ遵守など再発防止に取り組むと説明
東海テレビ / 2024年6月26日 17時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください