焦点:中国「3中全会」、今年は税財政改革を重視 地方政府の収入確保で
ロイター / 2024年6月21日 15時29分
中国共産党の重要会議、第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が7月に開催される。複数の政策アドバイザーによると、今回は地方政府の多額の債務と収入不足を巡る問題への対応に主眼を置いた税財政改革が重要で、中央政府から地方への税収再配分や、不動産危機で危険性が浮き彫りとなった土地売却への依存抑制などが話し合われる見通しだ。写真は人民元紙幣。2022年5月撮影(2024年 ロイター/Dado Ruvic)
Kevin Yao Ellen Zhang
[北京 20日 ロイター] - 中国共産党の重要会議、第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が7月に開催される。複数の政策アドバイザーによると、今回は地方政府の多額の債務と収入不足を巡る問題への対応に主眼を置いた税財政改革が重要で、中央政府から地方への税収再配分や、不動産危機で危険性が浮き彫りとなった土地売却への依存抑制などが話し合われる見通しだ。
ロイターが取材した4人の政策アドバイザーの1人は「土地売却で資金を調達する局面が終わりを迎えた後、地方政府の収入基盤拡充に向けた改革を進めなければというプレッシャーは大きい」と明かした。
指導部は30年ぶりのこうした大規模な改革を通じて、金融システムと経済成長にリスクをもたらしている地方政府の債務問題を巡る懸念を和らげたい考え。地方政府が抱える債務は現在13兆ドルに上り、さらに増え続けている。
中国財政省のデータからは、昨年の国家収入に占める地方政府の収入の比率は54%だが、支出は86%。この不均衡は1994年に実施した税財政改革の産物だ。当時の改革は、1980年代終盤に地方の支出急増とインフレが生じたことを踏まえ、地方政府独自の資金調達を制限することが企図された。
ただ地方政府は、通常予算の枠外の調達手段導入と、居住用不動産開発会社向け土地売却入札の活用でそうした制限をすり抜けた。前者は中央政府が規制に乗り出し、後者は巨大な住宅バブルを醸成した。
中国で深刻な不動産不況が始まった2021年までの10年間で、地方政府の収入に占める土地売却の比率は20%から約33%に高まった。だが21年にピークの8兆7000億元に達した土地売却収入は昨年、5兆8000億元まで目減りしており、もはや信頼できる財源とは言えない。
<支出と収入の均衡>
中国指導部は昨年12月に大幅な税財政改革の方針を打ち出したが、この際には詳細は明らかにされなかった。
政策アドバイザーの話では、主な改革点は新税導入や増税ではなく、地方政府にとどめる税収の比率見直しになる公算が大きい。
現在地方政府は付加価値税からの収入の50%、所得税収の40%を得ており、中央政府は法人税収の大半と生産者と輸入業者を課税対象とする消費税の収入全てを握っている。
アドバイザーらは具体的な配分比率の変更は示していないが、中国の全税収の約1割となる消費税収入のほとんどと、3割強の付加価値税収のより多くの部分が地方政府の懐に入る可能性があると述べた。
その狙いは地方政府の支出と収入を均衡させ、債務増大に歯止めをかけることだ。2人目のアドバイザーは「地方政府の支出は財政運営能力に依拠しなければならない。成熟した社会はもはやより多くのインフラを構築するための特別な手段を見つけ出す必要はない」と語った。
<改革に伴うジレンマ>
今回の税財政改革は、その他の構造的な不均衡、例えば投資と輸出への過度な依存や、家計消費の弱さといった問題への対応までは踏み込まないだろう。
中国のキャピタルゲイン税率は20%。多くの例外はあるにしても、インドの30%や米国の37%よりも低い。
だが過去15年にわたって債務が国内総生産(GDP)成長率より急速に伸びる中で、投資が生み出すリターンは目減りし続けている。
その結果として税収も減少。国際通貨基金(IMF)の計算では、中国の税収の対GDP比は14%で、主要7カ国(G7)の平均23%を下回っている。
これにより社会的支出を賄うには、資本ないし企業への課税強化は避けて通れない。一方で家計への増税はこれ以上難しい。中国の所得税の最高税率は45%と世界で最も高いからだ。
資本と労働の間の「課税格差」が低賃金と大幅な投資を助長している。
ところがこの格差を是正しようとすると、今度は消費者よりも製造業や研究機関により多くの資金を振り向け、工業とハイテクで世界のトップに立つという政府の戦略的な目標に反する形になる。
ある専門家は「税制改革は産業の発展を後押しすべきだ」と述べ、中国はまだ配分すべき「パイ」自体を成長させなければならないと指摘した。
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