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アングル:日銀の新資金供給、保証付の利用活発化へ プロパー融資は不透明感

ロイター / 2020年5月22日 18時41分

日銀は金融機関向けの新たな資金供給手段で、緊急経済対策に盛り込まれた民間金融機関による無利子・無担保融資の促進を狙う。写真は5月22日、東京の日銀本店前で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

和田崇彦

[東京 22日 ロイター] - 日銀は金融機関向けの新たな資金供給手段で、緊急経済対策に盛り込まれた民間金融機関による無利子・無担保融資の促進を狙う。新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた事業者などの申請が殺到していることを踏まえ、政府は予算を増額する構えで、財政・金融のポリシーミックスの効果が発揮されそうだ。しかし、新型コロナの終息が見通せないなか、一部の銀行は自らリスクを取って行う「プロパー融資」には及び腰だ。

<無利子・無担保融資に申請殺到>

新たな資金供給手段の対象となる融資は2つに分かれる。緊急経済対策に盛り込まれた信用保証付きの無利子・無担保融資と、信用保証協会の保証が付かず民間金融機関が独自に行うプロパー融資だ。

緊急経済対策では、民間金融機関による無利子・無担保融資を総額24.2兆円と想定。日銀が示した新たな資金供給手段は総額は30兆円で、資金供給の大半は緊急経済対策を念頭に置いている。

5月1日に民間金融機関で受け付けが始まると申し込みが殺到し、中小企業庁によると20日時点で申し込み件数は13.1万件、このうち信用保証協会による承諾件数は6.5万件、1.1兆円の融資が決まった。

「急ぎで資金を必要とする顧客のため、後のことは考えないで融資している」と民間金融機関の現場の担当者は語る。ある政府関係者は、今回の日銀の決定が呼び水となり、新型コロナで打撃を受けた中小企業への融資がさらに活発化することに期待感を示している。

民間金融機関による無利子・無担保融資への申請が急増していることを受け、政府は現在策定中の第2次補正予算で関連予算の積み増しを検討している。予算が増額されれば、民間金融機関が信用保証付き融資を増やす余地も拡大する。

3月に日銀が打ち出した新型コロナ対応の特別オペは、4月に利用残高へのプラス0.1%の付利を決めたことが呼び水となって地銀の参加が急増した。22日に決めた新たな資金供給手段にも、利用残高への付利は組み込まれた。金融機関にとって、付利はマイナス金利による収益へのダメージを軽減することにつながる。

<プロパー融資、「慎重にならざるを得ない」>

ただ、日銀が新資金供給手段の対象に含めたプロパー融資がどこまで伸びるかは不透明感もくすぶる。

日銀がプロパー融資を対象に含めた背景には、民間金融機関によるファンドを通じた資金供給を増やす狙いもある。こうした狙いに呼応するように、三井住友銀行、みずほ銀行は22日、新型コロナで苦境に陥った企業に資金を供給するファンドを各1兆円規模に拡大することを明らかにした。それぞれ、3月に立ち上げたときには3000億円規模だった。

一方、地方銀行からはプロパー融資を増やすことに慎重な声が出ている。

ある地銀の幹部は「コロナの影響が長引けば、一度融資しても顧客から追加の融資をお願いしますとなるだろう。上限を超える部分はプロパー融資にするしかない」と話す。緊急経済対策に盛り込まれた無利子・無担保融資の上限は3000万円。融資する中小企業の状況に応じ、3000万円を超えるケースも出てくるが、銀行がリスクを抱え込むことにはためらいがあるという。

新型コロナの感染拡大に伴う景気の大幅な落ち込みで、銀行の与信費用は急増する見通しだ。メガバンク3グループ合計の21年3月期の与信費用計画は1兆1000億円と前期のほぼ倍を見込む。しかし、「コロナの影響はシミュレートしようにも正確にはできない。今年度見通しに組み込んだ与信コストはとりあえずの数字にしかすぎない」(銀行関係者)との声も出ている。感染の影響が長引くほど費用が膨らむリスクがある。

さらに、銀行の財務健全性を示す自己資本比率の算出方法における保証付き融資とプロパー融資の違いが、プロパー融資の積極化を阻む。

融資先のリスクに応じ、自己資本比率の分母に来るリスクアセットごとに掛け目が定められている。信用保証が付いた融資は銀行が取りはぐれることがないためリスクウエートはゼロ%。信用保証付き融資であれば、どんなに増やしても自己資本比率の分母には反映されず、自己資本比率の低下を心配する必要はない。

これに対し、中小企業向け融資のリスクウエートは75%で、融資を増やせばそれだけ自己資本比率の分母が膨らみ、同比率には低下圧力が掛かる。自己資本比率の低下を恐れれば、銀行は中小企業向け融資を手控えざるを得ないことになる。

「顧客の需要に十分応えられる資金がある。新たな資金供給手段には参加しない」(地銀幹部)との声も出ており、日銀の新たな資金供給手段の利用が伸び悩む可能性もある。

(取材協力:梅川崇 編集:石田仁志)

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