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物価目標実現、見通せる時期決め打ちできない=日銀総裁

ロイター / 2023年9月22日 19時16分

 9月22日、日銀の植田和男総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で、情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで物価目標の持続的・安定的な実現を目指していくと述べた。写真は5月、都内で撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada Kentaro Sugiyama

[東京 22日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は22日、金融政策決定会合後の記者会見で、物価目標の実現が見通せる状況になれば政策修正を検討することになるが、どの時点になればその状況が明確になるかは「決め打ちできない」と語り、早期のマイナス金利解除を織り込む市場をけん制した。改めて、粘り強く金融緩和を継続していくことで物価目標の持続的・安定的な実現を目指していくと述べた。

<読売新聞インタビューの発言意図を説明>

会見では、読売新聞が9日に報じた植田総裁のインタビューについて質問が相次いだ。賃金と物価の好循環を巡り、来年の賃金上昇につながるか見極める段階だとしつつ、「十分だと思える情報やデータが年末までにそろう可能性もゼロではない」と語ったことなどが、市場でマイナス金利の早期解除の思惑を生んだ。

植田総裁は、読売のインタビューでは現時点で経済・物価を巡る不確実性は極めて高く、政策修正の時期や具体的な対応について到底決め打ちはできないと指摘した、と説明。「年内はそういう可能性は全くないということを総裁の立場で言うと毎回の決定会合の議論に強い縛りをかけてしまう。そういうことは言わない方が望ましいという趣旨の発言だった」と述べた。

現在、賃金上昇を伴う2%の持続的・安定的なインフレが見通せる状況にはなっていないとし、現行の枠組みのもとで粘り強く金融緩和を続けていると説明した。その上で、目標の実現が見通せる状況になった場合、長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)の撤廃やマイナス金利の修正を検討するということになるとした。

ただ、「さまざまな手段をどういう順序でどう変更していくのかは、そのときの経済・物価情勢次第」と語り、マイナス金利解除についても、物価目標の実現が見通せる状況になれば視野に入るが「どういう変数と紐づいて短期金利がどれくらいというのは決め打ちできる段階ではない」と述べた。

消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の対前年伸び率の実績値が安定的に2%を上回るまでマネタリーベースの拡大を続ける「オーバーシュート型コミットメント」について、早期の撤回に慎重な姿勢を示した。

定義上は解除可能でも、解除に伴うアナウンスメント効果やこのコミットメントがYCCの継続期間などほかのフォワードガイダンス(金融政策の先行き指針)と一体で運用されてきた経緯があると説明した。

<物価目標の実現、強い総需要も必要との認識>

植田総裁は物価の先行きについて、為替相場、資源価格の動向だけでなく、内外の経済動向や企業の賃金・価格設定行動に関する不確実性も極めて高いと認識を示し、政府のガソリン価格抑制策延長の影響も考慮に入れ、様々なデータや情報を丹念に精査していくと語った。

総務省がこの日公表した8月の全国コアCPIの前年比上昇率は3.1%で、7月から変わらなかった。植田総裁は7月の展望リポート公表時の見通しに比べてプラス幅の縮小の仕方が「少しゆっくりめかなという雰囲気はあるかと思う」と話す一方、企業の価格転嫁の動きについて「そろそろピークに近いと思っている」とも述べた。

植田総裁は物価目標の実現には、強い総需要も必要との認識を示した。「強い総需要に支えられたもとで、賃金と物価が好循環を続ける姿が確認できることが必要」と述べた。緩やかに伸び率が拡大しているサービス価格についても、目標実現には「相応の上昇率」の継続が必要だとした。

また、賃金に影響を与える変数に関する情報は連続的に入ると指摘、賃金動向については、どのタイミングでも把握可能との認識を示した。

<為替、「常に注視」>

日銀は21─22日に開催した決定会合で、金融政策の現状維持を決めた。外為市場ではドル/円が148円台まで上昇し、昨年11月以来10カ月ぶりの円安水準となっている。

植田総裁は為替について「ファンダメンタルズに沿って安定的に推移するのが望ましい」と指摘。為替レートは物価見通しにも影響を及ぼすため「常に注視している」と述べた。また、「政府と緊密な連絡をとりながら注視していきたい」とも語った。

長期金利については、YCCの運用柔軟化後の市場調節方針と「整合的に形成されている」と話した。現在も続く国債の大規模買い入れを減額するかについては「長期的な視点から検討していきたい」と述べるにとどめた。

(和田崇彦、杉山健太郎 編集:石田仁志)

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