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アングル:米議会、債務問題対処の委員会設置案 格下げの恐れで

ロイター / 2023年11月23日 8時1分

 11月21日、格付け会社ムーディーズが今月、政治の機能不全を理由に米国の信用格付けを引き下げる可能性を示したことから、米議会は財政赤字と債務の膨張に歯止めを掛ける方法を探すべきだとの声が強まっている。米首都ワシントンで8月15日撮影(2023年 ロイター/Kevin Wurm)

Richard Cowan Moira Warburton

[ワシントン 21日 ロイター] - 格付け会社ムーディーズが今月、政治の機能不全を理由に米国の信用格付けを引き下げる可能性を示したことから、米議会は財政赤字と債務の膨張に歯止めを掛ける方法を探すべきだとの声が強まっている。

米国の公的債務は過去10年間で倍増して33兆7000億ドルと、国内総生産(GDP)の124%前後に達している。これを抑える方法は基本的に、増税、支出削減、これら2つの組み合わせの3つしかない。

このため一部議員は、債務膨張への現実的アプローチを検討するという「力仕事」を担う委員会の設立を求めている。財務省によれば、金利上昇を背景に、2023年度に返済が必要な公的債務は実に6590億ドルに上り、懸念は募るばかりだ。

上院予算委員会メンバーのマイク・ブラウン議員(共和党)は、インタビューで「財政に関する委員会が是非とも必要だ」と語った。

ブラウン氏は、来年の大統領・議会選挙で財政赤字と債務が重要な争点になると考えている。「重い利払い負担が、他の全ての事を圧迫し始める」とみられるからだ。

公的債務は2013年の16兆7000億ドルから2倍以上に増えている。この間、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応もあり、共和党は税収減につながる大型減税を実行し、共和・民主両党は財政支出の拡大を支持した。また、民主党は社会保障のセーフティーネット拡充に取り組んできた。

その結果、ムーディーズは今月、米国の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。金利上昇により、借り入れコストは高止まりするだろうとムーディーズは指摘している。

これに先立ち格付け会社フィッチ・レーティングスは8月、米国の格付けを最上級の「AAA」から「AAプラス」に引き下げた。議会審議が膠着し、政府がデフォルト(債務不履行)寸前に追い込まれたことが理由だった。

超党派団体、ピーターG・ピーターソン・ファウンデーションのマイケル・ピーターソン最高責任者(CEO)は「わが国の財政は深刻な状態だが、解決は可能で、超党派の委員会を設けるのが最良のアプローチだ」と言う。

ピーターGは十数人の専門家から、委員会が提案できそうな解決策を募り、それを回覧している。

例えば、ムーディズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は、温室効果ガスの排出に対する新たな課税と、社会保障プログラムに施す物価調整の決定方式の変更を挙げた。

コンファレンス・ボード(CB)のエコノミストらは、2043年までに増税と支出削減の組み合わせにより公的債務の対GDP比率を70%に抑える目標を提案した。

この他、高額所得者への社会保障課税を増やすことや、退職金を満額支払う年齢を、現在の67歳から徐々に引き上げて69歳とする案などが寄せられている。

<超党派の法案>

来年末に引退すると表明しているジョー・マンチン(民主党)、ミット・ロムニー(共和党)両上院議員は、いずれも超党派委員会を創設する法案の提出に加わった。

委員会は2025年には仕事を完了することとしている。同様の超党派法案は下院でも提出されており、予算委員会が10月19日に法案を巡る公聴会を実施した。

マンチン議員は21日、ロイターに書面で、委員会設置は「議会が二極化している環境下、膨張する国の債務に対処する上で最も期待の持てる」方法だとの考えを示した。10月末に就任したばかりのマイク・ジョンソン下院議長が委員会設置案を支持していることに「励まされる」と付け加えている。

連邦議会は今年、防衛、国土安全保障、一部の社会セーフティーネットといった「裁量的」プログラムの年間支出、約1兆6000億ドルを巡る闘争に明け暮れてきた。

これは財政支出全体の約3分の1に過ぎない。支出の最大部分を占める社会保障や高齢者向け公的医療保険「メディケア」といった「義務的」プログラムは、議論から外れている。

それでもリベラル派の議員は神経をとがらせている。バーニー・サンダース上院議員は、委員会設立案について「社会保障を削るための裏口」になると切って捨てた。

一部議員は、委員会が成功するには、議会に強制的に提言を実施させる権限が必要だと指摘している。それはつまり、委員会が増税を提案した場合、共和党は増税に対する長年の反対姿勢を取り下げる必要が出てきかねないということだ。

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