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焦点:どうなるトランプトレード、バイデン氏撤退「ねじれ」に注目

ロイター / 2024年7月22日 13時48分

7月21日、米民主党のバイデン大統領が選挙戦から撤退を表明したことで、投資家は大統領・上下両院とも共和党が制して米国の財政とインフレに対する圧力が強まると見込んで進めていた取引を巻き戻す可能性がある。写真は同日、ニューヨーク街頭の掲示板に流れるバイデン氏撤退のニュース(2024年 ロイター/Caitlin Ochs)

Davide Barbuscia Suzanne McGee Matt Tracy

[21日 ロイター] - 米民主党のバイデン大統領が21日に選挙戦から撤退を表明したことで、投資家は大統領・上下両院とも共和党が制して米国の財政とインフレに対する圧力が強まると見込んで進めていた取引を巻き戻す可能性がある。ただ、バイデン氏の撤退により次期政権で民主、共和両党がいずれも両院で過半数を取れない公算が大きくなり、市場にとってはプラスとの見方もある。

バイデン氏が6月のテレビ討論会で惨敗すると、トランプ前大統領の掲げる税制政策によって長期的に米財政が悪化する一方、企業利益が増加すると見込む「トランプトレード」が金融市場で台頭した。

とりわけ顕著な動きを示したのは米国債相場。テレビ討論会と先週末の暗殺未遂事件でトランプ氏が大統領に返り咲くとの期待が高まると、米長期国債利回りは一時的に上昇した。

景気に減速の兆しが表れたことから利回りはすぐ元に戻ったが、金利のこうした動きは、トランプ政権が誕生すればインフレ的な政策が導入されて財政が拡大するという投資家の見方を映していた。しかしバイデン氏が選挙戦から撤退し、後継候補としてハリス副大統領を支持すると決断したことでトランプ氏勝利に懐疑的な見方が広がり、投資家はトランプトレードを縮小する可能性が高い。

トランプ氏の陣営は、成長促進策によって金利が下がり、財政赤字は縮小すると主張している。市場関係者の間では、バイデン氏が再選されても財政赤字は悪化し続けるとの見方が大勢だった。

ニューエッジ・ウェルスのキャメロン・ドーソン最高投資責任者(CIO)はバイデン氏の撤退について「トランプトレードは勢いを幾分削がれる」と指摘。市場はバイデン氏の後継候補がはっきりするのを待つことになると述べ、「トランプトレードが巻き戻されるといった動きが見られるのはそのタイミングではないか」と予想した。

16日まで実施したロイター/イプソスの世論調査によると、登録有権者の支持率はトランプ氏が43%、バイデン氏が41%でトランプ氏が僅差でリードしていた。

18日に共和党の候補指名を受けたトランプ氏は法人税減税と金利引き下げを再び公約に掲げた。アナリストは、トランプ氏が大統領に復帰すれば通商関係が厳しくなり、インフレ圧力を押し上げる関税が導入されそうだとみている。

その場合、税収が減って連邦政府の財政赤字は拡大しそうだ。財政赤字が2020年に急増したのは新型コロナウイルスへの対応が主要因だが、トランプ氏の任期中だった17年から20年を含め、財政赤字は過去10年の大半で一貫して増加してきた。

投資家の多くは民主党政権が続いても財政赤字は悪化し続けそうだとみているが、大統領・議会選がよりバランスの取れた結果になれば、共和党が大統領と両議会を制して行き過ぎた財政刺激策が導入されるリスクは低下する可能性がある。

<ねじれか否か>

現在の米議会は下院を共和党、上院を民主党がそれぞれ僅差で多数を握り、「ねじれ」の状態にある。いずれかの政党が劇的な政策変更を強行することが難しくなるため、ねじれ議会は投資家の間で市場にとってプラスとみなされることが多い。

バイデン氏が当初、撤退を拒否し、民主党支持者の一部が献金を停止したことから、民主党は上下両院でも敗北すると警鐘を鳴らす声もあった。

しかしウェリントン・マネジメント・カンパニーの債券ポートフォリオマネジャー、ブリジ・クラナ氏は、バイデン氏が撤退すれば民主党が上院か下院の少なくともいずれかで多数派となる可能性が高まると話していた。国債発行がより緩やかになる可能があることから、「仮にねじれ議会の政権が誕生すれば、利回りは今の水準よりもかなり低下するだろう」と予想していた。

ハリス・ファイナンシャル・グループのマネジング・パートナー、ジェイミー・コックス氏は、これまで議会のねじれが解消すると予想していた市場で相場水準の見直しが起きる可能性があると指摘。「上院は共和党が制する公算が大きいが、下院は民主党が多数を奪回する動きが強まりやすい」と述べた。

ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのグローバル債券ポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏も、ねじれ議会の政権となる可能性に言及、「市場にとって追い風になる」と述べた。

<ボラティリティーは上昇か>

投資家は、大統領・議会選を巡る不透明感が続く中、市場のボラティリティーが高まる可能性があるとみている。

「バイデン氏が撤退するということは、政治的な不確実性がまったく新たなレベルになるということだ」と、ボルビン・ウェルス・マネジメント・グループのジーナ・ボルビン社長は指摘。「これは市場のボラティリティーを高めるきっかけになるかもしれない」と話した。

株式市場の大部分、特に小型株はこの数週間、トランプ氏の勝利を見込んで堅調に推移してきた。暗号通貨(仮想通貨)もインフレ期待を背景に上昇している。

「恐怖指数」と呼ばれる米国株の予想変動率VIX指数は19日に4月下旬以来の最高値を付けた。

ペリゴン・ウェルスのラフィア・ハサンCIOは「市場は不確実性を嫌う。民主党候補が不明であるという要素が加わると、投資家は不安感を強めるだろう。(バイデン氏撤退の)報道を受けて、明日あるいは今後数週間の市場がどう動くか予想がつかない。投資家は静観すべきだ」と述べた。

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