焦点:苦境の航空会社、日本政府が側面支援 直接救済にはなお距離
ロイター / 2020年10月23日 18時15分
10月23日 新型コロナウイルスの世界的流行で旅客需要が大きく落ち込む中、各国政府が航空会社の救済に乗り出している。大手2社が経営悪化に直面する日本も、政府が空港使用料減額による負担軽減策を打ち出し、与党内には追加措置を求める声がある。写真は10月23日、東京の羽田空港で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
[東京 23日 ロイター] - 新型コロナウイルスの世界的流行で旅客需要が大きく落ち込む中、各国政府が航空会社の救済に乗り出している。大手2社が経営悪化に直面する日本も、政府が空港使用料減額による負担軽減策を打ち出し、与党内には追加措置を求める声がある。
それでも、日本国内は少しずつ人の移動が再開しつつあるほか、金融機関が資金面で支えられる状況にあり、欧州のように国による資本注入にまで踏み込むムードはまだない。ルフトハンザ
<税優遇など追加支援の声>
「過去に例のない減額幅となります」。航空会社が支払う空港使用料の軽減策をまとめた国交省の幹部は10月初旬、与党関係者にこう説明に回った。
国交省によると、2020年度の空港使用料を年間2500億円程度と想定。このうち着陸、停留時の費用や保安料で880億円、管制サービスなどに支払う航行援助施設利用料で1600億円の徴収を見込んでいた。今回は着陸・停留料に絞って徴収率を45%の減額とする措置を講じ、最大125億円の支援策とした。
今年に入って新型コロナの感染が拡大して以降、航空業界は利用者が激減し、4─6月期はANAホールディングスが1088億円、JALが937億円の最終赤字に転落した。
複数の関係者によると、このうち最大手のANAは傘下の全日本空輸が路線の見直しを検討。国内線を羽田と伊丹発着の路線を中心に集約し、地方発着路線を縮小する可能性がある。国際線も羽田発着を優先し、関西、中部、成田の各空港は発着便の多くを当面休止する。
自民・公明の与党関係者の間では「航空インフラは何としても守らなければならない」との声が多い。残る費用負担の減免や税優遇についても検討を求める声が強まりそうで、ある閣僚経験者はANAを念頭に、「コロナという、自らの責めに帰さない事由によって厳しい状況になるのであれば当然、追加支援が必要になる」と断言する。
業界団体の定期航空協会は今春、政府との会合で支援を要望。空港使用料の減額のほか、航行援助施設利用料の支払い免除、航空機の固定資産税や燃料税の支払い猶予など、公的な負担金軽減策を求めていた。
別の自民党中堅議員は「『経営努力で乗り切って』と言うにも限界がある現状で、手付かずの負担金軽減や税優遇を年末にかけ働きかけたい」と話す。
<資本注入は「最後の砦」>
航空会社の政府支援を巡っては、欧州が先行し、より直接的な措置に乗り出している、ルフトハンザが90億ユーロ(約1兆1000億円)の政府救済案を受け入れたほか、同様に苦境に立つイタリア航空大手アリタリアは6月に完全国有化された。エールフランスKLM
日本の政府や与党内では、そこまでの声はまだ聞かれない。国境をまたいだフライトが多い欧州の航空会社と違い、日本は国内線も主軸。政府の観光支援策「GoToトラベル」などで人の移動が再開し、ANA、JALとも国内線は復調の兆しがみられる。GoToトラベルは来年1月末で終了する予定だが、年内にまとめる経済対策で延長措置される可能性がある。
また、金融機関が健全性を維持しており、航空会社を支えるだけの体力がある。ANAは今月27日、事業構造改革とともに主力の三井住友銀行など5行から劣後ローンで4000億円を調達することを発表する見通しだ。
「株価が戻り歩調となり、幸いにも金融機関が保有する株式の減損処理に追われるなどの事態に至っていない」と、前出の閣僚経験者は言う。政府による航空会社への直接的な資本注入は「金融機関の体力があるうちは必要ないのでは」と指摘する。
しかし、コロナ禍がどこまで長引くかは分からない。日本政府はアジアを中心に徐々に外国との往来制限を緩和しつつあるが、欧米は感染症の流行が収まる気配がなく、国際線の本格的な再開はめどが立たない。
与党内からは「今は会社が矢面に立ってやっているが、コロナの影響が来春まで続くようだと深刻度が増す」(前出の中堅議員)との声が聞かれる。それでも、今のところは「直接注入は『最後の砦』」と、航空業界に精通する与党議員は言う。
「『自助、共助』で需要の回復を待ちながら、欧米よりは影響の小さいアジアの需要をどう取り込むかや新規事業などの中期的戦略を描く選択肢もあるのではないか」と、別の与党関係者は言う。
(杉山健太郎、梶本哲史、竹本能文、中川泉 編集:山口貴也、久保信博)
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