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アングル:世界の気候変動対策、その現状と課題

ロイター / 2023年9月24日 7時59分

9月20日、過去の記録を塗り替える猛暑に加え、壊滅的な暴風雨や洪水が各地で発生した2023年の異常気象は、気候変動対策の緊急性を浮き彫りにしている。写真は海面上昇により、浸水被害を受けるようになったフィジーの村。2022年7月撮影(2023年 ロイター/Loren Elliott)

Jack Graham

[ロンドン 20日 トムソン・ロイター財団] - 過去の記録を塗り替える猛暑に加え、壊滅的な暴風雨や洪水が各地で発生した2023年の異常気象は、気候変動対策の緊急性を浮き彫りにしている。

国連総会に合わせて20日に開かれた「気候野心サミット」で、グテレス国連事務総長は、「人類は地獄の門を開けてしまった」と述べた。

グテレス氏は、気候変動対策の取り組みは「課題の大きさに比べて圧倒的に小さい」ものの、政府や企業が「テンポを上げる」ならば潮目は変わるかもしれないと述べた。

国連が気候変動対策の進捗を包括的に評価する仕組み「グローバル・ストックテイク」は今月、温暖化を抑制し最悪の影響を回避するために、「あらゆる分野において」さらなる努力が必要であると警告した。

では、地球温暖化に対処するために、各国はこれまでどのような取り組みを行ってきたのか。また、そうした取り組みをどれだけ強化するべきなのか。現状を整理した。

<気候変動に対する世界各国の取り組み>

2015年に採択された地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」は、加盟各国の目標として、産業革命前の水準と比較した地球の平均気温の上昇を摂氏2度よりも「十分低く」抑えつつ、さらに厳しい上限値である摂氏1.5度に向けた「努力を追求する」ことを求めた。

国連グローバル・ストックテイクでは、それ以来、これらの目標に向けて「ほぼ世界中で」行動が進められており、各国政府はさまざまな分野において地球温暖化ガスの排出量を削減する政策をとってきたとしている。

たとえば、風力や太陽光といった再生可能エネルギーは急速に伸びており、国際エネルギー機関(IEA)では2025年までに世界の発電量に占める最大の供給源になると予想している。

だが、指針として重視される一連の世界的な科学報告書では、各国は、石炭・石油・天然ガスといった化石燃料の採掘及び利用からの撤退を中心に、それぞれの計画の目標をさらに高め、実現ペースもさらに加速させなければならない、としている。

だがこうした切迫感にもかかわらず、ロンドンに本部を置く国際環境開発研究所(IIED)によれば、各国はパリ協定が定める最新の気候変動対応計画を提出する期限をほとんど守れていないという。

<気候変動対策の進展はあったか>

一言で答えるならば、「イエス」だ。温室効果ガス排出量の削減を各国政府が約束したおかげで、今後の気温上昇はそこまで極端ではなくなると予想される。

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、産業革命以前を基準とした2100年時点での世界の気温上昇幅は、2010年の予想では摂氏3.7-4.8度だったが、2022年の予想では摂氏2.4-2.6度にまで縮小した。

とはいえ、この上昇幅は科学者が重要な基準としている摂氏1.5度という目標よりまだかなり大きい。1.5度を超えて上昇すれば、熱波や干ばつ、洪水といった気候変動の影響はさらに頻繁かつ深刻になるという。

IPCCは、上昇幅を摂氏1.5度に抑えるという目標を達成するには、2030年までに温室効果ガスの排出量を2019年比で43%削減する必要があると指摘する。

だがIEAによれば、エネルギー部門からの二酸化炭素排出量は2022年に過去最高に達した。二酸化炭素は、人間活動に由来する主要な温室効果ガスだ。

気候変動対策を軌道に乗せるためには、森林破壊の停止はもちろん、たとえば環境汚染の深刻な航空機移動や食肉消費の抑制といった人間の移動や労働、食生活の変革に至るまで、圧倒的なペースアップが必要だ。

<異常気象はニューノーマルなのか>

科学者はこれまで以上に的確に、個々の異常事象と気候変動とを関連付けられるようになっている。

国際的な科学者グループ「ワールド・ウェザー・アトリビューション」は、たとえば2023年7月の欧州と北米における記録的な猛暑は、気候変動の影響がなければ「実質的に不可能」としている。

また同グループによれば、9月にリビアで壊滅的な洪水をもたらした豪雨は、人間活動に由来する温暖化によって、その発生確率が50倍も高まったという。

国連では、異常気象がより頻繁かつ広範なものになる中で、洪水被害の緩和のためのインフラの強化や自然の回復などといった措置に対する途上国向けの支援を最大で10倍にも増やす必要があるとしている。

<気候危機は解決できるのか>

科学者や国連職員によれば、温室効果ガスの排出量を十分な速さで削減し、地球温暖化をペースダウンさせ気温上昇を摂氏1.5度以内に抑えられるチャンスは、徐々に小さくなりつつあるという。

この目標を達成できなければ、引き返すことができなくなる「危険な転換点」に至りかねない。たとえばグリーンランドや南極大陸の氷床が崩落して海面上昇が加速したり、海水温上昇により熱帯域のサンゴ礁が大量に死滅するといった事態だ。

しかしその一方で、ポジティブな転換点もある。

たとえば、電気自動車(EV)が化石燃料自動車と同じ程度の価格になれば、EVの販売台数はすぐに急増するだろう。

保護が適切であれば、森林や泥炭地その他の生態系が繁栄し、人為的に排出された温室効果ガスを吸収してくれる。

IPCCによれば、私たちはすでに気候危機に対する解決策を手にしているが、実現のためには社会全体で、新たな規模とペースで前例のない変革を進める必要があるという。

さらにIPCCは、たとえ将来的に摂氏1.5度を超える温暖化に至るとしても、その上昇幅をせめてコンマ何度かでも低くしておけば、人間と地球環境に対するダメージを限定し、将来的に気温をもっと安全な水準にまで引き下げる上でも有益だ、としている。

(翻訳:エァクレーレン)

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