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アングル:経済変革の偉業目指したバイデン氏、政策理念は継続される可能性

ロイター / 2024年7月23日 17時9分

 米大統領選挙から撤退を決めたバイデン大統領は国内各地のインフラ整備やさまざまなセクターへの公的助成に大規模な財政資金を投じてもなお、保守的傾向が強い地域でトランプ前大統領への支持を覆すほどの政治的評価は得られなかったかもしれない。ウィスコンシン州ミルウォーキーで2023年12月撮影(2024年 ロイター/Leah Millis)

Howard Schneider

[ワシントン 22日 ロイター] - 米大統領選挙から撤退を決めたバイデン大統領は国内各地のインフラ整備やさまざまなセクターへの公的助成に大規模な財政資金を投じてもなお、保守的傾向が強い地域でトランプ前大統領への支持を覆すほどの政治的評価は得られなかったかもしれない。

しかもこうした政策は、生産性向上やサプライチェーンの強じん化、気候変動対策としての「先行投資」とうたわれながら、実際に実を結ぶまでには相当な時間がかかるだろう。

批判派からは、バイデン氏が財政赤字を膨らませ、市場に代わって「勝ち組」を選別し、学費ローンや独占禁止法運用の面で連邦政府の権限を過剰に行使したとの声も聞かれる。

それでもバイデン氏の支持派、反対派のいずれも、同氏が2007―09年の金融危機以降温められてきたリベラル的な政策を推進し、経済の面で大きな変革を成し遂げた大統領になることを目指していたという見方に異論を持っていない。

バイデン氏は、一部の急進的な民主党議員が提唱していた資産や所得の再分配を促す税制の導入までには踏み込まなかった。

ただ、いわゆる「産業政策」を復活させ、サプライサイド経済学をリベラル方向に再ブランド化し、半導体内製化などの戦略上、あるいは子育てや学費ローンなどの道徳上で自身が必要だと感じた問題に取り組もうとした。

ブルッキングス研究所のメトロポリタン・ポリシー・プログラムで上席研究員を務めるマーク・ムロ氏は、バイデン氏について、ハイテクやグリーンエネルギー、インフラへの投資という大いなる実験を断行し、このままでは経済社会の停滞や政府への不信感が広がりかねなかった時代を切り開くことができた、と賞賛している。

ムロ氏によると、これらの政策はサンフランシスコやボストンなど伝統的な拠点以外にも技術革新の恩恵を及ぼすことに重点が置かれていたという。

<代償>

その高い代償の一つは、2020年のインフレだ。またアメリカン・エンターブライズ研究所の常任研究員マイケル・ストレイン氏は、バイデン氏の「向こう見ずな」支出によって現在の政府債務が国内総生産(GDP)の6%と、景気後退期並みに膨らんだと指摘。学費ローン免除などで中間層世帯向けの連邦政府の支援の範囲が広がったことも問題視している。

ストレイン氏の分析では、バイデン氏が望んでいたのは、「ニューディール政策」を唱えたフランクリン・ルーズベルトや「偉大な社会政策」を掲げたリンドン・ジョンソンに肩を並べることだったが、一連の政策を新たなレガシーと定義することはできないという。

とはいえバイデン氏の政策は、トランプ氏が歪曲して茶化すようなものではない。バイデン政権下で失業率が4%を下回った期間は1960年代以来で最長の2年余りに達する。賃上げは特に低所得層が最も大きなメリットを享受し、多くの人々の賃金は物価の伸びに劣らなかった。

<金融危機後の教訓>

バイデン氏とトランプ氏の経済政策には1つ重要な共通項がある。それは財政赤字を活用してトレンドより高い成長を維持することだ。

トランプ氏は伝統的な共和党方式にのっとり、歳出削減を抑えて減税を実施。一方でバイデン氏は、民主党としては斬新な手法を用いた。

バイデン氏はオバマ政権の副大統領として07―09年の金融危機対策があまりにも小規模で景気回復に時間がかかり、傷跡が長く残った経緯を目の当たりにした結果、危機の際には対応は迅速かつ大規模でなければならないという教訓を得た。

そこで就任早々に総額1兆9000億ドルの米国救済計画法を打ち出し、トランプ政権時代のコロナ禍対策の多くを継続。これらは超党派で実行されたものの、失業率を4%半ばまで下げるのに要したのは約1年半と、金融危機後に同じ水準へ達するのにかかった7年余りに比べてずっと短くなった。

さらにインフラ整備や半導体の国内生産強化、インフレ抑制法によるグリーンエネルギー生産や電気自動車(EV)に向けた助成措置などが導入された。

それらの一部は、トランプ氏が大統領に返り咲けば撤回されるかもしれない。

しかしムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は、バイデン氏が立ち上げた政策理念の大半は今後も継続される公算が大きいとみている。

ザンディ氏は、米国がコロナ禍を懸念されたよりも小さな経済的ダメージで乗り切り、そのコストがインフレだったとしても、慢性的な失業や生産力の低下といったもっと深刻な事態を免れることができたと強調。インフラ投資や半導体内製化なども成果が見えつつあると付け加えた。

さらにザンディ氏は、バイデン氏の政策はルーズベルトの恐慌対策ほどのスケール感ではなかったとしても、かなりの意義があると話す。伝統的なマクロ経済政策の文脈では革新的とは言えないが、その土俵上でより大規模かつより強力に実行したとの見方を示した。

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