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アングル:人口減の中国、政府の「都市化推進」で出生率さらに低下も

ロイター / 2024年8月24日 7時55分

 8月22日、 上海にある中国ハイテク企業で働く母親、メアリー・メンさん(37)には、2人目の子どもを持つことなど想像もできない。写真は上海の商業施設で2021年6月撮影(2024年 ロイター/Aly Song)

Farah Master Laurie Chen

[香港/北京 22日 ロイター] - 上海にある中国ハイテク企業で働く母親、メアリー・メンさん(37)には、2人目の子どもを持つことなど想像もできない。仕事が忙し過ぎて、ストレスが大きいからだ。小学生の息子がいるが、「仕事のプレッシャーがきつくて、子どもと過ごす時間さえほとんどない。2人目の世話なんてどうすればできるのか。あり得ない」と言う。

これは都市部に暮らす中国市民にとって共通の心情だ。中国は人口減少と高齢化が急速に進んでおり、こうした都市生活の慌ただしさや高コストが出生率に与える影響について、政府はもっと緊急に対応すべきだと専門家は指摘している。

中国では、国連が出産可能年齢と定義する15─49歳の女性の数が今世紀末までに3分の2余りも減少し、1億人を下回ると予測されている。

中国共産党は7月の第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)で「出産に優しい社会」の構築に向けた計画を公表。育児や教育の費用負担を軽くするといった対策を打ち出した。しかし政府が同時に住宅需要喚起など都市部への人口移動を奨励する方針を示したことに対して専門家の間には失望が広がっている。

都市部では一般的に農村部よりも付加価値の高い商品やサービスが生産、消費される。都市部に人口を誘致する政策は、危機に見舞われた不動産セクターを支えるとともに、生産性の向上と消費の強化を通じて低迷する国内経済の成長を復活させるのが狙いだ。

しかしこの新たな都市化推進政策は基本的な人口理論を見落としている。都市部では高額な住宅費用、限られたスペース、教育費の高さ、さらに1日の大半を仕事に費やすといった事情から、農村部よりも子どもの数が少なくなる。

中国では夫婦の不妊の比率も1980年代の2%から18%に上昇し、世界平均の15%前後と比べても高い。専門家は都市部の仕事に関連するストレスや公害などが原因だと指摘する。

中国の農村部は2020年の出生率が1.54と、全国の平均1.3をやや上回った。23年の上海の出生率は0.6で、全国平均の1.1よりも低い。

ウィスコンシン大学マディソン校のイ・フーシアン氏は、当局は「愚かにも」若者を最も出産に不向きな大都市へと誘導しており、出生率は一段と低下し、高齢化危機は悪化すると予測。「(高い)人口密度が出生率を引き下げるというのは生物学的な法則だ」と述べた。

こうした現象は東アジアで最も顕著だ。日本、韓国、台湾は第二次世界大戦後、他の多くの経済圏よりも速いペースで都市化と工業化を遂げる一方、出生率が世界最低水準となっている。

中国は数十年にわたる厳しい「1人っ子政策」の影響で出生率が非常に低いものの、まだ望みはある。専門家によると、中国は都市化率が65%で日本や韓国の80─90%に比べて低く、改善の余地がある。都市化を推進するよりも農村部の生活水準を向上させることが経済成長により持続可能な影響をもたらし、出生率の改善につながる可能性があるという。具体的には、公共サービスの充実や土地の自由化が有効だと考えられている。

<ただ生き延びるだけ>

安定した人口の維持には出生率を2.1に保つ必要がある。つまり、メンさんのように1人しか子どもを育てない女性が1人いれば、他の女性1人が3人の子どもを持たなければならない計算だ。

中国政府が打ち出した「出産に優しい社会」構想には、育児や教育費用の引き下げ、育児休暇の延長、産科・小児科医療の改善、育児手当や税控除の強化などが含まれている。多くの国が同じような政策を導入しているが、フランスやスウェーデンなど出生率引き上げに成功した国は男女平等、労働者の権利保護、社会福祉などがもっと充実している。

ミシガン大学の人口学者ユン・チョウ氏は「育児費用の負担軽減は、それだけでは効果がなく、むしろ女性に家事の責任を求めるような、ある種の家族観を助長するだけだ」と指摘する。

メンさんは、国民が経済的により良い生活を期待できるようになるまで、どんな政策も無駄だと思っている。「今では誰もが全く将来の展望がないと感じている。どんなに一生懸命働いても、ただ生き延びることしかできない」

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