患者連続死、二審も無期懲役＝死刑回避の裁判員判決を支持―元看護師側と検察の控訴棄却・東京高裁

　横浜市の旧大口病院で２０１６年、入院患者３人の点滴に消毒液を入れて殺害したとして殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓被告（３７）の控訴審判決が１９日、東京高裁であった。三浦透裁判長は、死刑求刑に対し無期懲役とした一審横浜地裁の裁判員裁判判決を支持し、検察、弁護側双方の控訴を棄却した。

　三浦裁判長は、被告に自閉スペクトラム症の特性があったことなどから、「看護業務の中で感じた不安や恐怖は身体の不調を来すほど大きかった」と指摘。検察側は「無差別型の連続殺人だ」として死刑を求めていたが、更生の可能性を認めて極刑を回避した一審の判断に「誤りがあるとは言えない」と述べた。

　弁護側は被告が当時、心神耗弱状態にあったと主張し、完全責任能力を認定した一審判決には事実誤認があると訴えたが、三浦裁判長は「一審の判断が不合理とは言えない」と退けた。その上で「３人を殺害した結果は重大で悪質だ」と非難した。

　２１年の一審判決は、事情を知らない他の看護師に消毒液入りの点滴を投与させるなど計画性があったと認定。被告が起訴内容を全て認め、遺族らに謝罪していることなどを踏まえ、無期懲役としていた。

　判決によると、久保木被告は１６年９月１５～１９日、入院していた興津朝江さん＝当時（７８）、西川惣蔵さん＝同（８８）、八巻信雄さん＝同（８８）＝の点滴袋に消毒液を入れ殺害するなどした。

　判決を受け、西川さんの遺族は「何のための更生なのか。遺族の気持ちは考えられていないのではないか」とのコメントを出した。

　伊藤栄二・東京高検次席検事の話　判決内容を十分に精査し、適切に対処したい。　

［時事通信社］