銃撃許した「空白の20分」=屋根に「死角」、警護阻む―トランプ氏暗殺未遂事件
時事通信 / 2024年7月20日 16時3分
トランプ前米大統領の暗殺未遂事件から20日で1週間。トーマス・クルックス容疑者(20)=現場で射殺=の狙撃を防げなかった警備態勢を巡り、大統領警護隊(シークレットサービス)への厳しい追及が続く。米メディアの報道などから、事件当日の様子を探ると、前大統領への狙撃を許した「空白の20分」が浮かび上がる。
◇捉えていた姿
「やることがある」。クルックス容疑者は勤務先の上司にこう伝え、事件当日13日の仕事を欠勤した。車で向かったのは、地元の東部ペンシルベニア州ベセルパークから約55キロ離れた小さな町バトラーで開かれるトランプ氏の選挙集会だ。
広大な敷地に設けられた会場はフェンスで仕切られ、トランプ氏の演壇から右前方には建物が並んでいた。近距離にもかかわらず、大統領警護隊は下見の段階で、会場外にあったこの建物付近の警備を人手が少ない地元治安当局に任せることを決めた。
地元メディアが入手した動画では、トランプ氏登場の約1時間前、容疑者とみられる人物が、この建物付近を歩き回る姿が捉えられていた。ポケットに手を入れ、狙撃に使用した半自動小銃を抱えている様子はない。
容疑者の行動に不審を抱いた警官の1人がその姿を撮影し、他の警官と共有していた。だが、地元の警官が容疑者を探したものの、姿を見失う。トランプ氏の演説開始約20分前のことだった。
◇隠れみのに
容疑者はその後、建物の屋根へ登ったとみられる。トランプ氏に向かって高い傾斜がある屋根は、演壇後方の狙撃手からの「隠れみの」の役割を果たし、「好都合な場所」(米紙ニューヨーク・タイムズ)だった。大統領警護隊のチートル長官によれば、その構造を懸念し、屋根には警官を配置しなかったという。
午後6時すぎ、トランプ氏が演壇に上がると、狙撃位置にはって移動する容疑者を建物周辺の人々が発見し、警官に知らせた。大統領警護隊も異変を察知し、狙撃手が準備したが、屋根の構造が「死角」をつくり、容疑者の確認に手間取っていた可能性がある。
一方、建物に駆け付けた警官2人は協力し、1人が屋根に登ろうと試みた。警官が屋根の上に頭を突き出すと、容疑者に銃を向けられたため後方に転倒。容疑者はそのまま屋根の上方に移動し、トランプ氏を複数回狙撃した。姿をさらけ出す状態になった容疑者は、大統領警護隊の狙撃手に1発で射殺された。
◇用意周到さも
米連邦捜査局(FBI)が携帯電話などを解析したところ、容疑者は事件当日前にも、集会会場を訪問していた。事前に半自動小銃を建物付近に隠した可能性がある。
チートル氏は米メディアに、事件は「容認できない」と述べ、警備態勢の不備の原因を徹底して調査する考えを示した。22日には米下院の公聴会に出席する予定で、議員らの厳しい追及が待っている。
[時事通信社]
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