「反核・平和こそ生きる証し」=国連で被爆者演説―元被団協の故山口さん
時事通信 / 2024年10月12日 4時25分
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞決定に至る背景には、一人の被爆者の存在が指摘される。2013年に82歳で死去した故山口仙二さん。「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ」。山口さんが42年前、日本被団協代表委員として国連の特別総会で行った演説は、世界の人々の心を大きく揺さぶった。
山口さんは1945年8月9日、長崎で被爆。爆心地から約1.1キロの兵器工場にいて、命は奇跡的に取り留めたが、上半身に大やけどを負った。顔にケロイドが残ったほか、原爆症と思われる肝機能障害に終生苦しんだ。
54年に退院後、被爆者の医療費の国庫負担を求めて国会に陳情に行ったが、願いは届かなかった。「政府には被爆者が生きている間に核戦争を阻止する責任と義務がある」。この思いを胸に、被爆者の組織化を図り、56年に結成された長崎原爆被災者協議会の呼び掛け人となった。
81年に日本被団協代表委員になると、ニューヨークで翌82年に開かれた第2回国連軍縮特別総会で被爆者として初めて演説。「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・ウォー、ノーモア・ヒバクシャ」。力強い訴えは、世界から称賛を受けた。
一方で、差別に苦しんだ過去も。多くの被爆者が結婚や就職で差別される中、山口さんも自著で「私の失業と貧苦の生活歴は被爆者の平均的な現実だった」と明かしている。
03年以降は持病のぜんそくで療養生活を送り、13年7月6日に亡くなった山口さん。「反核・平和、被爆者救援こそが私の願い。生きている証し」。核兵器廃絶を訴え続けた人生だった。
[時事通信社]
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