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自由貿易、強まる逆風=「薄氷」の保護主義対抗―APEC首脳会議

時事通信 / 2024年11月17日 16時32分

 【リマ時事】ペルーの首都リマで閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、多角的な自由貿易体制を維持し、保護主義に対抗する姿勢を打ち出した。多国間協調よりも2国間の「ディール(取引)」を重視するトランプ次期米大統領の就任前に開かれた今回の会議。米中が関税措置や輸出規制で激しい応酬を繰り広げる中、自由貿易への逆風は一段と強まる恐れがあり、首脳間で一致した「薄氷」の合意は水泡に帰しかねない。

 「貿易や投資、環境といった分野に影響する重大な変化に留意する」。首脳宣言はこう指摘し、「効果的な多角的協調がより一層重要だ」と強調した。

 巨額の補助金で電気自動車(EV)などを過剰に生産する中国に対し、米国は制裁関税を100%に引き上げて対抗。トランプ氏は60%の対中関税を掲げる。中国国営メディアによると、習近平国家主席は首脳会議で「アジア太平洋の協力は一国主義や保護主義といった挑戦に直面している」と主張した。「自国第一」を唱えるトランプ氏も念頭に置いた発言とみられ、「貿易戦争」が一段と激しさを増すのは避けられそうにない。

 多国間での協調は、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の悪化といった地政学的な問題にとどまらず、トランプ氏の返り咲きによってさらにハードルが上がる恐れがある。トランプ氏は1期目の就任後、環太平洋連携協定(TPP)から離脱。2期目の就任を前に、バイデン米政権が主導してきた経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」にも否定的な考えを示している。

 そこでAPEC首脳は今回、域内全体の自由貿易を通じて持続的な成長を目指す「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」構想を前進させる新たな手を打った。貿易や投資の自由化に関する研究を加速させてTPPなどよりも広範な経済圏を実現に近づけることで、自由貿易のメリットを広げたい考えだ。

 議長国ペルーのボルアルテ大統領は閉幕後の記者会見で「持続可能性、包摂性など国際貿易の新しいスキームでの取り組みが可能になる」と強調した。ただ、FTAAPを実現する時期の見通しは示せずに終わった。

 くしくもペルーが前回APEC議長国を務めた2016年もトランプ氏就任の直前だった。その際の首脳宣言に盛り込まれた「保護主義に対抗する」との文言は、今回の宣言に記載されなかった。国際社会が大きな転換点に差し掛かる中、保護主義を排して自由貿易圏を広げるというAPECの理念は正念場を迎えている。 

[時事通信社]

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